今日はキャンプ場に向かうとする。
エルフ化した宮脇さんのキャンプ動画を撮るためだ。
キャンプ関連に詳しい宮脇さんの提案で大子町《だいごまち》にあるオートキャンプ場に決まった。
近くには大子温泉保養センターがあるが、施設内にも温泉はあるそうだ。
トイレに拘るルーシャの希望も通る場所なので、朝食を終えたら道の駅ひたちおおたを出発した。
先導は宮脇さん。ここら辺はホームだというので、途中にある袋田の滝って観光地に回ることにする。
「ルーシャの世界でも観光地ってあったりするのか?」
「あるわよ。命懸けのところから危険なところまで」
結局命に関わるようなところなんだ。安全な国に生まれてよかった。
観光地だとは聞いてはいたが、想像してたより大きい観光地だった。
少し離れた無料駐車場に停める。てか、今日が日曜日ってのを忘れていた。昨日、土曜日だってわかっていたのにだ。
……曜日感覚が死ぬと観光地回りとか大変そうだ……。
滝から結構離れているようで、駐車場を利用しているのはちらほらとしか見えない。キャンピングカーのサイズと出やすいところに駐車。宮脇さんの軽バンも横に駐車した。
「ミオさん。車内録画は撮れましたか?」
「ええ。今日はエルフになって観光することを話したわ」
脚本家、阿佐ヶ谷璃子、ここに爆誕。演者より裏方に才能があった、らしい。
この動画が当たれば田倉健吾スタジオのタレントになる交渉をしている。阿佐ヶ谷妹、がね……。
個人でやっているのに企業(?)に入ったりしていいのか? と思わないではないが、個人だと限界があるらしい。オレにはわからない難しさがあるようだ。
芸能事務所みたいなところの社長になれとか不安でしかないが、優秀な事務員と税理士、弁護士事務所と契約しているらしいので、一つ一つ勉強していくしかない。違う業種に就職している人の大変さを今知ったよ……。
「ルーシャさん。幻惑に乱れはないですか?」
「大丈夫よ。あと半日は消えたりしないわ」
魔法も絶対ではなく、なんらかしらの原因で解除されることもあるらしいよ。
「よし。ミオさん、やりますよ」
「ええ」
脚本家兼カメラマンとなる阿佐ヶ谷妹。お前は多才か!
録画が始まり、慣れた感じで自己紹介やらエルフになっている理由を話した。
これはテスト動画。エルフになって観光地にやって来た~、的な内容だ。
オレとルーシャはカメラに映らないようにしながら宮脇さんについて行く。もちろん、通行の邪魔にならないようにしております。
米沢と喜多方で観光地を回ったが、地域が変わると目に映る光景が違うものだ。
「田舎の観光地って感じだな」
そう多く知っているわけじゃないが、小さい頃、こんなところを歩いた記憶があるな~。
「旅動画ってこんな風に撮られているのね」
そんな動画まで観てるんだ。夜、ちゃんと寝ているのか?
入場料を払うところまで来たらさすがに人が多い。そういうところはあとで編集するらしい。
「トンネルの中を歩くんだ」
随分と金をかけたところだ。それだけ観光客が来るってことなんだろうな~。
「エルフだ」
動画撮影したら目立つもの。人の目も集まり、観光客が宮脇さんを見始めた。
ちなみにルーシャは帽子を被っているので耳は見えておりません。
スマホを向ける者がいるが、ルーシャの魔法で空間をねじ曲げる。とんでもねー。
長いトンネルを抜け、右が第一観爆台でまっすぐ進むと第二観爆台か。てか、滝を観るところを観爆台っていうんだ。初めて聞いたよ。
「日本三名爆ね~。日本、三大とか三名とか好きだね~」
残り二つなんだよ、ってのも日本人なんだろうよ。ふふ。
「これまで滝を綺麗だとか思ったことがないわ」
「オレもだな」
自然を観るには心の余裕がないとダメなんだろうな。
「記念写真撮ろうか」
せっかく来たんだし、記念写真くらい撮っておかないと損だろう。
一通り滝を撮ったら阿佐ヶ谷妹にルーシャとのツーショットを撮ってもらう。いつかこんなことがあったね~とか語り合える日が来るんだろうか? そう考えるのも悪くないものだ。
「ミオさんを挟んで三人で撮りましょう」
「リコはいいの?」
「あたしは次、お願いします」
宮脇さんを挟んで撮ってもらい、次は阿佐ヶ谷妹を挟んで宮脇さんに撮ってもらった。
「なんかいいな」
もう頼る家族も親類もいない。社会的繋がりも途絶えて絶望に落ちたが、落ちたところに新たな家族や社会的繋がりがあった。なんの逆転劇だと思うよ。
「あ、あの~。わたしたちも一緒にいいでしょうか?」
若い女性が声をかけてきた。
「構いませんよ~。リオチャンネルをよろしくです~」
宮脇さんが作ったミオチャンネルシールを配る阿佐ヶ谷妹。この子は営業力もあるんかい。オレより社長に向いてんじゃないの?
十年後、まだスタジオがあれば阿佐ヶ谷妹に任せてオレは違う仕事を見つけるとするか。
「さあ、ミオさん。宣伝のチャンスですよ」
最初は隠す算段だったのに、売名に繋がるとなれば一瞬で翻す。矢代さんとは違う方向で敵にしちゃいけない人だな……。
エルフ化した宮脇さんのキャンプ動画を撮るためだ。
キャンプ関連に詳しい宮脇さんの提案で大子町《だいごまち》にあるオートキャンプ場に決まった。
近くには大子温泉保養センターがあるが、施設内にも温泉はあるそうだ。
トイレに拘るルーシャの希望も通る場所なので、朝食を終えたら道の駅ひたちおおたを出発した。
先導は宮脇さん。ここら辺はホームだというので、途中にある袋田の滝って観光地に回ることにする。
「ルーシャの世界でも観光地ってあったりするのか?」
「あるわよ。命懸けのところから危険なところまで」
結局命に関わるようなところなんだ。安全な国に生まれてよかった。
観光地だとは聞いてはいたが、想像してたより大きい観光地だった。
少し離れた無料駐車場に停める。てか、今日が日曜日ってのを忘れていた。昨日、土曜日だってわかっていたのにだ。
……曜日感覚が死ぬと観光地回りとか大変そうだ……。
滝から結構離れているようで、駐車場を利用しているのはちらほらとしか見えない。キャンピングカーのサイズと出やすいところに駐車。宮脇さんの軽バンも横に駐車した。
「ミオさん。車内録画は撮れましたか?」
「ええ。今日はエルフになって観光することを話したわ」
脚本家、阿佐ヶ谷璃子、ここに爆誕。演者より裏方に才能があった、らしい。
この動画が当たれば田倉健吾スタジオのタレントになる交渉をしている。阿佐ヶ谷妹、がね……。
個人でやっているのに企業(?)に入ったりしていいのか? と思わないではないが、個人だと限界があるらしい。オレにはわからない難しさがあるようだ。
芸能事務所みたいなところの社長になれとか不安でしかないが、優秀な事務員と税理士、弁護士事務所と契約しているらしいので、一つ一つ勉強していくしかない。違う業種に就職している人の大変さを今知ったよ……。
「ルーシャさん。幻惑に乱れはないですか?」
「大丈夫よ。あと半日は消えたりしないわ」
魔法も絶対ではなく、なんらかしらの原因で解除されることもあるらしいよ。
「よし。ミオさん、やりますよ」
「ええ」
脚本家兼カメラマンとなる阿佐ヶ谷妹。お前は多才か!
録画が始まり、慣れた感じで自己紹介やらエルフになっている理由を話した。
これはテスト動画。エルフになって観光地にやって来た~、的な内容だ。
オレとルーシャはカメラに映らないようにしながら宮脇さんについて行く。もちろん、通行の邪魔にならないようにしております。
米沢と喜多方で観光地を回ったが、地域が変わると目に映る光景が違うものだ。
「田舎の観光地って感じだな」
そう多く知っているわけじゃないが、小さい頃、こんなところを歩いた記憶があるな~。
「旅動画ってこんな風に撮られているのね」
そんな動画まで観てるんだ。夜、ちゃんと寝ているのか?
入場料を払うところまで来たらさすがに人が多い。そういうところはあとで編集するらしい。
「トンネルの中を歩くんだ」
随分と金をかけたところだ。それだけ観光客が来るってことなんだろうな~。
「エルフだ」
動画撮影したら目立つもの。人の目も集まり、観光客が宮脇さんを見始めた。
ちなみにルーシャは帽子を被っているので耳は見えておりません。
スマホを向ける者がいるが、ルーシャの魔法で空間をねじ曲げる。とんでもねー。
長いトンネルを抜け、右が第一観爆台でまっすぐ進むと第二観爆台か。てか、滝を観るところを観爆台っていうんだ。初めて聞いたよ。
「日本三名爆ね~。日本、三大とか三名とか好きだね~」
残り二つなんだよ、ってのも日本人なんだろうよ。ふふ。
「これまで滝を綺麗だとか思ったことがないわ」
「オレもだな」
自然を観るには心の余裕がないとダメなんだろうな。
「記念写真撮ろうか」
せっかく来たんだし、記念写真くらい撮っておかないと損だろう。
一通り滝を撮ったら阿佐ヶ谷妹にルーシャとのツーショットを撮ってもらう。いつかこんなことがあったね~とか語り合える日が来るんだろうか? そう考えるのも悪くないものだ。
「ミオさんを挟んで三人で撮りましょう」
「リコはいいの?」
「あたしは次、お願いします」
宮脇さんを挟んで撮ってもらい、次は阿佐ヶ谷妹を挟んで宮脇さんに撮ってもらった。
「なんかいいな」
もう頼る家族も親類もいない。社会的繋がりも途絶えて絶望に落ちたが、落ちたところに新たな家族や社会的繋がりがあった。なんの逆転劇だと思うよ。
「あ、あの~。わたしたちも一緒にいいでしょうか?」
若い女性が声をかけてきた。
「構いませんよ~。リオチャンネルをよろしくです~」
宮脇さんが作ったミオチャンネルシールを配る阿佐ヶ谷妹。この子は営業力もあるんかい。オレより社長に向いてんじゃないの?
十年後、まだスタジオがあれば阿佐ヶ谷妹に任せてオレは違う仕事を見つけるとするか。
「さあ、ミオさん。宣伝のチャンスですよ」
最初は隠す算段だったのに、売名に繋がるとなれば一瞬で翻す。矢代さんとは違う方向で敵にしちゃいけない人だな……。


