思ってもみなかった提案に驚く。ルームシェアなら、東京暮らしでも家賃が節約出来る。

「桃もそろそろ引っ越すつもりだったんだよね。美奈ちゃんと暮らすの、楽しそうだし」

「助かるわ。あっ、あんたなんかに性欲は湧かないから、安心してね。こう見えて私は面食いなのよ」

「美奈ちゃん、酷いなぁ。ま、いっか。美奈ちゃんが本来の美奈ちゃんに戻ったから」

 笑い出す安井。いつもそうやって、私の暴言を気にしないでくれるのよね。
 インフルエンサー時代の私は、背伸びするあまりに安井を色眼鏡で見てしまっていた。
 そう、変わったのは私。安井はずっと変わらない。皮肉屋で、人目を気にしないで、気味悪い笑い方をして、無駄に頭が良くて、面倒見も良い、私の友達だ。

「さて、お腹も空いたし、何か食べようよ」

「そうね」

 のんびりとメニューに手を伸ばす安井を見ながら、私は私の中の虚像に手を振った。
 バイバイ、mee。今度は本当の私で生きていくわ。