目の前に息子がいるというのに、廉くんのお母さんは全く廉くんを見ようとしない。

どうして。どうして私だけ…。


「あの、私そろそろ…」


いたたまれなくなり立ち去ろうとすると、廉くんのお母さんが私の後ろを見て驚いたように目を見開いていた。

まさか廉くんの姿が見えるのだろうかと信じられない気持ちで振り返るが、廉くんの後ろからやってきた人物に私も目を見開く。


「…?」


廉くんは不思議そうに私とお母さんを交互に見てから、ゆっくりと後ろを振り返る。


「里緒奈ちゃん…」

「…お姉ちゃん」


数日顔を合わせていないだけなのに、お姉ちゃんは随分と痩せたような気がする。

だけど制服を着て身だしなみもちゃんとしているお姉ちゃんは、私のよく知るいつものお姉ちゃんでもあった。


「どうして、来ないんじゃ…」

「いつまでも廉の死から逃げてちゃダメだと思ったの。うじうじしてる私を見たらきっと廉は“里緒奈はそんなやつじゃないだろ”って笑う気がして」