15 二者択一
ハルニレの予知夢はステイタス画面には無いという。
「ますます謎だ」と俺は言った。
「いや、何を冷静に言っているの? ユカラ殺されちゃうんだよ!」と何故かカンナは焦りながら言った。
「いや、殺されないよ。ハルニレの予知夢は誰かに話すと外れるってさっき言っていたじゃないか」
「私が言いたいのはそういうことじゃなくて!」カンナは涙目で言った。
「『死ぬ』のではなく『殺される』だから、そこに他者の悪意がある。そう言いたいのよね?」とハルニレはカンナの言葉を解説した。
「そう」とカンナは顔を逸らしつつも肯定した。
「悪意か」思い当たる節としてはカーカになる。現に一度殺されかけている。だがあいつは俺が死んだと思っているだろう。「裏を返せば俺はこれで殺されなくなった。よく考えたら凄い能力だ」
「『予知夢』ではステイタス画面に無いのだけれど『オルタナティブ』というよく分からないスキルがあるのよ」
「『オルタナティブ』は二者択一という意味だ。ハルニレに運命を選ぶ選択肢があるという事か」全く聞いたこともないスキルに俺は驚いた。
俺は明後日の方を向いているカンナの肩に手を置いた。「ありがとう。心配してくれたんだな」
「べ、別に!」と否定しかけたが不意に殊勝になってカンナは言った。「仲間だから」
俺は微笑んでから二人に言った。「ごめん。俺のステイタス画面が読めない。だから現時点で知る俺自身のスキルを口頭で説明するよ」
そう言って俺はポルターガイストの話をした。
「凄いスキルだけれど、なんでステイタス画面が見られないのかな?」ハルニレは俺のステイタス画面がある辺りを後から覗き込んだ。ステイタス画面は視力で認識できるが実際には脳内で処理されるので他人が見る事は出来ない。
だからその行為は無意味なのだが。
「あの、ずっと頭に胸が当たっているんだけど」と俺はつい言ってしまう。
「いいじゃない。減る物じゃないし」とハルニレは答えて俺の頭を胸で挟んだ。
「確かに減らないけれど! むしろ血流が一部増えそうだけれど」ハルニレは俺が子供だと思ってからかっているのは分かっているもののどうにかなりそうだった。
ピリッと一瞬目の端で電流が流れたのが見えた。
「カンナ、何かあった?」俺はカンナに訊いた。「まさかモンスターがいるのか?」
「いや‥‥なんでもない」とカンナは明後日の方を向きながら言った。なぜか拳が握られている。
「まあ、とにかく」と俺はハルニレの胸から逃れながら言った。「カンナが索敵して俺が前衛にまわる。中距離からの援護も頼む。ハルニレはカンナの背後を守ってくれ」
「分かった」と答えるカンナとは裏腹にハルニレは不服そうだ。
「私はユカラのサポートをするカンナのサポートって事?」肩を落としてハルニレは言った。「まあ現時点ではそれくらいの実力差があるのは知っているけれど」
「ハルニレには戦闘以外の有用なスキルがある。現に俺は命を救われている」俺は予知夢の効能について話す。「他に外れた方がいい予知夢はあるか?」
不意にハルニレは顔を真っ赤にしてつぶやいた。「カンナ‥‥が、ユカラと」
「待って!」とカンナはハルニレの口を塞いだ。「別に命に関わる事じゃないのね?」
口を塞がれたままハルニレは頷いた。
「じゃあ言わないで良い。‥‥もしかしたら能力の代償もあるかもしれないし」カンナはハルニレを解放しながら取ってつけたような理由を言った。
「んん、まあ」と不服そうにハルニレは言った。
その時、妙な悪寒のようなものが全身に走った。
俺はポルターガイストで二人を抱えてその場を離れた。
先程まで俺たちがいた床に針が刺さっていた。
「上か!」
人間ほどの大きさの蠍型モンスターが天井に張り付いていた。
「ヴァジュラ(雷神雷刀)!」カンナは蠍型モンスターを電撃で一閃する。
だがその一瞬前に尻尾から吐き出した針が避雷針の代わりになって電撃を避けた。
「そんなのあり?」カンナは驚きつつ二撃目を放つ。
その動きを読んだのか先程型モンスターは針を出しつつ床に降りた。
またしても避雷針の代わりの針に電撃が落ちた。
「早い!」カンナは体勢を整えて様子を見た。
俺はカンナの陽動の合間に蠍型モンスターの背後からポルターガイストで尻尾を掴んだ。
「これで攻撃は封じたぞ」
初めて見るモンスターであったがカンナのお陰で対策ができた。
「あれ?」視界が揺れる。左足が痺れて感じない。ふくらはぎの辺りに針が刺さっていた。「いつの間に」
「ユカラ!」二人の叫び声が聞こえた。
ハルニレの予知夢はステイタス画面には無いという。
「ますます謎だ」と俺は言った。
「いや、何を冷静に言っているの? ユカラ殺されちゃうんだよ!」と何故かカンナは焦りながら言った。
「いや、殺されないよ。ハルニレの予知夢は誰かに話すと外れるってさっき言っていたじゃないか」
「私が言いたいのはそういうことじゃなくて!」カンナは涙目で言った。
「『死ぬ』のではなく『殺される』だから、そこに他者の悪意がある。そう言いたいのよね?」とハルニレはカンナの言葉を解説した。
「そう」とカンナは顔を逸らしつつも肯定した。
「悪意か」思い当たる節としてはカーカになる。現に一度殺されかけている。だがあいつは俺が死んだと思っているだろう。「裏を返せば俺はこれで殺されなくなった。よく考えたら凄い能力だ」
「『予知夢』ではステイタス画面に無いのだけれど『オルタナティブ』というよく分からないスキルがあるのよ」
「『オルタナティブ』は二者択一という意味だ。ハルニレに運命を選ぶ選択肢があるという事か」全く聞いたこともないスキルに俺は驚いた。
俺は明後日の方を向いているカンナの肩に手を置いた。「ありがとう。心配してくれたんだな」
「べ、別に!」と否定しかけたが不意に殊勝になってカンナは言った。「仲間だから」
俺は微笑んでから二人に言った。「ごめん。俺のステイタス画面が読めない。だから現時点で知る俺自身のスキルを口頭で説明するよ」
そう言って俺はポルターガイストの話をした。
「凄いスキルだけれど、なんでステイタス画面が見られないのかな?」ハルニレは俺のステイタス画面がある辺りを後から覗き込んだ。ステイタス画面は視力で認識できるが実際には脳内で処理されるので他人が見る事は出来ない。
だからその行為は無意味なのだが。
「あの、ずっと頭に胸が当たっているんだけど」と俺はつい言ってしまう。
「いいじゃない。減る物じゃないし」とハルニレは答えて俺の頭を胸で挟んだ。
「確かに減らないけれど! むしろ血流が一部増えそうだけれど」ハルニレは俺が子供だと思ってからかっているのは分かっているもののどうにかなりそうだった。
ピリッと一瞬目の端で電流が流れたのが見えた。
「カンナ、何かあった?」俺はカンナに訊いた。「まさかモンスターがいるのか?」
「いや‥‥なんでもない」とカンナは明後日の方を向きながら言った。なぜか拳が握られている。
「まあ、とにかく」と俺はハルニレの胸から逃れながら言った。「カンナが索敵して俺が前衛にまわる。中距離からの援護も頼む。ハルニレはカンナの背後を守ってくれ」
「分かった」と答えるカンナとは裏腹にハルニレは不服そうだ。
「私はユカラのサポートをするカンナのサポートって事?」肩を落としてハルニレは言った。「まあ現時点ではそれくらいの実力差があるのは知っているけれど」
「ハルニレには戦闘以外の有用なスキルがある。現に俺は命を救われている」俺は予知夢の効能について話す。「他に外れた方がいい予知夢はあるか?」
不意にハルニレは顔を真っ赤にしてつぶやいた。「カンナ‥‥が、ユカラと」
「待って!」とカンナはハルニレの口を塞いだ。「別に命に関わる事じゃないのね?」
口を塞がれたままハルニレは頷いた。
「じゃあ言わないで良い。‥‥もしかしたら能力の代償もあるかもしれないし」カンナはハルニレを解放しながら取ってつけたような理由を言った。
「んん、まあ」と不服そうにハルニレは言った。
その時、妙な悪寒のようなものが全身に走った。
俺はポルターガイストで二人を抱えてその場を離れた。
先程まで俺たちがいた床に針が刺さっていた。
「上か!」
人間ほどの大きさの蠍型モンスターが天井に張り付いていた。
「ヴァジュラ(雷神雷刀)!」カンナは蠍型モンスターを電撃で一閃する。
だがその一瞬前に尻尾から吐き出した針が避雷針の代わりになって電撃を避けた。
「そんなのあり?」カンナは驚きつつ二撃目を放つ。
その動きを読んだのか先程型モンスターは針を出しつつ床に降りた。
またしても避雷針の代わりの針に電撃が落ちた。
「早い!」カンナは体勢を整えて様子を見た。
俺はカンナの陽動の合間に蠍型モンスターの背後からポルターガイストで尻尾を掴んだ。
「これで攻撃は封じたぞ」
初めて見るモンスターであったがカンナのお陰で対策ができた。
「あれ?」視界が揺れる。左足が痺れて感じない。ふくらはぎの辺りに針が刺さっていた。「いつの間に」
「ユカラ!」二人の叫び声が聞こえた。

