二年越しの復讐を遂げるため、私は同窓会が開催されるホテルへと足を運んだ。
地元の公立高校の同窓会。日中は成人式があったためか、出席率は高いようだ。入口から見える宴会場の中は騒がしく、どこか浮かれたムードに包まれている。
「皆、変わってないな」
かつての同級生達の姿を見掛け、クスッと笑みを漏らす。それは侮蔑の微笑だ。
高校卒業後、就職を期に上京した私。高校時代の友達とは、とっくに縁が切れている。当然、成人式にも参加していない。
これから始まる時間は、スクールカースト最下位だった私の復讐だ。
「よし、行こう」
気合いを入れて背筋を伸ばし、私はハイヒールを鳴らして会場へと足を踏み入れた。
途端、周囲がざわめき出す。私の様子を窺うような間があってから、他クラスの知らない女達が寄ってきた。
「あの、meeさんですよね?」
「そうだよ」
眩しい笑顔を向けてあげると、女達はほうっと憧れのため息を吐く。
「インスタもYouTubeも見てます~」
「やっぱり、生で見てもお綺麗ですね〜!」
「同じ高校出身で、しかも同い年の有名人がいるだなんて、嬉しいです〜」
「meeさんプロデュースのワンピース、速攻予約しました!」
頬を紅潮させて話す彼女達は、どうやら私の純粋なファンのようだ。私もサービス精神たっぷりに「ありがとう! ワンピは何色を買ってくれたの?」と対応する。
私の復讐。それは、光り輝く容姿と人生を手に入れた私を、かつて自分を馬鹿にした同級生共に見せつけることだった。
ファンの子達とのやり取りを何度か終えた後、私はようやく食事にありつけた。立食形式のパーティーなので、ホールスタッフに貰ったワインをクイっと傾けてから皿を手に取ろうとすると、
「俺が取るよ、山田さん。いや、今はmeeさんって呼んだ方がいいのかな?」
元同級生の男が傍に来て、にこやかに食事を取り分けてくれた。スクールカースト上位の、爽やか優等生キャラだった奴だ。
「ありがとう、沢木君」
わざわざ名前を呼んであげると、沢木は照れたように「覚えててくれたんだ。嬉しいな」と表情を崩す。
覚えてるわよ。あんた、二年前に陰でこう言ってたじゃないの。「例え百万円積まれても、山田さんは抱けねぇよ」って。
「しっかし、すごいよな〜山田さんは」
過去に私を貶したことなんて覚えてないみたいに、沢木は尊敬の眼差しを向けてくる。
「東京に出て二年で、今や有名インフルエンサー! アパレルの会社を経営して、イケメン社長の彼氏と都内のタワマンに住んで、まさに成功者って感じ。山田さんはダイヤモンドの原石だったんだな」
「褒め過ぎだよ」
恥ずかしそうに微笑む演技に、まんまと沢木は騙される。
そうよ、私はキラキラと光り輝くレアな存在。あんた達とは違うのよ。
内心ほくそ笑んでいると、視界の端に同級生の女共が見えた。スクールカースト上位の派手だった奴ら。こちらを見てヒソヒソと何かを囁き合っている。
「そんなにスタイル良くないね」
「うわ、本当だ。高校の時からガリガリだったよね」
「どうせ写真は加工でしょ?」
「ちょっと有名になっただけで、調子に乗ってイタいよね」
「高校の時と顔違くない?」
「明らかに整形だよね」
二年前と変わらぬ悪口に、うんざりしてしまう。ま、今のは嫉妬も入ってるんでしょうけど。
美容室やエステ、スキンケアやコスメには投資しているけれど、顔はいじってないのが自慢だ。大事なのは垢抜けるための努力。元一軍と言えど、あんた達は所詮田舎のヤンキー止まりでしょ。
「皆、久しぶり〜!」
私陰口なんて気にしませんけど、と知らせるように営業スマイルで手を振ってやった。あんた達に怯える私は、もうこの世には居ないのよ。
地元の公立高校の同窓会。日中は成人式があったためか、出席率は高いようだ。入口から見える宴会場の中は騒がしく、どこか浮かれたムードに包まれている。
「皆、変わってないな」
かつての同級生達の姿を見掛け、クスッと笑みを漏らす。それは侮蔑の微笑だ。
高校卒業後、就職を期に上京した私。高校時代の友達とは、とっくに縁が切れている。当然、成人式にも参加していない。
これから始まる時間は、スクールカースト最下位だった私の復讐だ。
「よし、行こう」
気合いを入れて背筋を伸ばし、私はハイヒールを鳴らして会場へと足を踏み入れた。
途端、周囲がざわめき出す。私の様子を窺うような間があってから、他クラスの知らない女達が寄ってきた。
「あの、meeさんですよね?」
「そうだよ」
眩しい笑顔を向けてあげると、女達はほうっと憧れのため息を吐く。
「インスタもYouTubeも見てます~」
「やっぱり、生で見てもお綺麗ですね〜!」
「同じ高校出身で、しかも同い年の有名人がいるだなんて、嬉しいです〜」
「meeさんプロデュースのワンピース、速攻予約しました!」
頬を紅潮させて話す彼女達は、どうやら私の純粋なファンのようだ。私もサービス精神たっぷりに「ありがとう! ワンピは何色を買ってくれたの?」と対応する。
私の復讐。それは、光り輝く容姿と人生を手に入れた私を、かつて自分を馬鹿にした同級生共に見せつけることだった。
ファンの子達とのやり取りを何度か終えた後、私はようやく食事にありつけた。立食形式のパーティーなので、ホールスタッフに貰ったワインをクイっと傾けてから皿を手に取ろうとすると、
「俺が取るよ、山田さん。いや、今はmeeさんって呼んだ方がいいのかな?」
元同級生の男が傍に来て、にこやかに食事を取り分けてくれた。スクールカースト上位の、爽やか優等生キャラだった奴だ。
「ありがとう、沢木君」
わざわざ名前を呼んであげると、沢木は照れたように「覚えててくれたんだ。嬉しいな」と表情を崩す。
覚えてるわよ。あんた、二年前に陰でこう言ってたじゃないの。「例え百万円積まれても、山田さんは抱けねぇよ」って。
「しっかし、すごいよな〜山田さんは」
過去に私を貶したことなんて覚えてないみたいに、沢木は尊敬の眼差しを向けてくる。
「東京に出て二年で、今や有名インフルエンサー! アパレルの会社を経営して、イケメン社長の彼氏と都内のタワマンに住んで、まさに成功者って感じ。山田さんはダイヤモンドの原石だったんだな」
「褒め過ぎだよ」
恥ずかしそうに微笑む演技に、まんまと沢木は騙される。
そうよ、私はキラキラと光り輝くレアな存在。あんた達とは違うのよ。
内心ほくそ笑んでいると、視界の端に同級生の女共が見えた。スクールカースト上位の派手だった奴ら。こちらを見てヒソヒソと何かを囁き合っている。
「そんなにスタイル良くないね」
「うわ、本当だ。高校の時からガリガリだったよね」
「どうせ写真は加工でしょ?」
「ちょっと有名になっただけで、調子に乗ってイタいよね」
「高校の時と顔違くない?」
「明らかに整形だよね」
二年前と変わらぬ悪口に、うんざりしてしまう。ま、今のは嫉妬も入ってるんでしょうけど。
美容室やエステ、スキンケアやコスメには投資しているけれど、顔はいじってないのが自慢だ。大事なのは垢抜けるための努力。元一軍と言えど、あんた達は所詮田舎のヤンキー止まりでしょ。
「皆、久しぶり〜!」
私陰口なんて気にしませんけど、と知らせるように営業スマイルで手を振ってやった。あんた達に怯える私は、もうこの世には居ないのよ。


