「夫は親戚の人たちに挨拶に行ってるわ。もうすぐ始まるけど、中に入る?」

「…いえ、やっぱりやめておきます」


廉くんには悪いけど、とてもじゃないけど死んだ廉くんと直面なんてやっぱりできない。


「…そう。あの子と仲良くしてくれてありがとうね。瑠那ちゃんの話も家でたくさん聞いてたわ。誰よりも頑張り屋で素直でとてもいい子だって」


廉くんのお母さんは、廉くんが家に来た時に一緒に来たことがありその時に一度だけ会ったことがあった。

ずっとニコニコしていて優しくて、うちのお母さんと交換してくれたらなとちょっと思ったりもした。

これからも家族ぐるみで付き合っていくんだろうなと思っていたのに、廉くんがいなくなったことによりそれはもう叶わないだろう。


「あの子は小さい時から本当にやんちゃで怒らない日の方が珍しいくらいの問題児で、何度学校に呼ばれたかもわからない。そのくせ親よりも先に死んじゃうなんて、本当親不孝者の息子だったわ…」


ぼろぼろと涙を流す廉くんのお母さんに、どうしたらいいかわからず思わずあたふたとしてしまう。


「ごめんなさい、瑠那ちゃんの前で取り乱してしまって…」

「いや、そんな…」

「…俺は、愛されてたんだな。それなのに、なんで何も覚えてないんだろう」


ふと、ぽつりと寂しそうに呟いた廉くんを振り返る。