なにか圧迫を受けて目を覚ました。
「……なんでこの人はオレの横に来るんだ……?」
オレの浴衣は乱れてはいない。矢代さんの浴衣は……戻しておく。変なことになるの嫌だからな。
ベッドから出て顔を洗いに向かった。
オレが起きたことでルーシャも起き出し、洗面台を譲った。
「お風呂に入って来るわね」
「朝酒はダメだからな」
と、釘を刺す。酒に強いからって飲みすぎはよくありません。
「わかってるわよ」
ルーシャを見送り、お茶でも飲むとする。
窓の外が風景を眺めあながらのんびりとお茶を飲んでいると、矢代さんが起き出した。
あれだけ飲んで七時前に起きるとか地味に凄いよな。ただ、浴衣の前はただして欲しい。昨日今日会った男であることを自覚して欲しいものだ。
「……おはようございます……」
「おはようございます。ルーシャは風呂に行きましたよ。矢代さんも行きますか?」
「あーなら行こうかな。せっかくの旅館ですしね」
行くのならちゃんと浴衣を直してからにしてくださいね。他のお客がびっくりするから。
出て行く矢代さんを見送り、またのんびりとお茶を飲んだ。
一時間くらいしてホカホカになった二人が帰って来た。阿佐ヶ谷姉も連れて。
「朝食、八時半にお願いしました」
「わかりました。朝食後、今日はどうします?」
昨日のうちに決めることだが、宴会になってなにも決められなかったのだ。
「十時まで外で撮影しましょう。この奥に神社があるようなので、旅をしている風の写真を撮りましょう。帰って来たら旅館に入る図、足湯に浸かる図、温泉に入っている図とか、午前中に済ませます。午後からはこの近くにある廃駅で撮るというのはどうでしょうか?」
廃駅なんて──あ、桜を見に行った日中線か。その路線の駅だったところなんだな。
「まあ、わたしは構わないけど、そんなのでいいの? わたしなんかで……」
「ルーシャさんだからいいんですよ!」
「まさに理想を形にしたようなエルフ。コスプレと言い張るのも難しいくらいのエルフ。これがいいんですよ! 写真集が出たら絶対に売れます! わたしが写真集にしてみせます!」
世の中はそんなにエルフを求めているのか? っては思うもののルーシャに金は残してやりたい。オレの貯金も無限ではないからな。故郷に帰るまで、この世界を楽しめる金は作ってやりたい。ってまあ、稼ぐのはルーシャなんだけど! オレはそのサポートをさせていただきます!
「……了……」
矢代さんの迫力に圧されてオレに助けを求めてきた。
「大丈夫。矢代さんは悪い人ではないから」
まともな人かと問われたら視線を逸らしてしまうかもだけど……。
「……まあ、了がそう言うなら……」
「オレだけではルーシャを守ることはできない。なら、信頼できる人を仲間にしたらいい。矢代さんや阿佐ヶ谷さんたちなら大丈夫だ」
性格的にはアレだが、人格的には信頼できる。この人たちは大丈夫だと思える人たちだ。オレ、そういう感覚だけは絶対の自信があるのだ。
「な、なんか、そうはっきり言われちゃうと照れちゃいますね」
「道端さん、絶対人をタラシ込んできましたよね」
別にタラシ込んだことはないよ。普通に接してきたわ。彼女だって出来たことないし。
と、ドアがノックされ、阿佐ヶ谷姉が出てくれたら妹が入って来た。
「おはようございま~す! 朝食に行きましょう」
天真爛漫と言うのか、これぞ若さと言うのか、阿佐ヶ谷妹はムードメーカーみたいな子である。妹だったら可愛がっているか苦労しているかのどっちかだろうよ。
「朝食後はそんな感じにして、朝食に行ってみますか」
まだ十分くらい早いが、それならロビーで待つのでもいい。空気を変えるために行ってみるとしよう。
皆でぞろぞろと向かい、入っていいとのことなので朝食にした。
日本の朝、みたいな朝食であり、納豆なんて久しぶりに食べた。働いていたときは冷凍食品が主だった。炊飯器なんていつの間にか壊れていたっけ。
「朝から贅沢~」
若いだけによく食べる。オレもこのくらいのときはよく食べていたっけ。オレもしっかり食べてあの頃の体を取り戻そう。
朝食が終われば一旦部屋に。ルーシャは新しい浴衣に着替え、他はいつもの服に着替える。
フロントに声をかけたら女将さんにお願いして玄関で記念撮影をした。こういう旅の一ページを切り取るのもいいものだ。
「気をつけていってらっしゃいませ」
女将さんに見送られ、熱塩温泉の奥へと向かってみた。
道すがら阿佐ヶ谷姉がルーシャを撮りまくる。それに写らないよう細々と移動させられる。
「温泉街、って感じではないですけど、山奥の村感はありますね」
オレも都会、ってほど都会に住んではいなかったが、阿佐ヶ谷妹の言う例えもよくわかる。住んでいる人には申し訳ないが、よくこんなところに住んでいるな~っては思うよ。バスも電車もない。買い物に行くまで大変だろうよ。
奥まで来ると、共同浴場があった。
「なかなかいいじゃないか」
綺麗な日帰り温泉もいいが、こういう地元の人が入るところも味があっていいものだ。次来たときに入ってみようっと。
「……なんでこの人はオレの横に来るんだ……?」
オレの浴衣は乱れてはいない。矢代さんの浴衣は……戻しておく。変なことになるの嫌だからな。
ベッドから出て顔を洗いに向かった。
オレが起きたことでルーシャも起き出し、洗面台を譲った。
「お風呂に入って来るわね」
「朝酒はダメだからな」
と、釘を刺す。酒に強いからって飲みすぎはよくありません。
「わかってるわよ」
ルーシャを見送り、お茶でも飲むとする。
窓の外が風景を眺めあながらのんびりとお茶を飲んでいると、矢代さんが起き出した。
あれだけ飲んで七時前に起きるとか地味に凄いよな。ただ、浴衣の前はただして欲しい。昨日今日会った男であることを自覚して欲しいものだ。
「……おはようございます……」
「おはようございます。ルーシャは風呂に行きましたよ。矢代さんも行きますか?」
「あーなら行こうかな。せっかくの旅館ですしね」
行くのならちゃんと浴衣を直してからにしてくださいね。他のお客がびっくりするから。
出て行く矢代さんを見送り、またのんびりとお茶を飲んだ。
一時間くらいしてホカホカになった二人が帰って来た。阿佐ヶ谷姉も連れて。
「朝食、八時半にお願いしました」
「わかりました。朝食後、今日はどうします?」
昨日のうちに決めることだが、宴会になってなにも決められなかったのだ。
「十時まで外で撮影しましょう。この奥に神社があるようなので、旅をしている風の写真を撮りましょう。帰って来たら旅館に入る図、足湯に浸かる図、温泉に入っている図とか、午前中に済ませます。午後からはこの近くにある廃駅で撮るというのはどうでしょうか?」
廃駅なんて──あ、桜を見に行った日中線か。その路線の駅だったところなんだな。
「まあ、わたしは構わないけど、そんなのでいいの? わたしなんかで……」
「ルーシャさんだからいいんですよ!」
「まさに理想を形にしたようなエルフ。コスプレと言い張るのも難しいくらいのエルフ。これがいいんですよ! 写真集が出たら絶対に売れます! わたしが写真集にしてみせます!」
世の中はそんなにエルフを求めているのか? っては思うもののルーシャに金は残してやりたい。オレの貯金も無限ではないからな。故郷に帰るまで、この世界を楽しめる金は作ってやりたい。ってまあ、稼ぐのはルーシャなんだけど! オレはそのサポートをさせていただきます!
「……了……」
矢代さんの迫力に圧されてオレに助けを求めてきた。
「大丈夫。矢代さんは悪い人ではないから」
まともな人かと問われたら視線を逸らしてしまうかもだけど……。
「……まあ、了がそう言うなら……」
「オレだけではルーシャを守ることはできない。なら、信頼できる人を仲間にしたらいい。矢代さんや阿佐ヶ谷さんたちなら大丈夫だ」
性格的にはアレだが、人格的には信頼できる。この人たちは大丈夫だと思える人たちだ。オレ、そういう感覚だけは絶対の自信があるのだ。
「な、なんか、そうはっきり言われちゃうと照れちゃいますね」
「道端さん、絶対人をタラシ込んできましたよね」
別にタラシ込んだことはないよ。普通に接してきたわ。彼女だって出来たことないし。
と、ドアがノックされ、阿佐ヶ谷姉が出てくれたら妹が入って来た。
「おはようございま~す! 朝食に行きましょう」
天真爛漫と言うのか、これぞ若さと言うのか、阿佐ヶ谷妹はムードメーカーみたいな子である。妹だったら可愛がっているか苦労しているかのどっちかだろうよ。
「朝食後はそんな感じにして、朝食に行ってみますか」
まだ十分くらい早いが、それならロビーで待つのでもいい。空気を変えるために行ってみるとしよう。
皆でぞろぞろと向かい、入っていいとのことなので朝食にした。
日本の朝、みたいな朝食であり、納豆なんて久しぶりに食べた。働いていたときは冷凍食品が主だった。炊飯器なんていつの間にか壊れていたっけ。
「朝から贅沢~」
若いだけによく食べる。オレもこのくらいのときはよく食べていたっけ。オレもしっかり食べてあの頃の体を取り戻そう。
朝食が終われば一旦部屋に。ルーシャは新しい浴衣に着替え、他はいつもの服に着替える。
フロントに声をかけたら女将さんにお願いして玄関で記念撮影をした。こういう旅の一ページを切り取るのもいいものだ。
「気をつけていってらっしゃいませ」
女将さんに見送られ、熱塩温泉の奥へと向かってみた。
道すがら阿佐ヶ谷姉がルーシャを撮りまくる。それに写らないよう細々と移動させられる。
「温泉街、って感じではないですけど、山奥の村感はありますね」
オレも都会、ってほど都会に住んではいなかったが、阿佐ヶ谷妹の言う例えもよくわかる。住んでいる人には申し訳ないが、よくこんなところに住んでいるな~っては思うよ。バスも電車もない。買い物に行くまで大変だろうよ。
奥まで来ると、共同浴場があった。
「なかなかいいじゃないか」
綺麗な日帰り温泉もいいが、こういう地元の人が入るところも味があっていいものだ。次来たときに入ってみようっと。


