湿った落ち葉で埋め尽くされた地面は、昨日の雨で泥濘んでいる。
背の高い木々に覆われ陽が入らないこの場所は、晴れていても薄暗く肌寒い。
上を見上げ、ゆっくりと深呼吸をすると、湿っぽい土の匂いが空っぽな身体に入って来た。
リュックからレジ袋を取り出して、狛狐の足元に広げ、座る。
背後のおんぼろな社殿は、風が吹くたびにガタガタと音を立てている。
しばらくして、鳥居の前の通学路から生徒たちの声が聞こえて来た。
「いつも思うけどさー、この神社って不気味だよね」
「確かにご利益無さそうだもんね。参拝してる人見たことないし。むしろ呪われそう」
「うけるっ」
リュックから有線イヤフォンを取り出す。
今日に限って絡まっている。
うざい。
「朝、学校でお勉強するなら片手で食べられたほうがいいわね」
と、母が持たせてくれた稲荷ずしは、一つずつ丁寧にラップをされてフリーザーバッグに入れられていた。五つも。
「わたし、稲荷寿しって好きじゃないんだよね~。神様の前で言うことじゃないけど」
誰にも聞こえない独り言をつぶやきながら、空を見上げる。
昨日の雨風ですっかり葉が落ちた木は、ちゃんと私を隠してくれているのだろうか。
このまま、授業始まったことに気づかないふりしちゃおうかな。その方が私っぽいし。
なんてことを考えながら、ばれたらめんどくさいよね、って結局決まった時間になったら荷物をまとめて学校に向かう準備をしている。
いつもその繰り返し。
立ち上がってペットボトルの水を狛狐にかけ、汚れを落としてあげる。
ふと後ろから落ち葉を踏む音が聞こえた気がした。
人なんて来ないような場所。カラスか、猫だろうか。
リュックを背負って、学校に向かおうと振り返ると、後ろにいたのは、クラスメイトの雨音優(あまね ゆう)
悪いことをしているわけじゃないのに、さっきの女子たちの会話を思い出し、隠れるかそのまま何気ない顔をするか迷う。
なんでここに雨音が……?と思いながら、自分の状況もかなり怪しいことに気づく。
とりあえず弁明しないと。
「いつもいるわけじゃないよ。ほんと、たまたま! そんなことより、授業始まるよ?」
聞きたい事はたくさんあるけど、押し殺す。
どうせ雨音は答えないから。
雨音は私のほうをちらっとみて、何事も無いように、神社の奥に行こうとする。
危ないという噂も知っているし、登校時間が迫っている。
「ちょっと……!」
と、呼び留めようとするけれど、雨音は気にせず行ってしまう。
追いかけるか迷っていると、遠くでチャイムの音がする。
「もぉ~!!」と思いながら昇降口に走る。
どこかで聞いた、彼の噂を思い出しながら。
背の高い木々に覆われ陽が入らないこの場所は、晴れていても薄暗く肌寒い。
上を見上げ、ゆっくりと深呼吸をすると、湿っぽい土の匂いが空っぽな身体に入って来た。
リュックからレジ袋を取り出して、狛狐の足元に広げ、座る。
背後のおんぼろな社殿は、風が吹くたびにガタガタと音を立てている。
しばらくして、鳥居の前の通学路から生徒たちの声が聞こえて来た。
「いつも思うけどさー、この神社って不気味だよね」
「確かにご利益無さそうだもんね。参拝してる人見たことないし。むしろ呪われそう」
「うけるっ」
リュックから有線イヤフォンを取り出す。
今日に限って絡まっている。
うざい。
「朝、学校でお勉強するなら片手で食べられたほうがいいわね」
と、母が持たせてくれた稲荷ずしは、一つずつ丁寧にラップをされてフリーザーバッグに入れられていた。五つも。
「わたし、稲荷寿しって好きじゃないんだよね~。神様の前で言うことじゃないけど」
誰にも聞こえない独り言をつぶやきながら、空を見上げる。
昨日の雨風ですっかり葉が落ちた木は、ちゃんと私を隠してくれているのだろうか。
このまま、授業始まったことに気づかないふりしちゃおうかな。その方が私っぽいし。
なんてことを考えながら、ばれたらめんどくさいよね、って結局決まった時間になったら荷物をまとめて学校に向かう準備をしている。
いつもその繰り返し。
立ち上がってペットボトルの水を狛狐にかけ、汚れを落としてあげる。
ふと後ろから落ち葉を踏む音が聞こえた気がした。
人なんて来ないような場所。カラスか、猫だろうか。
リュックを背負って、学校に向かおうと振り返ると、後ろにいたのは、クラスメイトの雨音優(あまね ゆう)
悪いことをしているわけじゃないのに、さっきの女子たちの会話を思い出し、隠れるかそのまま何気ない顔をするか迷う。
なんでここに雨音が……?と思いながら、自分の状況もかなり怪しいことに気づく。
とりあえず弁明しないと。
「いつもいるわけじゃないよ。ほんと、たまたま! そんなことより、授業始まるよ?」
聞きたい事はたくさんあるけど、押し殺す。
どうせ雨音は答えないから。
雨音は私のほうをちらっとみて、何事も無いように、神社の奥に行こうとする。
危ないという噂も知っているし、登校時間が迫っている。
「ちょっと……!」
と、呼び留めようとするけれど、雨音は気にせず行ってしまう。
追いかけるか迷っていると、遠くでチャイムの音がする。
「もぉ~!!」と思いながら昇降口に走る。
どこかで聞いた、彼の噂を思い出しながら。

