授業が終わり学校から帰る人、たむろする人で混雑する中、ひとりの男が波橋くんに突っかかった。
波橋くんはそれを躱し、何故か私を見て言った。
「菜々美は俺の妹だから!」
私に何故?
何を言ってるんだ?
「…そう」
もうこれだけで精一杯だった。
混乱する脳内を書き替えるようにイヤフォンを付けてこの日は帰路についた。
家に帰ると私は制服を脱ぎ捨てて、冷蔵庫にあったジュースを流し込む。
殺風景な家の中でここでも孤独を感じ、寂しくなったその時、家のインターフォンが鳴る。
「はーい」
扉を開けると波橋くんが居た。
「波橋くん…?」
「俺、誤解されたくなかったから……」
訳が分からず首を傾げると
「凛が好きだから、菜々美との誤解をされたくなくて誤解を解きにきた」
「……え?」
「凛、お前が好きだ。付き合って欲しい」
「何を言ってるの?」
「凛が好きって付き合って欲しいって告白してんだよ」
「……」
「凛?」
「……ごめんね」
「え?」
「もう人が信じられない」
そう言って扉を閉める。
波橋くんからはそれ以上何も言っては来なかった。
翌朝、家から出ると波橋くんが待っていた。
「おはよう」
「おはよ」
「昨日はごめん……一方的に告白して」
「うんん、大丈夫。告白自体は嬉しかった」
「そっか。じゃあ、諦めない」
「え?」
「いつか凛が俺を信じてくれるその時まで、諦めないし、何度でも告白するから」
「……」
その日から四六時中波橋くんは私に付き纏い、毎日私に告白をして来た。
「凛……」
「いいよ、もう…波橋くんの気持ちはわかった。波橋くん、私と付き合ってください」
「?!本当に!?」
目を開き驚く波橋くんを愛おしく思いながら私は波橋くんに抱きついた。
何事にも真っ直ぐで、一生懸命で、根は優しく、真面目な波橋くんだから好き。
「うんっ!」
朝の河川敷、ふたりで暫くハグをして
この日は大幅に遅れて学校に着いた。



