今にも雨が降りそうな空をぼんやりと眺めていると、柚月が心配そうに前の席に座って顔を覗き込んできた。


「部活休んでいいよって、瑠那に気持ちを切り替えて欲しいから言ったのに、前よりも顔色は悪いしぼんやりしてること増えたし、悪化してる気がする」


廉くんと再会してからはもう一度会えた喜びもあったけど、だんだんと迫ってくるタイムリミットに精神を削られていくのを自分でも感じていた。

でも私がこうして毎日学校に来れているのも、放課後に廉くんに会えるからでもある。


私は贅沢者だ。

本当だったらこの立ち位置はお姉ちゃんがいるべき場所なのに、私だけ毎日廉くんに会っているのだから。

ちゃんとお別れを言える機会を与えられたのに、私は廉くんと別れる心の準備がまだ何一つできていない。


「…私は汚い人間なんだよ。廉くんがいなくなってから一度も涙を流していないくせに、こうやって柚月やみんなから心配してもらう資格なんてないんだよ…」


今まで見ないフリをし続けていた自分の醜い黒い部分に今にも呑み込まれてしまいそうだった。

神様は私にチャンスをくれたのではなく、苦しみを与えたかったのかもしれない。

お姉ちゃんの彼氏である廉くんを好きになってしまった私への罰として。


「汚くなんてない。瑠那はまだ廉先輩の死を受け入れられてないんだよ。…大切な人だったんでしょ?里緒奈さんと同じくらい、廉先輩のこと好きだったじゃん」