朝、目が覚める。ふかふかのベッド。ずっと寝ていたいくらいだ。いつもの絶望は、薄れていた。そんなことを思いながら起き上がると、薫さんが立っていた。
「よしおきたね!じゃあ朝ごはん食べよっか!」
 腕を引っ張られ、昨日の場所に連れていかれた。
 そこには大きなパンが入った籠、そして一人一人におかれた目玉焼きとベーコン、サラダと牛乳があった。
 そして続々と他の人たちも来ていた。
「よし、それじゃ」
「「「いただきます」」」
 こんな豪華な朝ごはんは始めてだった。しかもすごく美味しい。気がついたら、すごいスピードで食べていた。
「わ、はや~い」
「よっぽど美味しかった?」
 そうかおるさんが聞いてきた。
「はい!これを毎日食べれるのでしたらさいっこうですよ!」
 そう反応したとき、かおるさんは少し驚いていたが
「あら、嬉しいわ」
 そう返してくれた。
 
 ご飯を食べた後、薫さんに連れられ、屋敷の地下に連れていかれた。そこは訓練場として使われていて、屋敷の雰囲気に似合わない、コンクリートで固められた軍事施設のようなものだった。
「じゃあまずこれを着てみて」
 そう渡されたそれは、他の人たちがみんな来ているのと同じような迷彩服だった。
「この服ね、ただの服じゃなくて魔法少女に最適化された特殊な服なんだ」
「…このスカートもなんですか?」
 そういうと、薫さんはうなずいて飛んだ。
 本当に飛んだ。10メートルくらいの天井に飛んで手を着けている。
「こんな風に飛ぶとき、空気を足場にするイメージで飛んでるから、空気を取り入れやすいスカートとの方が飛びやすいんだ」
 なるほど。薫さんが降り立つと、4、5メートルくらいの高さの…何か(それを形容する語彙が見つからない)を指差した。
「じゃ、まずはこれを乗り越えてみて」
「えっ…えっ!?」
 絶対無理だ。運動神経がないし、そもそも人がそんな高さジャンプできるとは…
 え、もういる…
「以外と大丈夫だから!」
 …もうどうにでもなれ!
 そう思って飛んだ。思ったより身体が軽く感じた。気づいたら、飛べないと思っていたのを飛んでいた。
「ほら!」
「ほ、本当に飛べた…」
「…ちょっとお勉強しよっか」
 お勉強。
「突然変異型魔法覚醒及び性転換症候群。一般では魔法少女症候群って呼ばれているこの病気は、身体能力の向上や魔法と呼ばれる物理法則に反した現象を起こせる。また、感染者問わず必ず女性になる…そして、二十歳で死亡してしまうという症状を持っている。これを私たちは呪いといっているんだ」
「………」
「ま、簡単に言えば、身体が強くなるけど早死にしてしまう病気にかかった…ということ」
「な、なるほど」
 よくわかなんないけど…なんかわかった気がする。
「うーん…次は基礎魔法について教えようかな」
「基礎?」
「うん。魔法少女一人一人が持っている属性魔法とは違って、魔法少女なら誰もが扱える『力』だよ」
 力。魔法だったら魔力だろうと思っていたけど…
「その力を使うと、空を飛べるし球にして魔群を退治できるんだ」
「たとえば…ねっ!」
 そういって、さっきいた何かを破壊した。
「えっ…えっ!?」
「まあこんな風に、大きいものも破壊できるから、しばらくは特訓だよ!」
 気が遠くなりそうな内容だなぁ。そう思って、僕は特訓に取り組み始めた。