幼い頃に両親と観た映画のワンシーンを、ふと思い出す時がある。
 タイトルは覚えていないが、確か周囲は望んでいないにも関わらず、主人公は自らの身を投げて世界を救うものの、恋人は主人公の後を追っていなくなってしまう、誰も報われないラストだった。
 両親はそれを「美しいハッピーエンドだ」と呟き、涙をうっすらと浮かべていた。とても心に響いたのだろう。
 一方で、当時小学生になったばかりの僕は首を傾げた。主人公がやっていることはただの偽善で、一人でも報われなければハッピーエンドとは言えないからだ。

 今、もう一度あのタイトルを思い出して観返すことができたら、きっとあの時と同じ事を僕は口にするだろう。
 誰も報われないバッドエンドを望んでいるわけじゃないけれど、そんな終わり方も素敵なんじゃないかと思うから。