7月も中旬に差し掛かり、いよいよ夏本番の暑さが増えて来た頃
私の武勇伝は相変わらず独り歩きをしたままの状態が続いていた。
が、ひとつ変わったことは
「おい、凛。テスト勉強教えてくれ」
「姉御〜!テスト勉強手伝ってください〜!」
「俺も〜!」
「また!?」
クラスの男子が小テストを重ねる内に何故か私に懐き、私はみんなのテスト勉強を手伝っていた。
きっかけは春の初っ端にあったテストのランキングと漢字の小テストだった。
中学の時は中の下に寄った私の成績もここでは上の方だったからだ。
その日以来、クラスの男子から頼られることが増えた。
「わかった!放課後ね!」
「「へ〜い」」
そして放課後の勉強会を重ね迎えたテスト当日の朝
同じクラスの鬼紅くんと天堂くんと遭遇した。
「あれ?中本おはよう。珍しいな登校時間被るの」
「おはよ、鬼紅くん、天堂くん」
「……はよ」
「ふたりは今日も一緒に登校してるの?」
「おうよ、天堂の奴朝が苦手でな。モーニングコールとお迎えしてやってんだ」
「へーそうなんだー」
と相槌を打ちながら天堂くんを見るとヘッドホンを着け、棒付きキャンディーをペロペロと舐めている。
「ほら、天堂。女にぶつかるだろこっち来い」
グイッと鬼紅くんが天堂くんをさり気なく壁際へと引き寄せる。
「……」
天堂くんは相変わらずヘッドホンを装着したままキャンディーに夢中になっていた。
テストが終わるといよいよ夏休み。
クラスのみんなも浮き足立って居るのを感じる。
「なぁー!終業式だしみんなでカラオケ行かねー?」
「「いいね〜!」」
わいわい盛り上がる教室内で波橋くんが私にメールを送った。
"なぁ、このあと暇?カラオケ行く?"
"行こうかな。波橋くんは?"
"俺も行こうと思ってた!"
カラオケに着いてから早2時間後
利用時間が来たので解散すると波橋くんは私をゲーセンへと誘う。
「波橋くん、門限とか大丈夫?」
時刻は19時世間的には晩御飯の時刻。
「大丈夫。なんなら、俺が居なくても母さんはずっと仕事場に泊まってるし、父さんは酔ってて面倒だから帰らない方が楽なんだよな。それより、凛は門限大丈夫なのか?」
「私の所も大丈夫だよ、ふたりとも仲が悪いから。親が不仲だとしんどいよね」
「……だな」
複雑な家庭なんだろうか、そう話す彼の横顔が少し悲しそうに見えた。
なので私はふと視界に入った少年漫画のキャラクターグッズを指さし、話題を逸らした。
「あ、これ……」
私が指さしたグッズは最近話題の少年漫画が原作のアニメだった。
「最近話題だよな。知ってんの?」
「話題だよねー、知ってるよ」
と他愛ないやり取りをしているとお母さんからメールが届く。
"何時だと思ってるの?早く帰って来なさい"
「帰るか、送ってく」
「そうだね。ありがとう」
差し伸べられた手を取り足並みを揃えて歩き出した。



