高校は夏休みに入ったみたいだ。2人は毎日私のところに来てくれる。嬉しくて、楽しくて。でもね、2人の知らないところでは私はやっぱり弱い。軽い頭痛がよく起こって前日のことを忘れる、なんてことがよく起きている。といってもそのことを親から聞いて知るだけなんだけど。1日ぐらい消えたってどうってことないんだけど、流石に何度も続くと辛い。2人と話していてもどうせ忘れちゃうんだろうなって思いが消えない。

「梨乃!来たよー!!!!」
「…」
この日はたまたま体調が悪くて、頭痛が続いていた。優羽と準は変わらず今日も来てくれたけど、私は黙ったまま何も言わなかった。2人は少し不思議そうにして、そのまま話を続けた。
「そうだ!今度買い物行かない!?外出許可でたらだけど!もし無理だったらパーティーとかさ!」
「うん。いいと思う。たまにはそういうのも大事だよな」
「ほんと!?実は行きたいところがあって…」
「行かない」
「「え…」」
楽しそうに盛り上がる2人の話を遮るように私は言った。行きたくない、と。
「どうしたの、梨乃?」
心配そうな顔で私の顔を見る優羽と準。その姿にさえ苛立ってしまった。
「行かないって言ってるの!」
「なんでよ!梨乃のためにっ」
「どうせ忘れちゃうんだよ!?」
「っ…」
「どうせ忘れちゃうなら、そんな思い出いらないっ!一人でいた方が楽なの!二人といると苦しいっ…!だって、私のために来てくれてるのに、私は二人に何も返せなくて、忘れて、忘れてることすら気づけなくて、そんなの二人を悲しませるだけじゃんっ…!!!私のためなら、そんなことしないでいいからっ!もう、来なくても、いいからっ…」
言って、しまった。でも、どうしようもないんだよ。苦しくて、苦しくて。
二人がそっと部屋からいなくなる。
あぁ。
一人になれた。
なのに、ちっとも楽にならない。
ごめんっ。ごめんね、優羽、準。
私のことを、嫌いになって。
ううん。嫌いにならないで…