「璃子。実家に帰るわよ。機材を運ばないと」
撮影が終わり、ごはんやカフェで遅めの昼食と少々の撮影を終えて金を払っていたら阿佐ヶ谷姉の宣言が耳に届いた。
「はぁ? 今から? 秋田に?」
阿佐ヶ谷姉、かなり鬼畜。今、十七時前だよ。ここらでも三、四時間かかるんじゃない、秋田って? 到着する頃、確実に暗くなっているよね。
「そうだって言ったらいるでしょう! カメラがないのに撮影なんて出来ないでしょう!」
「いや、してたじゃん!」
「満足するものを撮るには適したカメラや機材が必要なのよ。当たり前でしょう」
「知らないよ!」
オレも知らない。手持ちのカメラで散々撮ってたのにな。プロの拘りは大変だ。いや、付き合わされている阿佐ヶ谷妹のほうか。御愁傷様です。
「道端さんは、帰るんですか?」
「うーん。帰っても家になにもないから会津若松で買い物してから帰ろうかと思ってます」
オレも今から帰るとか嫌すぎる。着くの夜だよ。それなら道の駅に車中泊したほうが何倍もいい。旅館で排水タンクの処理をさせてもらい、水も補給した。
それに、女将さんが喜多方酒蔵場って酒屋さんを紹介してくれたので、そこで土産用とルーシャの晩酌用を買いたい。
……買ったら絶対に飲むだろうから帰れなくなるだろうよ……。
「それなあたしは残るよ。おねーちゃんだけ行って来なよ」
「あんたは運転手。役目を果たしなさい」
「なんの役目よ!」
「運転手としての役目よ!」
姉の迫力に負けて車に乗り込んだ。そんな目でオレを見ないで。どうしてやることもできないんだから……。
「明日には戻って来ますんで」
阿佐ヶ谷姉、行動力が鬼がかってんな……。
「明日なら道の駅あいずにはいると思うので、余裕があったら電話かラインしてください」
「はい、また明日」
だからそんな目でオレを見ないでくれよ、阿佐ヶ谷妹。オレにはなにもしてやれないんだからさ……。
公道最速の異名は伊達ではない。あっと言う間に見えなくなってしまった。
「……何気に運転上手いよな、凛子さんって……」
まだ二十二歳なのに。もしかしてオレより上手いんじゃないか? レーサーになったほうがよかったんじゃね?
「矢代さんはどうします?」
てか、この人、こんなに会社を空けて大丈夫なんだろうか? 出版局ってそんなにフリーダムなん?
「まあ、あと二日くらいは大丈夫ですかね?」
「上司に怒られたりしません?」
オレが上司なら怒り狂うけどな。テメー、なにしとんじゃー! ってな。
「わたしが編集長で編集員なんで。怒られるとしたら経理にですかね?」
なんだろう。この人のことが怖くなったんだけど。お偉いさんの娘だったりするの? 出版社も逆らえないくらいの?
「そんなあからさまな顔をしないでくださいよ。これでも大がつくスクープをいくつも出しているんですから」
それ、事が事すぎて隔離されたんじゃね? 矢代さんを敵にしたら怖いから隔離したんじゃね? 絶対そうだよね。
「矢代さんからなにか恐ろしさを感じてましたが、なんか理解しました」
うん。オレの目に間違いはなかった。絶対、敵にしてはいけない人だわ。
「恐ろしいって酷いな~。わたしは無害ですよ」
自信満々に言うところがさらに恐ろしい。この人は素で事件事故に遭遇して来たんだろうよ。異世界から来たエルフと出会うくらいの運を持っているんだからな。
「了。そろそろ行かないとお店閉まっちゃうよ」
異世界でモンスターとか戦って来た方には矢代さんの恐ろしさはわからないらしい。モンスターって意味では同じなのにな……。
「わかった。矢代さん、車にカーナビついてます?」
「はい、ついてますから大丈夫ですよ」
「はぐれたらルーシャのほうに連絡してください」
そう告げて喜多方酒蔵場に向かった。てか、近かった。迷うこともないくらいに。
「いろいろあるな~」
なんかおしゃれな酒屋だな。品数も二百以上はあるんじゃないか? 日本酒どんだけあるんだか。すべて味が違うとか意味わからんよ。
「了。これって試飲できるんじゃない?」
魔法で言葉を交わし合えるようになったが、文字まではわからない。なのに、酒のことには驚くほど上達を見せている。もう、試飲できるシステムまで理解してきてるよ。
「まだ買い物があるんだからダメだって。夜まで待ちなさい」
「じゃあ、四本買っていい?」
「飲むのは一本だよ」
一升瓶ってところは目をつむりましょう。
「あ、ここはわたしが出しますよ。旅館代、出してもらいましたからね」
ただ自分が飲みたいからでしょうってのは黙っておく。言ったところで聞かないだろうからな。
「なら、これとこれ、あと、これ。残りは……」
オレは見ているだけ。日本酒とかよくわからんし。
「しかし、なんて読むのかわからんものばかりだよな」
名前から味が想像つかない。説明文がなければ辛口のか甘口のかわからんよな。今さらだが、純米とか吟醸ってなんなんだろうな? 味は違うってのはわかったけどよ。
「了。選んだよ」
「あいよ~」
閉店前に買えてなにより。次はスーパーで買い出しだ。
撮影が終わり、ごはんやカフェで遅めの昼食と少々の撮影を終えて金を払っていたら阿佐ヶ谷姉の宣言が耳に届いた。
「はぁ? 今から? 秋田に?」
阿佐ヶ谷姉、かなり鬼畜。今、十七時前だよ。ここらでも三、四時間かかるんじゃない、秋田って? 到着する頃、確実に暗くなっているよね。
「そうだって言ったらいるでしょう! カメラがないのに撮影なんて出来ないでしょう!」
「いや、してたじゃん!」
「満足するものを撮るには適したカメラや機材が必要なのよ。当たり前でしょう」
「知らないよ!」
オレも知らない。手持ちのカメラで散々撮ってたのにな。プロの拘りは大変だ。いや、付き合わされている阿佐ヶ谷妹のほうか。御愁傷様です。
「道端さんは、帰るんですか?」
「うーん。帰っても家になにもないから会津若松で買い物してから帰ろうかと思ってます」
オレも今から帰るとか嫌すぎる。着くの夜だよ。それなら道の駅に車中泊したほうが何倍もいい。旅館で排水タンクの処理をさせてもらい、水も補給した。
それに、女将さんが喜多方酒蔵場って酒屋さんを紹介してくれたので、そこで土産用とルーシャの晩酌用を買いたい。
……買ったら絶対に飲むだろうから帰れなくなるだろうよ……。
「それなあたしは残るよ。おねーちゃんだけ行って来なよ」
「あんたは運転手。役目を果たしなさい」
「なんの役目よ!」
「運転手としての役目よ!」
姉の迫力に負けて車に乗り込んだ。そんな目でオレを見ないで。どうしてやることもできないんだから……。
「明日には戻って来ますんで」
阿佐ヶ谷姉、行動力が鬼がかってんな……。
「明日なら道の駅あいずにはいると思うので、余裕があったら電話かラインしてください」
「はい、また明日」
だからそんな目でオレを見ないでくれよ、阿佐ヶ谷妹。オレにはなにもしてやれないんだからさ……。
公道最速の異名は伊達ではない。あっと言う間に見えなくなってしまった。
「……何気に運転上手いよな、凛子さんって……」
まだ二十二歳なのに。もしかしてオレより上手いんじゃないか? レーサーになったほうがよかったんじゃね?
「矢代さんはどうします?」
てか、この人、こんなに会社を空けて大丈夫なんだろうか? 出版局ってそんなにフリーダムなん?
「まあ、あと二日くらいは大丈夫ですかね?」
「上司に怒られたりしません?」
オレが上司なら怒り狂うけどな。テメー、なにしとんじゃー! ってな。
「わたしが編集長で編集員なんで。怒られるとしたら経理にですかね?」
なんだろう。この人のことが怖くなったんだけど。お偉いさんの娘だったりするの? 出版社も逆らえないくらいの?
「そんなあからさまな顔をしないでくださいよ。これでも大がつくスクープをいくつも出しているんですから」
それ、事が事すぎて隔離されたんじゃね? 矢代さんを敵にしたら怖いから隔離したんじゃね? 絶対そうだよね。
「矢代さんからなにか恐ろしさを感じてましたが、なんか理解しました」
うん。オレの目に間違いはなかった。絶対、敵にしてはいけない人だわ。
「恐ろしいって酷いな~。わたしは無害ですよ」
自信満々に言うところがさらに恐ろしい。この人は素で事件事故に遭遇して来たんだろうよ。異世界から来たエルフと出会うくらいの運を持っているんだからな。
「了。そろそろ行かないとお店閉まっちゃうよ」
異世界でモンスターとか戦って来た方には矢代さんの恐ろしさはわからないらしい。モンスターって意味では同じなのにな……。
「わかった。矢代さん、車にカーナビついてます?」
「はい、ついてますから大丈夫ですよ」
「はぐれたらルーシャのほうに連絡してください」
そう告げて喜多方酒蔵場に向かった。てか、近かった。迷うこともないくらいに。
「いろいろあるな~」
なんかおしゃれな酒屋だな。品数も二百以上はあるんじゃないか? 日本酒どんだけあるんだか。すべて味が違うとか意味わからんよ。
「了。これって試飲できるんじゃない?」
魔法で言葉を交わし合えるようになったが、文字まではわからない。なのに、酒のことには驚くほど上達を見せている。もう、試飲できるシステムまで理解してきてるよ。
「まだ買い物があるんだからダメだって。夜まで待ちなさい」
「じゃあ、四本買っていい?」
「飲むのは一本だよ」
一升瓶ってところは目をつむりましょう。
「あ、ここはわたしが出しますよ。旅館代、出してもらいましたからね」
ただ自分が飲みたいからでしょうってのは黙っておく。言ったところで聞かないだろうからな。
「なら、これとこれ、あと、これ。残りは……」
オレは見ているだけ。日本酒とかよくわからんし。
「しかし、なんて読むのかわからんものばかりだよな」
名前から味が想像つかない。説明文がなければ辛口のか甘口のかわからんよな。今さらだが、純米とか吟醸ってなんなんだろうな? 味は違うってのはわかったけどよ。
「了。選んだよ」
「あいよ~」
閉店前に買えてなにより。次はスーパーで買い出しだ。


