ふぁ~! もう朝か。
キャンピングカーでの、いや、ルーシャさんが魔法で拡張した空間の快適なことよ。マットレスも大きくて弾力性もよし。空調も万全。どんな仕掛けかカーテンを開けたら外も見える。
外から見たら屋根なのに不思議で仕方がない。魔法ってなんでもありよね。
ルーシャさんはとっくに起きたようで隣にはおらず、バンク部屋から出たら了さんもいなかった。
シャワー室を見たら濡れてないから朝の稽古をやっているのね。まあ、あたしは寝坊助なのでやっているとこ見たことないけど。
「トイレかな?」
お湯も沸かしてない。てか、まだ六時前じゃない。あたし、早起き過ぎ。
「あ、昨日ビール飲んだからか」
やっている店がなくて焼肉屋さんでの夕食となり、普段飲まないんだくなど、焼肉にビールは欠かせないとジョッキで二杯も飲んでしまった。
そのあとの記憶はぼんやりだけど、焼肉屋さんの近くにある道の駅のトイレが嫌だと、その先にある道の駅まで移ったのは覚えているわ。
「あ、おはよう」
ルーシャさんが戻り、続いて了さんも戻って来た。
「朝の稽古してくるよ」
「は~い。お気を付けて~」
あたしは一緒にやろうとは思わないので二人を見送った。
お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。ニートと変わらぬ日々。でも、今のあたしは社会人予備軍。おねーちゃんが上手く纏めてくれたらあたしも社会人。お給料をもらえる立場。堂々と社会人と名乗ることが出来るねよ。
「フフ。あたしに風が吹いているわ」
やって来る地位に笑みが溢れる。あ、でもその前にトイレに行こうっと。溢れちゃいけないものを溢れちゃいそうだ。
「ん? あの人……」
トイレに行ったら二人を茫然と見詰める女性が一人。確か、キャンプ系動画を出していいる人だ。
とその前にトイレトイレ。すっきりさせて来たら女性の後ろに立った。
そう登録者数が多いわけじゃないけど、今のあたしたちには好都合だ。まだ準備段階でルーシャさんを大々的に広めるわけにはいかない。ちょっとずつウワサに上げて徐々に浸透させる。
今、あたしの頭の中に計画が浮かんだ。ルーシャさんを世間に広める計画が。
わたしがSNSに上げようかと思ったけど、発信力0のあたしなんかじゃ見向きもされない。なら、あたしより発信力のある人を利用させてもらいましょう。
「あら~。見ちゃいましたね~」
びっくりされたけど、動画配信している人なんて心臓に毛が生えたような人がやっているもの。そして、承認欲求が強いと相場が決まっている。チャンネル登録、高評価が伸びますよ~と言えば話に乗ってくるもの。
なによりそこに美味しいネタがある。逃すなんてバカなことはしないわ。
「お時間があるなら少しお話し致しませんか? ご一緒に朝食をしながら、ね」
「え、あ、はい。わかりました」
ほら乗ってきた。フフ。思うがままだわ。
キャンピングカーに連れて行くと、了さんがシャワーを浴びているようなので、ミオさんの軽カーを隣に移動させてもらった。
「動画で見たまんまのミオカーですね。あ、ミオさんって呼んだほうがいいですか?」
「あ、名刺渡しますね」
へー。今時の動画配信者は名刺なんて持っているんだ。
「ちゃんと本名も書いちゃうんですね。宮脇早苗《みやわきさなえ》さんですか」
ミオってどこから出て来たのかしら?
「リコ。話は終わったの?」
ミオカーを見せてもらっていたらルーシャさんがコンビニから戻って来た。
「これからです。了さんがシャワーを浴びているので」
「そう。中で待っているわ」
お互い、裸を見られても気にならない関係の二人。構わずキャンピングカーの中に入って行った。
「あ、あの、あの人、本物のエルフなんですか?」
「マジモンのエルフですよ。異世界から来ちゃった系です。男の人、道端了さんっていうんですけど、旅の途中で出会ったそうです」
「……じょ、冗談ではなく……?」
「普通はそう思いますよね。あたしも温泉でエルフがいることに驚きましたからね。言葉、わからなかったでしょう?」
すっかり慣れたけど、ルーシャさんの言葉は魔法をかけてもらった人以外は異世界語に聞こえているのよね。
「はい。あなたはわかっていたよね」
「魔法でわかるようにしてもらいました。頭に電気が走って、目の奥がチカチカ。収まったら言葉がわかるようになりました」
凄く懐疑的な目を向けるミオさん──ではなく、早苗さん。これが普通の反応よね。素直に信じられるあたしたちのほうが変なんだわ。
「フフ。信じられないって顔ですよね。あの二人のことを見ていても」
「そりゃそうよ! エルフなんですって言われても素直に信じられないわ」
「なので、世間にはエルフのコスプレイヤーとして名乗っています。真実が広まるとルーシャさんの生活が大変なことになりますからね」
あたしはルーシャさんを守るためにもいる。だから了さんは、ニートなあたしを受け入れてくれているのよ。
「……な、なぜわたしに言うの……?」
今さらになって怯え出す。やっと自分が置かれている状況に気付いたようね。
「もちろん、あなたを仲間に引き込むためですよ」
ウフフと笑ってみせた。逃がさないわよ。
「リコ。了が出たわよ」
「はーい。じゃあ、中で話しますか」
早苗の腕をつかんでキャンピングカーの中に連れ込んだ。
キャンピングカーでの、いや、ルーシャさんが魔法で拡張した空間の快適なことよ。マットレスも大きくて弾力性もよし。空調も万全。どんな仕掛けかカーテンを開けたら外も見える。
外から見たら屋根なのに不思議で仕方がない。魔法ってなんでもありよね。
ルーシャさんはとっくに起きたようで隣にはおらず、バンク部屋から出たら了さんもいなかった。
シャワー室を見たら濡れてないから朝の稽古をやっているのね。まあ、あたしは寝坊助なのでやっているとこ見たことないけど。
「トイレかな?」
お湯も沸かしてない。てか、まだ六時前じゃない。あたし、早起き過ぎ。
「あ、昨日ビール飲んだからか」
やっている店がなくて焼肉屋さんでの夕食となり、普段飲まないんだくなど、焼肉にビールは欠かせないとジョッキで二杯も飲んでしまった。
そのあとの記憶はぼんやりだけど、焼肉屋さんの近くにある道の駅のトイレが嫌だと、その先にある道の駅まで移ったのは覚えているわ。
「あ、おはよう」
ルーシャさんが戻り、続いて了さんも戻って来た。
「朝の稽古してくるよ」
「は~い。お気を付けて~」
あたしは一緒にやろうとは思わないので二人を見送った。
お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。ニートと変わらぬ日々。でも、今のあたしは社会人予備軍。おねーちゃんが上手く纏めてくれたらあたしも社会人。お給料をもらえる立場。堂々と社会人と名乗ることが出来るねよ。
「フフ。あたしに風が吹いているわ」
やって来る地位に笑みが溢れる。あ、でもその前にトイレに行こうっと。溢れちゃいけないものを溢れちゃいそうだ。
「ん? あの人……」
トイレに行ったら二人を茫然と見詰める女性が一人。確か、キャンプ系動画を出していいる人だ。
とその前にトイレトイレ。すっきりさせて来たら女性の後ろに立った。
そう登録者数が多いわけじゃないけど、今のあたしたちには好都合だ。まだ準備段階でルーシャさんを大々的に広めるわけにはいかない。ちょっとずつウワサに上げて徐々に浸透させる。
今、あたしの頭の中に計画が浮かんだ。ルーシャさんを世間に広める計画が。
わたしがSNSに上げようかと思ったけど、発信力0のあたしなんかじゃ見向きもされない。なら、あたしより発信力のある人を利用させてもらいましょう。
「あら~。見ちゃいましたね~」
びっくりされたけど、動画配信している人なんて心臓に毛が生えたような人がやっているもの。そして、承認欲求が強いと相場が決まっている。チャンネル登録、高評価が伸びますよ~と言えば話に乗ってくるもの。
なによりそこに美味しいネタがある。逃すなんてバカなことはしないわ。
「お時間があるなら少しお話し致しませんか? ご一緒に朝食をしながら、ね」
「え、あ、はい。わかりました」
ほら乗ってきた。フフ。思うがままだわ。
キャンピングカーに連れて行くと、了さんがシャワーを浴びているようなので、ミオさんの軽カーを隣に移動させてもらった。
「動画で見たまんまのミオカーですね。あ、ミオさんって呼んだほうがいいですか?」
「あ、名刺渡しますね」
へー。今時の動画配信者は名刺なんて持っているんだ。
「ちゃんと本名も書いちゃうんですね。宮脇早苗《みやわきさなえ》さんですか」
ミオってどこから出て来たのかしら?
「リコ。話は終わったの?」
ミオカーを見せてもらっていたらルーシャさんがコンビニから戻って来た。
「これからです。了さんがシャワーを浴びているので」
「そう。中で待っているわ」
お互い、裸を見られても気にならない関係の二人。構わずキャンピングカーの中に入って行った。
「あ、あの、あの人、本物のエルフなんですか?」
「マジモンのエルフですよ。異世界から来ちゃった系です。男の人、道端了さんっていうんですけど、旅の途中で出会ったそうです」
「……じょ、冗談ではなく……?」
「普通はそう思いますよね。あたしも温泉でエルフがいることに驚きましたからね。言葉、わからなかったでしょう?」
すっかり慣れたけど、ルーシャさんの言葉は魔法をかけてもらった人以外は異世界語に聞こえているのよね。
「はい。あなたはわかっていたよね」
「魔法でわかるようにしてもらいました。頭に電気が走って、目の奥がチカチカ。収まったら言葉がわかるようになりました」
凄く懐疑的な目を向けるミオさん──ではなく、早苗さん。これが普通の反応よね。素直に信じられるあたしたちのほうが変なんだわ。
「フフ。信じられないって顔ですよね。あの二人のことを見ていても」
「そりゃそうよ! エルフなんですって言われても素直に信じられないわ」
「なので、世間にはエルフのコスプレイヤーとして名乗っています。真実が広まるとルーシャさんの生活が大変なことになりますからね」
あたしはルーシャさんを守るためにもいる。だから了さんは、ニートなあたしを受け入れてくれているのよ。
「……な、なぜわたしに言うの……?」
今さらになって怯え出す。やっと自分が置かれている状況に気付いたようね。
「もちろん、あなたを仲間に引き込むためですよ」
ウフフと笑ってみせた。逃がさないわよ。
「リコ。了が出たわよ」
「はーい。じゃあ、中で話しますか」
早苗の腕をつかんでキャンピングカーの中に連れ込んだ。


