「誕生日おめでとう!!」
3月16日。今日は私の誕生日だ。
高坂梨乃。今日で17歳になった。肩より少し長い髪はストレートで、風が吹くとサラリとゆれる。長所は、強いて言うなら頭がいいこと。短所は心配性なこと。子供が好きで、大人になったら保育士になりたいと思っている。
「はい。プレゼント」
そう言ってお母さんが私にくれたのはカメラだった。
「ありがと!」
私が空を見ることが好きで、よくスマホで写真に収めていたことを見ていてくれていたみたい。嬉しくて、この後、この幸せな時間が急激に変わってしまうなんて。この時は考えもしなかった。
私の体が急変したのは3月20日。自分の部屋でスマホを見ていた時だった。
ツキンとした痛みを感じると、それがじわじわと大きくなっていった。これはただの頭痛じゃない。私はそう思った。殴られているような感覚に頭を抱える。
「いっ…た、い」
スマホが床に落ちたことにも気付かずに、ただただ痛みに耐えていた。
どのくらいの時間がたったかはわからない。けど、耐えられなくなった私は床に倒れ、意識を失った。
「ん…病院?」
ボーッとする頭であたりを見渡すと、目の前に白いカーテンがかけられていて、病院だと分かった。
ところで、今日は何日だろう。どのくらい入院していたのか気になってカレンダーを探した。"3月"
「な、んで」
今は2月なはずなのに。ただのミスとは信じがたかった。
「梨乃起きたの!?」
「うん。お母さん、今日って何月何日?」
「3月22日よ。2日間も寝てたんだから」
やっぱり今は3月らしい。じゃあ、私が2月じゃないのかって思うのはなんだろう。何かが違う。
「まだ2月じゃないの?」
試しにそう聞いてみると、お母さんはとても混乱しているようにみえた。
「ちょっと待っててね」
お母さんはそう言って病室を出た。
「梨乃さんは、今自分が何歳か分かる?」
「16歳です」
病室に戻ってきたお母さんは先生と一緒だった。先生の質問に即答すると、先生は少し考えてこう言った。
「検査を受けることをおすすめします」
先生の言葉に不安が襲ってきた。体には何も異変があるようには感じない。でも、時間のずれのことが気になって
「お願いします」
私は検査を受けることにした。
検査をしてから何日かたった。今日は結果を聞く日だ。まだ病院のベットから動けないので、先生が病室に来てくれることになっている。ガラッとドアが開いた音を聞いた時から、嫌な予感がした。でも、
「どうだったんですか」
聞かずにはいられなかった。怖くて、早く安心したいって思ってた。だけど、
「脳に異常はなく、健康な状況です。しかし、記憶が消えてしまっています」
やっとひらかれた先生の口からは期待を裏切るような言葉が出てきた。
「記憶が消えた原因は分かりませんでした」
「そんな…」
原因不明ってことは、助からないってこと?私はこの先どうなるの?
「今後、どんなことがあるのか分かりません。私が担当医になってサポートします」
「ありがとうございますっ…」
隣にいたお母さんは深く頭を下げて言った。その一方で、私は今を受け入れられずにいた。
今までと同じ生活ができなくなるの?そんなの信じられない。信じられるわけないじゃんっ。みんなと卒業して、保育士になるって夢叶えて。そんな未来を、もう私から取り上げるっていうの?酷いよ…
いつのまにか近くにしのびよってきていた黒い雲。そこから降る大雨が私に打ちつけて、行き場のない涙と思いを生んでいた。
3月16日。今日は私の誕生日だ。
高坂梨乃。今日で17歳になった。肩より少し長い髪はストレートで、風が吹くとサラリとゆれる。長所は、強いて言うなら頭がいいこと。短所は心配性なこと。子供が好きで、大人になったら保育士になりたいと思っている。
「はい。プレゼント」
そう言ってお母さんが私にくれたのはカメラだった。
「ありがと!」
私が空を見ることが好きで、よくスマホで写真に収めていたことを見ていてくれていたみたい。嬉しくて、この後、この幸せな時間が急激に変わってしまうなんて。この時は考えもしなかった。
私の体が急変したのは3月20日。自分の部屋でスマホを見ていた時だった。
ツキンとした痛みを感じると、それがじわじわと大きくなっていった。これはただの頭痛じゃない。私はそう思った。殴られているような感覚に頭を抱える。
「いっ…た、い」
スマホが床に落ちたことにも気付かずに、ただただ痛みに耐えていた。
どのくらいの時間がたったかはわからない。けど、耐えられなくなった私は床に倒れ、意識を失った。
「ん…病院?」
ボーッとする頭であたりを見渡すと、目の前に白いカーテンがかけられていて、病院だと分かった。
ところで、今日は何日だろう。どのくらい入院していたのか気になってカレンダーを探した。"3月"
「な、んで」
今は2月なはずなのに。ただのミスとは信じがたかった。
「梨乃起きたの!?」
「うん。お母さん、今日って何月何日?」
「3月22日よ。2日間も寝てたんだから」
やっぱり今は3月らしい。じゃあ、私が2月じゃないのかって思うのはなんだろう。何かが違う。
「まだ2月じゃないの?」
試しにそう聞いてみると、お母さんはとても混乱しているようにみえた。
「ちょっと待っててね」
お母さんはそう言って病室を出た。
「梨乃さんは、今自分が何歳か分かる?」
「16歳です」
病室に戻ってきたお母さんは先生と一緒だった。先生の質問に即答すると、先生は少し考えてこう言った。
「検査を受けることをおすすめします」
先生の言葉に不安が襲ってきた。体には何も異変があるようには感じない。でも、時間のずれのことが気になって
「お願いします」
私は検査を受けることにした。
検査をしてから何日かたった。今日は結果を聞く日だ。まだ病院のベットから動けないので、先生が病室に来てくれることになっている。ガラッとドアが開いた音を聞いた時から、嫌な予感がした。でも、
「どうだったんですか」
聞かずにはいられなかった。怖くて、早く安心したいって思ってた。だけど、
「脳に異常はなく、健康な状況です。しかし、記憶が消えてしまっています」
やっとひらかれた先生の口からは期待を裏切るような言葉が出てきた。
「記憶が消えた原因は分かりませんでした」
「そんな…」
原因不明ってことは、助からないってこと?私はこの先どうなるの?
「今後、どんなことがあるのか分かりません。私が担当医になってサポートします」
「ありがとうございますっ…」
隣にいたお母さんは深く頭を下げて言った。その一方で、私は今を受け入れられずにいた。
今までと同じ生活ができなくなるの?そんなの信じられない。信じられるわけないじゃんっ。みんなと卒業して、保育士になるって夢叶えて。そんな未来を、もう私から取り上げるっていうの?酷いよ…
いつのまにか近くにしのびよってきていた黒い雲。そこから降る大雨が私に打ちつけて、行き場のない涙と思いを生んでいた。


