ザァァァァァ…
夏祭りの日から数日。私はずっとカメラのことを考えていた。だけど何も分からない。唯一予想できるのは、このカメラで撮った写真には“シャッターを切った人の気持ちが文字になって現れる”のではないかということ。
「うーーん…」
よく分かんないし、とりあえずどこで買ったのか聞いてみようかな、なんて考えながら飲み物を飲むためにベットから立ち上がった。
その時だった。
言葉にできないほどの激痛が私の頭を襲う。何度も何度も殴られているみたいで、立つこともできない。頭を抱えてうずくまりながら助けを求めようとする。視界はグラグラしていて見えずらいが、なんとかナースコールを探して手を伸ばす。
「くっ…うわぁぁぁぁぁ」
途端に引きちぎられるような痛みに叫んでしまう。死を覚悟した。結局ナースコールまで手は届かず、床に倒れ込んだ。
準、優羽、助けて…
【準side】
助けて…
授業中ふと梨乃の顔が浮かんで、寒くもないのに身震いした。
それとほぼ同じタイミングで俺のスマホがポケットの中で振動した。
電話だ。
嫌な予感がする。出ない方がいい。そう分かっていながら俺は勝手に教室を出て通話ボタンを押した。
「梨乃さんが倒れました。危険な状態です」
村田先生からの電話だった。信じたくないけど、村田先生が嘘をついているとは思えない。俺はこの事実に向き合わなければならないんだ。きっと優羽にも電話がいっているだろう。
「先生!早退しますっ」
「お、おい!!」
細かいことも言わず、俺はカバンを取って病院に向かって走り出す。あまりに焦っていたからか先生は追いかけてきたりはしなかった。
梨乃を1人で戦わせるわけにはいかない。みんなで越えなきゃいけない壁だ。
ピッピッピッ
病院の中に静かに響く電子音。この音だけが、梨乃の命が消えていないことを証明してくれた。
「なんとか一命はとりとめました。ただ、どうしてこの状況になってしまったのかも、いつ目覚めるかも…何も分りません」
「そんなっ…」
梨乃、嘘だと言ってくれ。目を覚ましてくれ。もし俺が梨乃のそばにいて、すぐにナースコールを押していたら、何か変わっていたかも知れない。
静かな病室の中。梨乃を想う涙が、みんなの目からこぼれ落ちた。
「梨乃!もう9月が終わりそうだよ?」
毎日、今日目が覚めるんじゃないかって期待を胸に病室へ足を運ぶ。病室には変わらず電子音が鳴っていた。生きていると証明してくれる音。何よりも怖いのは、この音が心肺停止を知らせる、ピーッという音に変わること。“また”大切な人を失うこと。
自分が中学生の時。幼馴染は隣町の学校に通っていた。小、中と同じクラブチームでサッカーをしていた。だが、難病と闘い、成功率の低い手術を受けることになった。俺は毎日見舞いに行った。風邪も体調を崩すこともほとんどなかった奴だったから、すぐに元気になるものだと思っていた。でも違った。『もう会いたくない』『死にたい…』心の奥で助けを求めていたんだ。自分の力じゃどうすることもできないもどかしさ、やりたいことも出来ず、生きる意味を見失うこと、ストレス…。普通に生きている人には理解できない苦しみで精神的にもかなりしんどかっただろう。だけど、あの時の俺は気づけなかった。会いたくないって言葉に腹を立てて、勢いで言ってしまった言葉がある。絶対にあの時言ってはいけなかった言葉。それでも、謝れなくて1ヶ月が経ち、あいつは自殺した。『最近死にたいってよく言うようになったの。でもまさか本当に…』泣きながら後悔する母親。その光景に胸が痛くて痛くて、あの一言があいつのことを一気に追い込んでしまったんだじゃないかって思った。後悔しても、どれだけ謝ってもあいつが死んだことは紛れもない事実で。だから気になっていた梨乃が入院したと知った時、居ても立っても居られなかった。同じことは繰り返したくない。ずっとそばにいて、一緒に戦って、もう大切な人を失わないって。
優羽と毎日梨乃に話しかける日々。もう一度目が開くことを信じて。
「準、くん?優羽、ちゃん?」
「「梨乃!!!!」」
突然ベットから声がして、見ると梨乃は目を開けて俺たちを見ていた。優羽と安心と喜びで泣きながら、先生を呼ぶためにナースコールを押す。先生や親も病室に来るなり泣いていた。
だけど、
「なんで2人がここにいるの?というか、なんで私病院にいるの?」
梨乃の言葉に、場の空気が一瞬で凍りついた。
乗り越えた壁の先にも、まだ壁が立ちはだかっていることもある。ただそれが、あまりにも意地悪で悲しいだけ___。
夏祭りの日から数日。私はずっとカメラのことを考えていた。だけど何も分からない。唯一予想できるのは、このカメラで撮った写真には“シャッターを切った人の気持ちが文字になって現れる”のではないかということ。
「うーーん…」
よく分かんないし、とりあえずどこで買ったのか聞いてみようかな、なんて考えながら飲み物を飲むためにベットから立ち上がった。
その時だった。
言葉にできないほどの激痛が私の頭を襲う。何度も何度も殴られているみたいで、立つこともできない。頭を抱えてうずくまりながら助けを求めようとする。視界はグラグラしていて見えずらいが、なんとかナースコールを探して手を伸ばす。
「くっ…うわぁぁぁぁぁ」
途端に引きちぎられるような痛みに叫んでしまう。死を覚悟した。結局ナースコールまで手は届かず、床に倒れ込んだ。
準、優羽、助けて…
【準side】
助けて…
授業中ふと梨乃の顔が浮かんで、寒くもないのに身震いした。
それとほぼ同じタイミングで俺のスマホがポケットの中で振動した。
電話だ。
嫌な予感がする。出ない方がいい。そう分かっていながら俺は勝手に教室を出て通話ボタンを押した。
「梨乃さんが倒れました。危険な状態です」
村田先生からの電話だった。信じたくないけど、村田先生が嘘をついているとは思えない。俺はこの事実に向き合わなければならないんだ。きっと優羽にも電話がいっているだろう。
「先生!早退しますっ」
「お、おい!!」
細かいことも言わず、俺はカバンを取って病院に向かって走り出す。あまりに焦っていたからか先生は追いかけてきたりはしなかった。
梨乃を1人で戦わせるわけにはいかない。みんなで越えなきゃいけない壁だ。
ピッピッピッ
病院の中に静かに響く電子音。この音だけが、梨乃の命が消えていないことを証明してくれた。
「なんとか一命はとりとめました。ただ、どうしてこの状況になってしまったのかも、いつ目覚めるかも…何も分りません」
「そんなっ…」
梨乃、嘘だと言ってくれ。目を覚ましてくれ。もし俺が梨乃のそばにいて、すぐにナースコールを押していたら、何か変わっていたかも知れない。
静かな病室の中。梨乃を想う涙が、みんなの目からこぼれ落ちた。
「梨乃!もう9月が終わりそうだよ?」
毎日、今日目が覚めるんじゃないかって期待を胸に病室へ足を運ぶ。病室には変わらず電子音が鳴っていた。生きていると証明してくれる音。何よりも怖いのは、この音が心肺停止を知らせる、ピーッという音に変わること。“また”大切な人を失うこと。
自分が中学生の時。幼馴染は隣町の学校に通っていた。小、中と同じクラブチームでサッカーをしていた。だが、難病と闘い、成功率の低い手術を受けることになった。俺は毎日見舞いに行った。風邪も体調を崩すこともほとんどなかった奴だったから、すぐに元気になるものだと思っていた。でも違った。『もう会いたくない』『死にたい…』心の奥で助けを求めていたんだ。自分の力じゃどうすることもできないもどかしさ、やりたいことも出来ず、生きる意味を見失うこと、ストレス…。普通に生きている人には理解できない苦しみで精神的にもかなりしんどかっただろう。だけど、あの時の俺は気づけなかった。会いたくないって言葉に腹を立てて、勢いで言ってしまった言葉がある。絶対にあの時言ってはいけなかった言葉。それでも、謝れなくて1ヶ月が経ち、あいつは自殺した。『最近死にたいってよく言うようになったの。でもまさか本当に…』泣きながら後悔する母親。その光景に胸が痛くて痛くて、あの一言があいつのことを一気に追い込んでしまったんだじゃないかって思った。後悔しても、どれだけ謝ってもあいつが死んだことは紛れもない事実で。だから気になっていた梨乃が入院したと知った時、居ても立っても居られなかった。同じことは繰り返したくない。ずっとそばにいて、一緒に戦って、もう大切な人を失わないって。
優羽と毎日梨乃に話しかける日々。もう一度目が開くことを信じて。
「準、くん?優羽、ちゃん?」
「「梨乃!!!!」」
突然ベットから声がして、見ると梨乃は目を開けて俺たちを見ていた。優羽と安心と喜びで泣きながら、先生を呼ぶためにナースコールを押す。先生や親も病室に来るなり泣いていた。
だけど、
「なんで2人がここにいるの?というか、なんで私病院にいるの?」
梨乃の言葉に、場の空気が一瞬で凍りついた。
乗り越えた壁の先にも、まだ壁が立ちはだかっていることもある。ただそれが、あまりにも意地悪で悲しいだけ___。


