看護師達の粋な計らいで俺達はふたりで一緒の時間に病室を旅立つことになった。
母さんに連れられて桜と桜の母さんに挨拶をしタクシーに乗り込むと…
「待って!」
「桜!?」
「絶対会おうね!約束だからね!」
といつもの活発な桜には似合わない不安で一杯の表情で念を押す。
「当たり前だろ!桜も期待して待ってろよ!ムキムキになってるからな!」
それが俺と桜の最後のやり取りになることも知らずに俺は桜に手を振りタクシーは走り出した。

一ヶ月後俺は経過観察の為に病院を訪れる。
「お、明じゃん!元気してたか?」
「黎にぃちゃん!俺は元気だよ!それより桜に会った?元気にしてるかな?」
いつも優しく笑顔の朗らかな中3の黎にぃちゃんに桜の容態を聞く。
「あっ…お前知らないのか…」
「…?なんだよ、桜に会ったのか?」
黎にぃちゃんは数秒間悩んだ末
「桜なら退院した数時間後にここに運ばれて亡くなったよ…交通事故だってさ」
「は?」
と告げ、気まずそうに俺を励ました。
だが、俺はもう何も考えられずただただ呆然としていた。