夏祭り当日。
この日のために、体調管理には特に気をつけてきた。無事にこの日を迎えられていることが嬉しい。
「わぁ!!!梨乃かっわいい〜!」
「優羽もね!」
「やっぱりそう思う!?」
「あ、気のせいだったわ」
「なんでよ〜」
いつもと同じ騒がしい掛け合いをしている私たち。だけどやっぱりどこか違う。賑やかな話し声、焼きそばやたこ焼きの匂い、ちょうちんの灯…特別な場所でなら、なんてことないことだって、特別に感じるのはどうしてなんだろう。心なしか気分も上がって、テンションが高い。
私の今日の服装はワンピース。いつもは病院にしかいないからパジャマだけど、今日だけでもオシャレがしたい!とお母さんに頼み込んだんだ。本当は浴衣が着たかったけど、動きづらいし、体に負担がかかるからと断念。それでも、和柄のワンピースはお祭りの雰囲気にぴったりで、この服にして正解!優羽は浴衣が着れない私を気遣ってか、涼しげなTシャツにプリーツスカート。もともとスタイルがいいからめちゃくちゃ似合ってる。ちょっと羨ましいな。
「お待たせ」
後ろから声がして振り返ると、ペットボトルを持った準がいた。
「準!」
「梨乃可愛い」
「…ありがとっ」
相変わらずカッコいい準。この人が自分の彼氏だなんて信じられない。そんなことを考えていると
「あー…完全に2人の世界」
会話に混ざれなかった優羽が不満そうにしていた。
「ごめんごめん」
「早く行くよ〜!!!」
優羽に引っ張られ、私たちは人混みの中に入っていった。
準に、射的、金魚すくい、輪投げなんかで勝負を挑んで全敗した優羽。準は煽るし優羽は負けを認めないし、私も勝負に巻き込まれるし。騒がしくて、笑いが止まんなくて、最高に楽しい。記憶が消えてしまうかもなんてこと忘れて、全力でその瞬間を楽しんでいた。
私にとってはひとつひとつの言葉が、2人が私の隣にいることが、愛おしくて、幸せで、なんだかちょっと、泣きたくなった。
お祭りも終盤。わたあめ、りんご飴、焼きそば、たこ焼き。お祭りの醍醐味である食べ物を揃え、花火の見やすいところに座った。もうすぐこの幸せな時間が終わってしまう。そのことを考えないようにしながら、私はカバンからカメラを取り出した。私が夢を諦めないことを決めた日、準からお母さんが誕生日プレゼントにくれたものだと言って、渡してくれたものだ。楽しい時間は一瞬で過ぎていて、私はこの時間になるまで写真を撮ることを忘れていたのだ。新品のため、レンズはとても綺麗で、私の心の奥まで写してしまいそうだ。カメラを構えると、ずっしりとした黒いカメラがとても貴重なものに感じて、2人の後ろ姿を丁寧に写真に収めた。
パシャ
っと小さなシャッター音が鳴る。2人はどれを食べるかの話に夢中で気づかない。私は夢中になって2人のことをカメラに収めた。
急に頭上が明るくなり、花火が始まったことに気づく。周りから歓声が上がり、赤、青、緑、いろいろな色の光が真っ暗な空いっぱいに広がって、私の目にも光があふれた。私は2人に向けていたカメラを上に向け、美しい花火を撮った。綺麗すぎる光を見ながら、2人の後ろで1人、涙を流した。
花火が終わり、いくらか余韻に浸ってから、私は我に帰って涙を拭った。
「いやーめっちゃ綺麗だったね、花火」
優羽は振り返って言った。
「だな。来て正解」
「うん、また来たいね」
名残惜しいが、遅い時間なので渋々病院に向かう。今日何が美味しかったとか、こんな人がいて面白かったとか、くだらない話をしているうちに病院に着いてしまい、楽しい時間は終わってしまった。
「じゃあまた明日!」
泣きそうになっているのがバレないように、私は2人に声をかけ、病室の扉を閉めた。
その後も寝る気にはなれなくて、今日撮った写真を見返そうとカメラを取り出す。
ベットに腰掛け、データを開く。
「え、なに、これ」
私は写真をみて思わず声を出してしまった。
『この時間がずっと続けばいいのに』
『なんて綺麗な花火なんだろう』
『今日来て、本当に良かった』
どういうわけか、写真を撮った時の感情が、写真に写し出されていたのだった。
この日のために、体調管理には特に気をつけてきた。無事にこの日を迎えられていることが嬉しい。
「わぁ!!!梨乃かっわいい〜!」
「優羽もね!」
「やっぱりそう思う!?」
「あ、気のせいだったわ」
「なんでよ〜」
いつもと同じ騒がしい掛け合いをしている私たち。だけどやっぱりどこか違う。賑やかな話し声、焼きそばやたこ焼きの匂い、ちょうちんの灯…特別な場所でなら、なんてことないことだって、特別に感じるのはどうしてなんだろう。心なしか気分も上がって、テンションが高い。
私の今日の服装はワンピース。いつもは病院にしかいないからパジャマだけど、今日だけでもオシャレがしたい!とお母さんに頼み込んだんだ。本当は浴衣が着たかったけど、動きづらいし、体に負担がかかるからと断念。それでも、和柄のワンピースはお祭りの雰囲気にぴったりで、この服にして正解!優羽は浴衣が着れない私を気遣ってか、涼しげなTシャツにプリーツスカート。もともとスタイルがいいからめちゃくちゃ似合ってる。ちょっと羨ましいな。
「お待たせ」
後ろから声がして振り返ると、ペットボトルを持った準がいた。
「準!」
「梨乃可愛い」
「…ありがとっ」
相変わらずカッコいい準。この人が自分の彼氏だなんて信じられない。そんなことを考えていると
「あー…完全に2人の世界」
会話に混ざれなかった優羽が不満そうにしていた。
「ごめんごめん」
「早く行くよ〜!!!」
優羽に引っ張られ、私たちは人混みの中に入っていった。
準に、射的、金魚すくい、輪投げなんかで勝負を挑んで全敗した優羽。準は煽るし優羽は負けを認めないし、私も勝負に巻き込まれるし。騒がしくて、笑いが止まんなくて、最高に楽しい。記憶が消えてしまうかもなんてこと忘れて、全力でその瞬間を楽しんでいた。
私にとってはひとつひとつの言葉が、2人が私の隣にいることが、愛おしくて、幸せで、なんだかちょっと、泣きたくなった。
お祭りも終盤。わたあめ、りんご飴、焼きそば、たこ焼き。お祭りの醍醐味である食べ物を揃え、花火の見やすいところに座った。もうすぐこの幸せな時間が終わってしまう。そのことを考えないようにしながら、私はカバンからカメラを取り出した。私が夢を諦めないことを決めた日、準からお母さんが誕生日プレゼントにくれたものだと言って、渡してくれたものだ。楽しい時間は一瞬で過ぎていて、私はこの時間になるまで写真を撮ることを忘れていたのだ。新品のため、レンズはとても綺麗で、私の心の奥まで写してしまいそうだ。カメラを構えると、ずっしりとした黒いカメラがとても貴重なものに感じて、2人の後ろ姿を丁寧に写真に収めた。
パシャ
っと小さなシャッター音が鳴る。2人はどれを食べるかの話に夢中で気づかない。私は夢中になって2人のことをカメラに収めた。
急に頭上が明るくなり、花火が始まったことに気づく。周りから歓声が上がり、赤、青、緑、いろいろな色の光が真っ暗な空いっぱいに広がって、私の目にも光があふれた。私は2人に向けていたカメラを上に向け、美しい花火を撮った。綺麗すぎる光を見ながら、2人の後ろで1人、涙を流した。
花火が終わり、いくらか余韻に浸ってから、私は我に帰って涙を拭った。
「いやーめっちゃ綺麗だったね、花火」
優羽は振り返って言った。
「だな。来て正解」
「うん、また来たいね」
名残惜しいが、遅い時間なので渋々病院に向かう。今日何が美味しかったとか、こんな人がいて面白かったとか、くだらない話をしているうちに病院に着いてしまい、楽しい時間は終わってしまった。
「じゃあまた明日!」
泣きそうになっているのがバレないように、私は2人に声をかけ、病室の扉を閉めた。
その後も寝る気にはなれなくて、今日撮った写真を見返そうとカメラを取り出す。
ベットに腰掛け、データを開く。
「え、なに、これ」
私は写真をみて思わず声を出してしまった。
『この時間がずっと続けばいいのに』
『なんて綺麗な花火なんだろう』
『今日来て、本当に良かった』
どういうわけか、写真を撮った時の感情が、写真に写し出されていたのだった。


