「グズッ...」
テレビから聞こえる賑やかな笑い声、駆け回る茶色いと白の仔犬
(うぅ、一生懸命走ってる...)
鼻から流れる液体を乱雑に握ったティッシュで拭ってズルズル部屋に響かせながら明るい画面を見つめる
「はぁっ」
詰まった鼻では満足に酸素が回らず口から息を吐くと突然視界が暗転した
「だーれだ」
ろくに空気も通らない鼻にさえフワッと香るような近さで右耳に直接流し込むように囁かれた甘くて独特の特徴を持った声に思わず腰の辺りがゾワッと粟立つ
「うみくん」
「せーかぁい」
俺が外す訳がないのに少し冷たい手で覆われた目元を解放され満足そうにこちらを覗き込む顔が鼻の先にある
「おかえり〜」
「つゆちゃんただいまぁー」
「お酒飲んだの?」
「んー?帰ってきてつゆちゃんがいる〜」
珍しく腕を首に回して抱きついてニコニコしているご機嫌なうみくんの顔は少し火照っていて酔っているのかもしれない
「ご飯あるけどいらなかった?」
「食べるよー、つゆちゃんまたバラエティなのに泣いてたでしょ」
「うるへ〜」
いつも丁寧に優しく触れる手が少し乱雑に俺の頬を掴んでまつ毛が当たる距離で確認されると仄かなアルコールと甘ったるい香水のような匂いを感じた
「可愛いね」
「うみくんは不良だな」
「えー何でよー」
「この酔っ払いめ」
クスクス笑う吐息が熱くて顔を顰める、傍に居られないよりも遅くても彼の帰りを待つ方が何十倍も嬉しいはずなのにその匂いに行動に心がモヤモヤしてしまう
「俺風呂」
「一緒にご飯食べてくれないの?」
「そんな顔しても俺もう食ったし、酔っ払いは水でも飲んで寝てろよ」
「つゆちゃんが冷たいー」
可愛い顔でお願いされると乗ってしまいそうになるがここは自分を律してお風呂に向かうのだ、でなければ聞きたくないことまで聞いて後から後悔しそうだと思ったから
(酔っ払いから聞いてもなぁ...)
うみくんはあんな見た目でも列記とした男なので酔ってどうこうされる事は無いと思うが逆を考えればどうなのだろうか
(うみくんが女の子と...って何考えてんだよ俺)
しかし実際大人ですらお酒を飲むとタカが外れて一夜の過ち?ワンナイトラブ?とか何とかが起きるとしたら高校生みたいな思春期真っ盛りに飲酒なんて最悪なのではないだろうか
(俺、うみくんにどうして欲しいんだろ...)
どんな見た目であろうとうみくんはうみくんで俺が抱く感情が変わる事はない、それでも彼の全てを知るのが自分ではなく他の人になるのならそれこそこの胸の内のモヤモヤがどうにかなってしまう気がする
「...あ、やば服持ってくるの忘れた」
ぴちゃぴちゃ水滴を床に落として浴室から出ると着替えを用意し忘れた事に気付いた
(思ったより動揺してたのかも)
応急処置として腰にタオルを巻いて脱衣所を出ると涼しい風が熱を持った身体を冷まして気持ちいい
「つゆちゃんありがとー美味しかった」
「うん、いいよ〜」
食べた食器を洗っている姿を背にパタンッと冷凍庫からアイスを取りだして口に咥える
「あっつぅ〜あぁ〜」
扇風機の前で胡座をかいて顔にブンブン風が当たるとアイスが溶けるのも少し早くなる気がした
「ちょっ、なんで裸!?」
「服持ってくの忘れたぁ、あと暑いんだもん〜」
「もーっ、今持ってくるから!ちゃんと着て!」
「えぇ〜だめ〜?」
「ダメじゃないけどダメです」
皿洗いから戻ったうみくんは少し酔いが覚めたのか俺を見て面白いくらい驚くので通常運転に戻った感じがして嬉しい
「だめ?」
「ダメダメダメ」
「だめなのかぁ」
「うぅ、オウム返しも辞めてね?ほら、早く着て」
傍までにじり寄って上目遣いに質問を繰り返せば簡単にまた耳まで紅くしてそっぽ向いたうみくんが服を突き出すので大人しく着る
「ふふっ、う〜みくんっ」
「っ、なに?」
「呼んだだけっ!」
紅い余韻の残る顔が可愛くて悪戯に猫なで声を出すと身体がピシッと固まるのが可笑しくて口角が上がる
「はぁ、ほんとに君はねぇ...」
「うみくん、うみくんっ」
「コラコラ、人で遊ぶのはやめなさい、その技は俺に効くから」
困ったような呆れたようなそんな顔で少し怒って注意される前に首に手をかけ語尾にハートが付く勢いで名前を連呼すると流石にギブアップなのか顔を押し返された
「可愛いなぁ〜」
「グッ、つゆちゃんのほうが可愛いのに」
眉を顰めて顔に触れていた手が耳に移動して髪と項の隙間に潜り込むと親指がスリスリ耳の縁を撫でる
「んっ」
擽ったいようなゾクゾクした感覚が首から背に流れて力が入るように抜けた声にカッと身体が熱くなった
「はぁ?」
「なに」
恥ずかしい思いをさせた本人が何故かキレているみたいなのでこちらも素っ気ない声を出してジトっと相手を見上げる
「その声辞めて」
「うみくんは注文ばっかりだなぁ〜」
「ドギマギする!心臓が!特に!」
互いに紅い顔をしているのに自分だけが責められる状況にムッとして未だに触れている手を口元に運んだ
「いっって!何、何なんで噛んだの!?」
「うるさいから」
「いやいやいや、つゆちゃんは俺の事殺す気なの!?」
心臓が止まったらどうするのか何て言っているがその時は心肺蘇生でも人工呼吸でもしてあげよう、普段乱暴な言葉を使わないうみくんがこれ程取り乱している所も見れたので満足した俺はこれで許す事にした
「俺がんばる」
欲張りな俺はやっぱり自分の知らないうみくんがいるのなら我儘にも知りたいと思う
「え?うん、何をか聞かせてもらっていいかな?」
「だからうみくんお風呂入ってきていいよ!」
「ごめん、ちょっとまってどういう事?」
その為には先ず長年の凝り固まった考えを壊していこうとうみくんの肩を押して風呂場に連れてくのだった
テレビから聞こえる賑やかな笑い声、駆け回る茶色いと白の仔犬
(うぅ、一生懸命走ってる...)
鼻から流れる液体を乱雑に握ったティッシュで拭ってズルズル部屋に響かせながら明るい画面を見つめる
「はぁっ」
詰まった鼻では満足に酸素が回らず口から息を吐くと突然視界が暗転した
「だーれだ」
ろくに空気も通らない鼻にさえフワッと香るような近さで右耳に直接流し込むように囁かれた甘くて独特の特徴を持った声に思わず腰の辺りがゾワッと粟立つ
「うみくん」
「せーかぁい」
俺が外す訳がないのに少し冷たい手で覆われた目元を解放され満足そうにこちらを覗き込む顔が鼻の先にある
「おかえり〜」
「つゆちゃんただいまぁー」
「お酒飲んだの?」
「んー?帰ってきてつゆちゃんがいる〜」
珍しく腕を首に回して抱きついてニコニコしているご機嫌なうみくんの顔は少し火照っていて酔っているのかもしれない
「ご飯あるけどいらなかった?」
「食べるよー、つゆちゃんまたバラエティなのに泣いてたでしょ」
「うるへ〜」
いつも丁寧に優しく触れる手が少し乱雑に俺の頬を掴んでまつ毛が当たる距離で確認されると仄かなアルコールと甘ったるい香水のような匂いを感じた
「可愛いね」
「うみくんは不良だな」
「えー何でよー」
「この酔っ払いめ」
クスクス笑う吐息が熱くて顔を顰める、傍に居られないよりも遅くても彼の帰りを待つ方が何十倍も嬉しいはずなのにその匂いに行動に心がモヤモヤしてしまう
「俺風呂」
「一緒にご飯食べてくれないの?」
「そんな顔しても俺もう食ったし、酔っ払いは水でも飲んで寝てろよ」
「つゆちゃんが冷たいー」
可愛い顔でお願いされると乗ってしまいそうになるがここは自分を律してお風呂に向かうのだ、でなければ聞きたくないことまで聞いて後から後悔しそうだと思ったから
(酔っ払いから聞いてもなぁ...)
うみくんはあんな見た目でも列記とした男なので酔ってどうこうされる事は無いと思うが逆を考えればどうなのだろうか
(うみくんが女の子と...って何考えてんだよ俺)
しかし実際大人ですらお酒を飲むとタカが外れて一夜の過ち?ワンナイトラブ?とか何とかが起きるとしたら高校生みたいな思春期真っ盛りに飲酒なんて最悪なのではないだろうか
(俺、うみくんにどうして欲しいんだろ...)
どんな見た目であろうとうみくんはうみくんで俺が抱く感情が変わる事はない、それでも彼の全てを知るのが自分ではなく他の人になるのならそれこそこの胸の内のモヤモヤがどうにかなってしまう気がする
「...あ、やば服持ってくるの忘れた」
ぴちゃぴちゃ水滴を床に落として浴室から出ると着替えを用意し忘れた事に気付いた
(思ったより動揺してたのかも)
応急処置として腰にタオルを巻いて脱衣所を出ると涼しい風が熱を持った身体を冷まして気持ちいい
「つゆちゃんありがとー美味しかった」
「うん、いいよ〜」
食べた食器を洗っている姿を背にパタンッと冷凍庫からアイスを取りだして口に咥える
「あっつぅ〜あぁ〜」
扇風機の前で胡座をかいて顔にブンブン風が当たるとアイスが溶けるのも少し早くなる気がした
「ちょっ、なんで裸!?」
「服持ってくの忘れたぁ、あと暑いんだもん〜」
「もーっ、今持ってくるから!ちゃんと着て!」
「えぇ〜だめ〜?」
「ダメじゃないけどダメです」
皿洗いから戻ったうみくんは少し酔いが覚めたのか俺を見て面白いくらい驚くので通常運転に戻った感じがして嬉しい
「だめ?」
「ダメダメダメ」
「だめなのかぁ」
「うぅ、オウム返しも辞めてね?ほら、早く着て」
傍までにじり寄って上目遣いに質問を繰り返せば簡単にまた耳まで紅くしてそっぽ向いたうみくんが服を突き出すので大人しく着る
「ふふっ、う〜みくんっ」
「っ、なに?」
「呼んだだけっ!」
紅い余韻の残る顔が可愛くて悪戯に猫なで声を出すと身体がピシッと固まるのが可笑しくて口角が上がる
「はぁ、ほんとに君はねぇ...」
「うみくん、うみくんっ」
「コラコラ、人で遊ぶのはやめなさい、その技は俺に効くから」
困ったような呆れたようなそんな顔で少し怒って注意される前に首に手をかけ語尾にハートが付く勢いで名前を連呼すると流石にギブアップなのか顔を押し返された
「可愛いなぁ〜」
「グッ、つゆちゃんのほうが可愛いのに」
眉を顰めて顔に触れていた手が耳に移動して髪と項の隙間に潜り込むと親指がスリスリ耳の縁を撫でる
「んっ」
擽ったいようなゾクゾクした感覚が首から背に流れて力が入るように抜けた声にカッと身体が熱くなった
「はぁ?」
「なに」
恥ずかしい思いをさせた本人が何故かキレているみたいなのでこちらも素っ気ない声を出してジトっと相手を見上げる
「その声辞めて」
「うみくんは注文ばっかりだなぁ〜」
「ドギマギする!心臓が!特に!」
互いに紅い顔をしているのに自分だけが責められる状況にムッとして未だに触れている手を口元に運んだ
「いっって!何、何なんで噛んだの!?」
「うるさいから」
「いやいやいや、つゆちゃんは俺の事殺す気なの!?」
心臓が止まったらどうするのか何て言っているがその時は心肺蘇生でも人工呼吸でもしてあげよう、普段乱暴な言葉を使わないうみくんがこれ程取り乱している所も見れたので満足した俺はこれで許す事にした
「俺がんばる」
欲張りな俺はやっぱり自分の知らないうみくんがいるのなら我儘にも知りたいと思う
「え?うん、何をか聞かせてもらっていいかな?」
「だからうみくんお風呂入ってきていいよ!」
「ごめん、ちょっとまってどういう事?」
その為には先ず長年の凝り固まった考えを壊していこうとうみくんの肩を押して風呂場に連れてくのだった
