その後、再び眠ろうとしても気持ちがそわそわしてしまい、結局目が冴えたまま夜明けを迎えた。両親はまだぐっすりと眠っているようで、瑞貴は「先に出る」と書き置きを残して家を出る。
いつもなら気怠い朝も、結局眠ることができなかったにも関わらず頭の中がすっきりしている。身体も軽い。初めて晴と夢の中で会った日と同じ感覚、いや、それ以上に晴れやかな気分だ。普段より思考がクリアな分、周囲の目を気にしない。ふと思った時に過去の記憶がよぎるが、一蹴してどうでもよくなった。今までの自分とは大違いだ。
早めに学校に着いて自分の机に座ると、なんとなく教科書の問題を解いたりする。
(こんなに集中してできるんだ)
妙な納得感と感動に身を任せ、気が付いた時には朝のホームルームが迫っていた。これにはクラスメイトも担任の教師もたいそう驚いていた。なんせ、サボり魔だと思っていた瑞貴が、今日は一度も授業をサボらず出席していたからだ。
「芦屋、調子がよさそうだな」
授業終わりに担任の教師が安堵したような笑みを浮かべて声をかけてきた。少しやつれているように見えたのは、やはり周囲からのバッシングに耐えていたからだろうか。
「はい、今日はなんだか身体が軽くて」
「そうか。……ところで、菱川のこと、なんだけど」
歯切れ悪く口にした晴の名前に、瑞貴は嫌な予感がした。昨夜見た夢のあの表情が頭に浮かぶ。
「……過眠期が、いつも以上に長くて、つい昨日、昏睡状態に入ったらしい。次にいつ目覚めるのか、医師も判断できないと言われたそうだ」
周囲に聞こえないように告げた教師の言葉が、瑞貴の心臓を締め付けた。



