でも知ってる。廉くんはきっとわざと私に負けてくれたんだ。

あの時もそうだった。

同じ高校に入ってから廉くんのバスケを見たけど、キャプテンなだけあって隙がないくらいフォームもシュートもパスも周りを見ることも完璧な廉くんに、私みたいなのが1on1で勝てるはずがないのだ。

だからきっと、わからないくらい自然に手加減をしてくれていたのだろう。

そういう優しいところ、本当何も変わってない。

昔からずっと、廉くんはお姉ちゃんだけじゃなくて妹の私のことまで大切にしてくれていたから。


「昨日は予選大会だったの。ギリギリだったけどなんとか勝てて、全国大会に行けることが決まった」

「…え!?」


ベンチに並んで腰掛けていた廉くんが、驚いたように勢いよく立ち上がった。


「全国って…すげぇじゃん!なのに瑠那の晴れ舞台の日に俺は…本当に悪かったな」

「やだな、もうそんな謝んないでよ。廉くんにちゃんと伝えられてよかった」


部活を引退して受験生になってからも、大会にはかかさず毎回お姉ちゃんと一緒に観に来てくれていた。

昨日の試合だって誰よりも張り切っていて、「絶対に瑠那なら全国に行ける」と何度も励ましてくれた。

好きな人から応援されたら、誰だって頑張れる。