そして桜との再会を誓ったクリスマスの日の朝
俺はかなり早めに身支度を済ませて待ち合わせの19時までスマホを適当に弄ったりして時間を潰し、そして余裕を持って自宅を出て約束の公園へと向かった。

公園へ辿り着き時計を見ると丁度19時だった。
桜の枯れ木がイルミネーションにより彩られカップルが盛り上がっているのを横目にひとりで一通り回ると俺は家へと帰宅した。
父さんも母さんもふたりとも仕事で居ない為、俺は桜のイルミネーションを思い出し桜と見たかったと玄関で泣き崩れた。

いつまで泣いていたのだろう涙も乾き喉も乾いた頃母さんが帰って来て玄関で座り込み目を腫らした俺を見て母さんは小さく悲鳴を上げ「どうしたの」と聞いて来た。
そして俺は今日のことと桜のことも話した。
「やっぱり気付くか…ごめんね…すぐに言えなくて」
そう言って俺を抱きしめた母さんは少し涙声で震えていた。
きっと母さんも辛かったんだろう良心が痛んでいたのだろうと思うと申し訳なくなると同時に母さんと父さんに感謝したくなった。
「母さん、俺のこと気遣ってくれてありがと」
「どういたしまして。でも、傷付く所は見たくないって教えなかった私達も悪いわ…本当にごめんね…」

その日の夜眠りに就くと夢に桜のが出て来た。
「桜!」
「明ちゃん!」
俺達はハグをし合って久しぶりの再会を喜んでいると桜が呟く。
「明ちゃん、私…約束守りに来たよ」
とびっきりの笑顔で桜が笑う。
「桜…ありがとう…」
思わず桜を抱きしめる。
「どうし…」
「日記…叔父さんに見せて貰ったんだ。俺も桜が好きだ、ずっとずっと愛してる」
「……そっか、見ちゃったかー。恥ずかしいな…」
頬を染めて手で顔を扇ぐ。
「だって嬉しかったから…俺も同じ気持ちだし」
「そっか…ありがとう明ちゃん。私も明ちゃんのことが大好き!愛してるっ!」
そこからはふたりで歌い踊り、ムキムキになった俺を嗤ったりして和やかに時が過ぎて行った。
「あ、もう時間か…」
「桜?」
途端にしょんぼりする桜にどうしたのか聞こうと近づくと桜が口を開いた。
「明ちゃん、私ね…明ちゃんが大好きだよ!ずっと一緒に居たかったよ!でもね、明ちゃんには前に進んで欲しいとも思ってるんだ」
「桜?何を言って…」
そう言いかけて気付く徐々に桜が透明になっていくことに。
「明ちゃん、私幸せだったよ!だから明ちゃんも早く幸せになってね!」
笑顔の桜が完全に消え去って俺は泣きながら起床した。

起きると学校へ向かい放課後俺は電車に乗り込み桜との約束の場所へ再び訪れていた。
初めて来た時は沢山のカップルで気付けなかったが改めて見ると道の途中で分かれ道になっていた。
なので前とは違う道を選び進んで行く。
すると丘の上に月光に透ける桜の幻影が見えた。
「桜」
「明ちゃん…ふふっさっきぶりだね」
「だなっ」
「…あーぁ、明ちゃんにバレちゃったかあー」
「?」
「ここね、私の真のお気に入りなの♪月がよく見えて後ろはイルミネーションで彩られてて好きなんだー」
「そうだったんだな…あー!俺も初見で気づきたかったなあー!」
俺が悔しがってると
「ここ目立たないから明ちゃんも気付かないと思ったのにーまぁ、いいや!やっぱり綺麗だなー」
桜は口を尖らせながらイルミネーションを眺める。
「確かに綺麗だな…でも、桜も綺麗だ」
俺も桜に習いイルミネーションを眺め本音を告げる。
「なにそれー漫画じゃないんだからね!でも、ありがとう」
にっこり微笑む桜を見て俺は再び桜お気に入りの絶景へと目を向け再び桜を見ようと視線を向けると桜は消え去っていた。

そして翌朝のニュースには"親子の交通死亡事故の犯人獄中自殺!"の見出しがトピックとなっていた。