彼女が、安らかに眠れますように


 ――君は眠くならないの?

 夜も更けた頃、今日も寝たふりをしているとすぐ近くで声が聞こえた。そろそろ睡眠薬を飲もうと迷っていた時だった。力を入れて瞑っていた目を開くが、誰もいない。まるで頭の中で直接問いかけているようだ。
 もう一度目を伏せると、誰もいないはずなのにすぐそばに人の気配がした。

 ――ああ、ようやく聞こえたね。おはよう。

 誰かは思い出せないが、どこかで聞いたことのある声だ。優しい声色に、恐る恐る答えてみる。

(……おはよう。君は誰?)

 ――今日はごめんね。迷惑かけちゃって。

 瑞貴の問いかけを無視して、しゅんと落ち込んだ声で言う。なんとなくの予想がついたが、あえて聞き返さないことにした。

(気にしないで。君こそ眠れないの?)

 ――今も眠っているよ。眠っているから、ここに来たの。

 声色から伝わってくるわくわく感は一体どこから感じられるのか。瑞貴の問いを遮って、声の主は言う。

 ――もう大丈夫。これからはゆっくり眠れるよ。

「――は」

 パチッと自然に目が開く。半開きのカーテンの向こう側は明るい日差しが差し込んでおり、ベッドサイドに置いたスマートフォンは朝の六時を示していた。
 変な夢を見たな、とゆっくりと身体を起こすと、いつもより身体が軽いような気がした。ぼんやりと重い頭も、気怠さも感じられない。むしろ調子がいい。

(昨日は薬を飲んでいないのに、どうして……)

 睡眠薬を飲もうとしたところで誰かの声が聞こえた。いくつか言葉を交わした気がする。はっきりとした記憶はないが、話しているうちにいつの間にか朝になっていた感覚だ。それなのに頭がすっきりしている。

(……まさか、ね)

 ふと浮かんだある人物の姿に、瑞貴は首を振った。