翌日。昨日は全然寝れなくて、起きてからずっとベットの上でぼーっとしてた。二人がいないと、すごくつまらないなって、改めて思う。
あーあ
記憶が消えるなんて、知りたくなかったな
ガラガラッ
勢いよく開いた扉の先。いたのは優羽と準だった。
「どうしてっ…?」
二人のこと、突き放したのに。自分が辛いからって、酷いことばっかり言ったのに。
「バカ梨乃!なんで頼ってくれないの!?」
優羽は私のことをぎゅっと抱きしめて言った。泣きながら、私と一緒に悲しんでくれているかのように。
「梨乃。辛かったら辛いって言えよ。迷惑なんて、思わなくていい」
「うんっ…」
温かくて優しくて。それがまた嬉しくて。どうして私は自分のことばかりなんだろって思った。そんな私に腹が立って、悔しかった。
「うっ…うわぁぁぁぁん」
今まで出せなかったもの全て吐き出すように、私は声を上げて泣いた。
「怖いよ、嫌だよ…2人のこと、忘れたくないよぉぉぉぉぉ」
怖いことを怖いというとこは何も悪いことじゃない。思い切り泣いたら、ずっと一人で抱えていたものがスーッと消えていくような気がした。
「準っ…優羽っ…大好きぃぃぃぃぃ」
「俺も」
「それな!私も大好き!」
「ふはっ。感動的なシーンでそれなとかうける」
戻ってきた明るさ。私は、二人なしの人生は考えられないんだ。そう、実感した。
「二人にお願いがある。…私に…一生忘れられない思い出を下さい!」
嬉しそうに頷いた二人。決して強くなくて、二人を傷つけたり、突き放したりするかもしれない。だけど、私は二人といたい。
この言葉は、私の「諦めない」の決意___。

また記憶が消えてしまっても、思い出させてくれるものがある。

「ねえ梨乃?」
高校の夏休みも中盤。いつものように話していた優羽が持ちかけた話題は…
「夏祭り行かない!?」
夏祭り。
「え!行きたい!めっちゃ行きたい!」
もちろん即答。この前、優羽が私のために提案してくれたことを拒否してから、ずっと後悔していたから。
「まじ!?じゃあ決まり!」
早速一つ、楽しみができたな。
ガラッ
何食べる?とか、射的で勝負しようとか、夏祭りの話で盛り上がる私たちの病室に入ってきたのは村田先生。まずい。外出許可もらってないのに、行ける前提で話を進めてしまっていた。外出するのは危険を伴うことだから、簡単に決めていいものではないのに。
「楽しそうだね」
うわーうわー。だいぶパニック状態です。なんか静かな笑みが恐怖なんですけど!?怒られる!?覚悟をした私に、先生は
「外出許可、出してあげる」
と言った。
今、ナンテ?
「本当ですか!?」
「うん。最近症状が落ち着いてきてるし、梨乃ちゃんも高校生だからね。友達と遊びに行きたいでしょ」
その通りでございます。さすが先生。わかっていらっしゃる。
「「やったー!!!」」
声をそろえて、ついでにハイタッチ。先生に苦笑されたけど、全然気にならない。嬉しすぎる!

優羽のお誘いで、私に一つ思い出ができることが約束された。