風呂上がりにビールを、ってわけにもいかないので、コーヒー牛乳で喉を潤した。

「この一杯のために生きている!」

 と、言っても過言ではないくらい、風呂上がりのコーヒー牛乳が美味い。そして、飲み干したあとの余韻がなんとも幸せ。生きているって素晴らしいよ。

「お待たせ~」

 余韻に浸っていたら三人がホカホカな感じでやって来た。

「いい湯だった?」

 オレはいい湯だった。打たれ湯で修行だとか思っちゃったよ。

「はい。ミオさんのおっぱいも浮いてました」

 なにその情報? いや、返答は? まるでオレが欲していた情報のように言わないで。社会的に死ぬでしょうが。

「……あ、うん、そうなんだ。よかったね……」

 なにがよいかは訊かないでちょうだい。返答に困ってんだよ!

「あ、ルーシャさん。もうビール飲んでる」

 いつの間にか買ったんだか。座って飲みなさいな。

「我慢できなくてね」

 マイペースなルーシャさん。その性格が羨ましいよ。

 それぞれ好きなもので喉を潤し、休憩室で時間まで休んだらオートキャンプ場に向かった。

 予約はしてあるので手続きはスムーズに完了。奥にあるキャンピングカーサイトに向かった。宮脇さんは個別サイトだ。撮影もあるんでな。

「管理棟から離れているな」

 百メートルもないだろうが、風呂に行くのにはちょっと離れている。もうちょっと近くに造ってもらいたかった。

「トイレとシャワーがサテライトハウスにあるから大丈夫でしょう」

 炊事場ね。そこにトイレもあるそうだ。

「トイレが綺麗なら問題ないわ」

 トイレ至上主義者なルーシャさん。トイレが綺麗なだけですべてを許せるようになっているよ。

 サイトに停めたらまずは電源供給。四月とは言え、気温は高い。車内は快適にしないとな。

「サイドオーニング、初めての展開だな」

 屋根となるものを展開する。これまで車中泊だったから使わなかった機能だ。

「これは……必要か?」

 ま、まあ、せっかくある機能なんだから使ってやるとしよう。

 キャンピングカーサイトなので、テントを張ったりテーブルを置いたりするスペースは広い。今度、タープを買おうっと。

 一応、四人用の折り畳み式のテーブルとチェアはコス○コで買った。リクライニングチェアも二つ買いました。

 ……揃えるとなると金が勢いよく飛んで行くな……。

「了さん。あたしたち、ミオさんのところに行って来ますね~」

「あいよ~」

 シナリオ的にはここで知り合いと合流。一緒にバーベキューってことになるらしい。もちろん、オレらは顔出しはしません。主役は宮脇さんだから。そして、これはルーシャを売り込む伏線なんだとか。

 オレにはよくわからんので、阿佐ヶ谷妹のシナリオにお任せ。オレは裏方として働きます。

 魔法の鞄(トートバッグ)からバーベキューコンロを出し、炭を入れてガスバーナーで火をつ……かない。あれ? なんで?

「動画観たんだけどな~。なにが違うんだ?」

 もう一回観て挑戦するが、やっぱり点かない。なんで?

「どうしたの?」

 ルーシャが戻って来た。

「いや、火が点かなくてさ」

「火力が足りないんじゃない」

 と、ルーシャの指先から炎が吹き出し、炭を赤くした。ま、魔法スゲー!

「助かったよ。オレ、火を点けることも出来ないとか情けなさすぎる」

「まあ、ここでは火を点ける機会なんてないしね。仕方がないわ。試し焼きしましょうか?」

「食べたいだけだろう?」

「はい、食べたいです。ビールも飲みたいです」

 正直者か! まあ、いいけどさ。

「焼き鳥でもやるか」

 コス○コで売ってたもので、宮脇さんがお勧めしてくれたものだ。いろんな部位があり、バラエティーに飛んだものだ。

 何本か塩コショウを振り掛けて網に乗せる。あとは焼けばいいだけだ。

 しっかり焼いてからルーシャが味見。鉄の胃袋を持っているそうなので、少々生でもへっちゃらだそうだ。本当か? 

「うん。いい感じに焼けているわ」

 オレはそこまで胃が強いわけではないので、少し焦げ目がついてから食べてみた。うん、美味い。

「くぅ~! ビールが美味い!」

 焼き鳥じゃないんかい。
 
 次々と焼いていき、次々とルーシャの胃袋に消えていく。まだ牛ステーキがあるんだからほどほどにしなさいよ。

 オレも五本食べてちょっと胃に溜まってきた。牛ステーキのためにもここで止めておこう。

「網を洗ってくるよ」

 サテライトハウスに網を洗いに向かい、帰って来たら阿佐ヶ谷妹と宮脇さんが来ていた。

「撮影は終わり?」

「いえ、これから施設内を散歩する絵を撮ります」

 すっかりカメラマンだな。血かな?

「オレも見て回ろうかな?」

 せっかく来たんだし、施設内を見て回らないともったいないだろう。

「わたしが残っているから行って来ていいわよ」

 ビールから日本酒に切り換えたルーシャさん。完全に飲む体勢に入ったな。

「じゃあ、頼むよ」

 一人にさせるのはちょっと不安だが、飲んでいるだけなので大丈夫と信じよう。

「了さん、行きましょう」

 阿佐ヶ谷妹に手をつかまれて管理棟のほうに連れて行かれた。