「何を…!?」

「あら、破れてしまいましたね。何をしているの?早く張り替えないと久世様がいらっしゃるわよ?」

「玲華、貴女は…どこまで私も苦しめれば気が済むの?」


怒りで声が震える千鶴。握った拳を震わせながら今にも爆発しそうな感情を抑え込む。

玲華は珍しく自分に反抗する姉に怒りの感情を沸き上がらせる。


「はぁ?誰に向かって口を聞いているのか分かってらっしゃるの?」


玲華は閉じた扇子で千鶴の顔を叩く。一度だけでなく、それを何度も繰り返した。

頬に流れる血を拭い、玲華への怒りをぶつける。


「ーーっ!玲華、貴女はいつまでこんな事しているの?人を傷つけることは許されることではないと、幼い頃教えたの覚えていないの?」


まだ千鶴が使用人として働く前のこと。お転婆だった玲華を叱り、人を思いやる心を教えていたのは姉である千鶴だった。


「何を偉そうに。私はお姉様の言葉が正しいなんてこれっぽっちも思ってないわ。人は力によって立場が決まる。お父様やお母様からそうやって教えられてきましたわ。異能の力があれば、異能者として頂点に立てる!力無いものは強力な力の前では無力なのよ?」

「いいえ、それは間違っています。人は手を取り合ってお互いに切磋琢磨していくもの。無能な人間なんていません」