洗濯と買い物が終われば黒羽温泉五峰の湯に向かった。

 ここは、田村さんの弟で、同じ会社で働いていた田村隆二さんが教えてくれたところだ。

 実家に帰ると、近隣の日帰り温泉に入りに行くそうで、ここは風呂が広く、露天風呂もあってお気に入りだそうだ。

 オレも那須高原に引っ越して、落ち着くまで毎日通っていたくらい。まあ、近いってのもあったけどな。

 建物も綺麗だし、お湯もすべすべだ。美人の湯とされているのもよくわかる。いつか湯治宿に泊まってのんびりしたいものだ。もう健康だけど。

「温泉スタンドまであるんですね」

「うちに追い焚き機能があれば買って帰りたいところだよ」

 キャンピングカーのシャワーに使いたいな~とかも思ったが、わざわざシャワーで使うのはもったいないよな。てか、近いんだから入りに来たほうがいい。十分くらいの距離なんだから。

 平日だってのにお客はそれなりにいる。案外、平日に来れる人っているもんなんだな~。

 受付で支払いを済ませ、二階へと上がる。

「上がったらあそこで落ち合うか」

 奥にある大広間を差した。

「わかったわ」

「じゃあ、また」

 二人とも日帰り温泉に慣れたようで、女風呂へ入って行った。

 ん? 前きとき、逆じゃなかったっけ? 日替わりで替わるとこだったっけ?

 まあ、替わるならどちらの風呂も楽しめるってこと。また来る楽しみが増えたよ。

 それなりにいると言ってもやはり年配の方が多い。オレたちのように若い人はいなかった。

 今日は天気もいいから空が綺麗だ。体を洗ったらそのまま露天風呂に向かうか。

「いい天気だ」

 青い空の下で入る温泉の気持ちよさよ。心が洗われるようだ。

 露天風呂にはオレ一人だけなので貸切状態。贅沢な気分になるな~。

「了さん、いますか~?」

 ん? 阿佐ヶ谷妹の声が。小学生みたいなことするな。

「いるよー!」

「本当にいた! ルーシャさん、凄い!」

 なにが? 公共施設なんだから騒いじゃいかんよ。

「気持ちいいですね~!」

「ああ。こっちは貸切状態だよ」

「こっちもでーす!」

 他の人、上がるタイミングだったのかな?

「次はあっちの山にある温泉に行きたいですね!」

 那須連邦だっけか? いい温泉がありそうだ。

「いいところ探して行こうか」

 誰か来たのでおしゃべりは止め、内湯に入って体を洗うとする。

 すっきりさっぱりしたら内湯に入り、少し曇ったガラスに映る青い空を眺めた。

 体が熱くなってきたので露天風呂に移り、ベンチに座って風に当たった。

「寝ちゃいそうだ」

 睡魔が襲って来たので水を浴びて追い払い、今日はこのくらいにしてやった。

 脱衣場で扇風機に当たりながら体を冷まし、着替えて大広間へ。二人はまだみたいなので先に儀式を済ませさせておこう。

 自動販売機でコーヒー牛乳を買う。

「いただきます」

 蓋を開けて一気に飲み干す。

 くぅー! 美味い! やっぱ風呂上がりにはコーヒー牛乳だぜ!

 儀式を済ませたら大広間へ向かい、お風呂セットの一つ、うちわを出して扇いだ。

 これがないと湯上がりはやってられないんだよな。

 なんとはなしにテレビを観ながらうちわを扇いでいると、二人が上がって来た。

「いい湯でした~」

 無邪気に笑う阿佐ヶ谷妹。ほんと、小学生みたいだよ。

「喉は潤した?」

「はい。もう上がってすぐですよ」

「ルーシャ、ビール飲む?」

 大広間には食堂が併設されているので買って食べれるのだ。このスタイルにも惚れ込んだんだよな。

「そうね。飲もうかしら。あと、ちょっと食べようかな?」

 焼き芋は温泉で溶けたようだ。

「璃子さんは?」

「あたしはまだいっかな? あ、アイス食べたいです」

「確か、下の売店で売ってたはず。三人分、お願い」

 お風呂セットで持っているサイフから千円を出して渡した。

「ルーシャ、券売機、覚えた?」

「ええ。大丈夫よ」

 じゃあ、好きなのを買ってきなとサイフを渡した。

 すぐにあを買って来た阿佐ヶ谷妹からアイスを受け取り、火照った体を優しく冷ましてくれた。

「結構眠ったのに、お風呂上がりでお腹が膨れたらなんか眠くなりますよね」

「わかる。今ならぐっすり眠れそうだ」

 さすがに今眠ったら夜眠れなくなるが、この眠気には逆らえない。座布団を二つ折りにして横になった。

「あ、あたしも」

「しょうがないわね。わたしも」

 なんて三人で横になった。

 がっつり眠ってしまい、起きたら十八時前になっていた。

「帰ろうか」

 さすがに腹が減った。

「ええ。お腹空いたわ」

 夜に来る人も結構いるようで、大広間は半分くらい埋まっていた。

「どこで食べようか?」

 国道まで出ないと店はないか?

「なんなら今からひたちなかのコス○コに向かいません? ここからなら大きい道の駅が途中にありますし」

 なるほど確かにいいかもしんないな。

 帰ってもやることはない。動くのは来週から。ゴールデンウィークがやって来る前に病院や手続きを済ませようと思っている。

「あ、明日、土曜日か」

「はい。行くんならちょうどいいと思いますよ」

「そうだな。土日ならやることないし、ちょうどいいかもな」

 月曜日まで帰って来ればいいんだし、時間はたっぷりある。んじゃ、コス○コにレッツゴーだ。

「あ、あたし運転しますよ。キャンピングカーにも慣れてきたんで」

「じゃあ、お願い。オレはどこか食べるとこ探すよ」

 阿佐ヶ谷妹に鍵を渡し、五峰の湯をあとにした。