だから私は勝てたのかもしれない。


「たくさん努力して頑張ってるんだな。全国大会、観に行ってやれないけど俺は誰よりも瑠那のこと応援してるよ」


何も覚えていないはずなのに、どうして廉くんは私が欲しい言葉を今も変わらずくれるのだろう。

こんなの、ずるいよ…。

どんどん好きになってしまう。


「なあ、明日は俺たちの高校に行きたい。瑠那と俺が練習してた体育館も見たいし、瑠那と過ごした学校に行ってみたい」

「…え」


でも、死んだはずの廉くんが学校に姿を現したら大騒ぎになるんじゃ…?

もしかしたらその噂がお姉ちゃんの耳にまで入ってしまうかもしれない。


「あ、安心して。なぜか俺の姿は瑠那にしか見えないみたいなんだよ」

「…え?」

「今日瑠那が来る前に、バスケットボールを忘れて家に帰った子どもがいて、追いかけて声をかけようとしたんだけど何度声をかけても俺に気づいてくれなくて。それだけじゃなくて、瑠那にもボールにも触れるのになぜかその子には触れなかったんだ。他の通行人にも試してみたんだけど結果は同じだった。俺のことが見えるのは、瑠那だけみたい」


廉くんは悲しそうに微笑んでいた。