エルフさんと癒され日帰り温泉旅へ

 起きたら九時を過ぎていた。

 外を見たらそれならに車が停まっていた。そこまで人気の道の駅でもないし、位置的に観光客が流れ込んで来るわけでもない。道の駅ふくしまは凄かったっけ。平日なのに半分くらい埋まってたしな。

「確か、九時オープンだったっけな」

 ルーシャはバンクベッド(運転席の上にある空間)をプライベート空間にしているので、そっちに移って眠ったようだ。

「……齢三十にして女性と一緒の毛布にくるまって寝るとはな……」

 別に間違いがあったわけではない。お互い、ちゃんと服を着ている。矢代さんは、なぜか某ゲーム販売店のスエットに着替えているけど。それ、オレが着てたやつやん……。

「この人、警戒心とかないのか?」

 いくらルーシャがいるからって、初めて会った男がいるところで寝るか? 今はこれが当たり前なのか? 怖い時代になったもんだ。

「おはよう」
 
 バンクベッドのカーテンが開かれ、同じくウェットを着たルーシャが下りて来た。

「トイレに行って来るわ」

「オレも」

 ツレションではありません。一応、男と女なので。トイレは分かれてます。

 エルフも人間も食べたら出る。朝起きたらトイレに向かう生き物なんです。

 ついでに歯や顔を洗い戻って来ると、矢代さんが起きていた。二日酔いな感じで。

 まあ、無理もない。ルーシャのペースで飲んでいたら大抵の者は潰れる。エルフの肝臓強すぎ。

「おはようございます。大丈夫ですか?」

「……ええ。なんとか……」

 ではない顔だな。吐くまでは行ってなさそうだけど。

 濡れタオルを渡して顔を拭かせ、口をうがいさせてスポーツ飲料水を飲ませた。

「面倒見いいんですね」

「よく言われます」

 そのせいで損してきたけどな。もう性格だから仕方がない。

「起きれるならトイレに行って本格的に顔を洗って来てください」

「了。温泉開いているみたいよ。入りに行きましょう」

「もう開いているんだ。朝風呂いいね。矢代さんはどうします?」

「入りたいです」

 トイレに行かせ、自分の車から着替えを持って来させる。

 まだ酒が残っているだろうからキャンピングカーはそのままにして喜多の湯に向かった。

 朝風呂を楽しむ人はそれなりにいるようで、十人くらいのアフラー(マヨラーみたいなこと言ってみた。ちなみに朝風呂ラーね。てか、ラーってなんだ?)がいた。

 いつもの作法で湯船に浸かる。あ~って声が出るのはなんでだろうな。

「……あっちは大丈夫だろうか……?」

 湯船で吐いてないといいんだけどな。

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 矢代八千代

 朝からお風呂なんて贅沢だわ~。

「会社なんて行きたくなくなるわね」

 まあ、辞めるつもりはないんだけど、こんな贅沢を覚えたら帰りたくなくなるってものよ。

「ルーシャさん。サウナに入りましょうか」

「サウナか。蒸し風呂なんて久しぶりだわ」

「あちらの世界にもあったんですか?」

「蒸し風呂が主流だったわ。まあ、旅から旅だと水浴びが基本だからね」

 昨日もいろいろ聞いたけど、まさにファンタジーな世界だった。わたしも行きたい! とはならないけど、異世界の写真を撮りまくりたいわ。いや、ルーシャさんも撮りたいわ。モデル顔負けのスタイルと不思議な雰囲気をカメラに収めたい。

 とは言え、無理矢理はNGだ。現代世界にエルフが現れたなどトラブルのネタでしかない。おそらく、そうなればルーシャさんは消えてしまう。道端さんのお陰でこの世界の仕組みも理解している。生きるだけなら問題なく生き抜いていけるでしょうよ。

 これは、ルーシャさんより道端さんを先に攻略したほうがいいわね。あの人は穏やかに見えるけど、頭はかなりいい。仕事が出来るタイプだ。まず味方にするべきはあの人だわ。ルーシャさんも信頼しているみたいだからね。

「そう言えば、サウナ入るの久しぶりだわ」

 飲みのあとに終電を逃してサウナ付きの雀荘に入ったのが最後かしら? あのときは若さに甘えて無茶したものだわ~。

「ルーシャさん。写真を撮っていいですか? 悪用しないので」

「写真? スマホで?」

「ちゃんとしたカメラです。溜め池の横に桜が咲いてますし、道端さんと撮らしてください。記念になりますよ。印刷して送りますんで」

「んー。了に聞いてからでいい? わたしにはよくわからないから」

 ファンタジーな世界を一人で旅をしていただけはある。信じているようでまったく信じてない。この人も仕事が出来るタイプだわ。

「もちろんですよ。無理強いはしませんって」

 本当に信頼を得るまでは下手なことは出来ない。いや、信頼を得てからも下手なことはしないわ。この世には敵にしちゃいけい人がいる。道端さんとルーシャさんはまさにそのタイプだわ。

 この歳になるとサウナのよさがわかってくるよね。

 水風呂も気持ちいいと感じてしまう。整うって意味もよくわかるわ。

「わたしはお風呂のほうが好きかな」

「すっかり温泉に嵌まってますね」

「ええ。温泉に入ると力が漲って来るのよね」

 エルフには違う効能を与えるのかしら? おもしろいわね。あとで魔法を見せてもらおうっと。

 水風呂から上り、次は湯船に入った。せっかく来たのだから温泉もたのしまないとね。もったいないわ。