高校生がされて嫌なことランキング堂々のトップ三位入り。
(――既読無視! 俺のメッセージ既読無視しやがったあいつ……!!)
「冬城柊ぃ……あいつ、マジで赦さねえ……」
校内では基本的にスマホ禁止とはいえ、陰でこそこそ弄っているやつなんてごまんといる。
冬城も、メッセージを確認したということはスマホを弄っていることだろう。気づいていない、あるいは通知を切っている、あるいは学校だから見ないようにしているならまだしも、既読スルーなんてひどすぎる。せめても、スタンプとか返す余裕くらいあっただろう。
朝からメッセージを送ったというのに、体育終わりくらいに既読が着いた以降返信がない。そのまま昼休みになってしまった。
俺は、一年生の教室がある二階まで下りて冬城のことを探すことにした。
俺が送ったメッセージは「昼ごはん一緒に食べね?」という一文だけだったが、それだけで十分意図は伝わるだろう。
一年生のフロアには当然のことながら一年生しかいない。見慣れない顔ばかり。でも、きっとあっちもそうで、学年全員の顔と名前を把握しているわけじゃないから、二年生の俺が混ざっていても気付かないだろう。
廊下ですれ違う人にコソコソ見られるわけでもなく、俺は、怪しまれないように一つ一つ教室を覗いて冬城を探して回った。目立つやつだし、案外すぐに見つかるだろうと思ったが、これが意外と見つからない。
中庭とか、もう散ってしまったが桜の下で食べるやつもいれば、購買にいってそのまま外で食べるやつもいる。各部室で食べるやつもいるし、昼休みはかなり自由だ。
冬城もそういうタイプだろうか、と思って最後の一年七組の教室を見ると、窓の端にちょうどお弁当箱を広げようとした冬城の姿が目に入った。先ほどはしていなかった黒マスクをしていて、それも外すところだった。
「冬城!!」
思わず教室の外から名前を叫んでしまい、バッと教室にいた一年生の視線が集まる。教室の出入り口付近だったこともあり、後ろから来たやつにも見られてしまった。
冬城は、開けかけた弁当箱を閉じた後こちらを見る。何やら眉間にしわを寄せて怒っている様子だ。
(え、何で、何で?)
近くにいた女子が「冬城くん知り合い?」と彼に聞くと、冬城は弁当箱を保冷バックに入れなおし立ち上がるとそのままこっちに来た。
ずんずんと近づいてくるものだから、俺は身体が変に硬直する。冬城の手にはこいつの好きな色なのか、黒い保冷バックが下げてある。
「で、何ですか。小春先輩」
「お、おぅ……一緒に、昼飯どうかなって……って! お前、既読無視して!!」
「いや、誤送信かなって思って」
「なわけねえだろ! 誰がんな誤送信するか!」
みんなの前なのか、初めて『小春先輩』なんて名字で呼んじゃって。なんか新鮮だな、と思っていると、すごい眼圧で見下ろされてしまったのでヒュッと喉がなってしまう。
やっぱり、なんか怒ってるよなーと冬城を見てて思う。学校では話しかけてくるなとかそういう、オンオフを切り替えるタイプなのだろうか。
俺があわあわと目を泳がせていると、はぁ、と頭上にため息が落ちてくる。
「先輩、ここ教室の出入り口なんで邪魔ですよ」
「わ、わるぃ……って、冬城」
「今度はなんですか」
「……既読、つけたんな、ら、さ。見てんだろ。一緒に昼飯とか、ど?」
俺はもう一度伝わるように冬城に言った。ただそれだけのことなのに、心臓がバクバクと煩い。告白しているわけでもあるまいし、ただたんに昼飯に誘っているだけ。
俺は手に持っていたエコバックをぎゅっと握って視線を下に落とす。顔が合わせられない。
それからしばらくの沈黙の後、また「はあ」と先ほどよりも小さなため息が聞こえてくる。
「先輩、邪魔です」
「あ、やっぱやだよなあ。同じ学年のやつと食べたいって……冬城?」
「どこで食べるんですか。連れてってください」
顔を上げるとそこには、なんとも言えない表情をした冬城の顔があった。怒っているわけでも、迷惑そうにしているわけでもない。いや、ちょっとはしてるんだろうけど、それだけじゃ表せない複雑な表情をしている。でも、半分マスクで隠れているからわからない。
ただ、早くしろという圧を感じたので、俺は教室の扉から離れて「こっち」と冬城を誘導する。どこで食べるかと考えていなかったが、パッと浮かんだ人目につきにくい場所に俺は足を進める。
歩き出した俺の後ろを冬城が着いてきている感覚がした。やっぱり、律儀というか従順というか。また余計に冬城のことがよくわからなくなる。
(でも、嫌がらず着いてきてくれるってことは、多少なりに、俺のこと嫌いじゃないってことだよな……)
冬城のことはよくわからない。でも、このまたとないチャンスを俺は逃すわけにはいかなかった。
(――既読無視! 俺のメッセージ既読無視しやがったあいつ……!!)
「冬城柊ぃ……あいつ、マジで赦さねえ……」
校内では基本的にスマホ禁止とはいえ、陰でこそこそ弄っているやつなんてごまんといる。
冬城も、メッセージを確認したということはスマホを弄っていることだろう。気づいていない、あるいは通知を切っている、あるいは学校だから見ないようにしているならまだしも、既読スルーなんてひどすぎる。せめても、スタンプとか返す余裕くらいあっただろう。
朝からメッセージを送ったというのに、体育終わりくらいに既読が着いた以降返信がない。そのまま昼休みになってしまった。
俺は、一年生の教室がある二階まで下りて冬城のことを探すことにした。
俺が送ったメッセージは「昼ごはん一緒に食べね?」という一文だけだったが、それだけで十分意図は伝わるだろう。
一年生のフロアには当然のことながら一年生しかいない。見慣れない顔ばかり。でも、きっとあっちもそうで、学年全員の顔と名前を把握しているわけじゃないから、二年生の俺が混ざっていても気付かないだろう。
廊下ですれ違う人にコソコソ見られるわけでもなく、俺は、怪しまれないように一つ一つ教室を覗いて冬城を探して回った。目立つやつだし、案外すぐに見つかるだろうと思ったが、これが意外と見つからない。
中庭とか、もう散ってしまったが桜の下で食べるやつもいれば、購買にいってそのまま外で食べるやつもいる。各部室で食べるやつもいるし、昼休みはかなり自由だ。
冬城もそういうタイプだろうか、と思って最後の一年七組の教室を見ると、窓の端にちょうどお弁当箱を広げようとした冬城の姿が目に入った。先ほどはしていなかった黒マスクをしていて、それも外すところだった。
「冬城!!」
思わず教室の外から名前を叫んでしまい、バッと教室にいた一年生の視線が集まる。教室の出入り口付近だったこともあり、後ろから来たやつにも見られてしまった。
冬城は、開けかけた弁当箱を閉じた後こちらを見る。何やら眉間にしわを寄せて怒っている様子だ。
(え、何で、何で?)
近くにいた女子が「冬城くん知り合い?」と彼に聞くと、冬城は弁当箱を保冷バックに入れなおし立ち上がるとそのままこっちに来た。
ずんずんと近づいてくるものだから、俺は身体が変に硬直する。冬城の手にはこいつの好きな色なのか、黒い保冷バックが下げてある。
「で、何ですか。小春先輩」
「お、おぅ……一緒に、昼飯どうかなって……って! お前、既読無視して!!」
「いや、誤送信かなって思って」
「なわけねえだろ! 誰がんな誤送信するか!」
みんなの前なのか、初めて『小春先輩』なんて名字で呼んじゃって。なんか新鮮だな、と思っていると、すごい眼圧で見下ろされてしまったのでヒュッと喉がなってしまう。
やっぱり、なんか怒ってるよなーと冬城を見てて思う。学校では話しかけてくるなとかそういう、オンオフを切り替えるタイプなのだろうか。
俺があわあわと目を泳がせていると、はぁ、と頭上にため息が落ちてくる。
「先輩、ここ教室の出入り口なんで邪魔ですよ」
「わ、わるぃ……って、冬城」
「今度はなんですか」
「……既読、つけたんな、ら、さ。見てんだろ。一緒に昼飯とか、ど?」
俺はもう一度伝わるように冬城に言った。ただそれだけのことなのに、心臓がバクバクと煩い。告白しているわけでもあるまいし、ただたんに昼飯に誘っているだけ。
俺は手に持っていたエコバックをぎゅっと握って視線を下に落とす。顔が合わせられない。
それからしばらくの沈黙の後、また「はあ」と先ほどよりも小さなため息が聞こえてくる。
「先輩、邪魔です」
「あ、やっぱやだよなあ。同じ学年のやつと食べたいって……冬城?」
「どこで食べるんですか。連れてってください」
顔を上げるとそこには、なんとも言えない表情をした冬城の顔があった。怒っているわけでも、迷惑そうにしているわけでもない。いや、ちょっとはしてるんだろうけど、それだけじゃ表せない複雑な表情をしている。でも、半分マスクで隠れているからわからない。
ただ、早くしろという圧を感じたので、俺は教室の扉から離れて「こっち」と冬城を誘導する。どこで食べるかと考えていなかったが、パッと浮かんだ人目につきにくい場所に俺は足を進める。
歩き出した俺の後ろを冬城が着いてきている感覚がした。やっぱり、律儀というか従順というか。また余計に冬城のことがよくわからなくなる。
(でも、嫌がらず着いてきてくれるってことは、多少なりに、俺のこと嫌いじゃないってことだよな……)
冬城のことはよくわからない。でも、このまたとないチャンスを俺は逃すわけにはいかなかった。



