スマホに届く通知が暗い室内をチカチカ光らせてその煩わしさに思い切り壁に投げつけた
(サムイ、サムイ)
ガシャンッと鈍い音を立てて落ちた画面はひび割れて暗い画面は死んでしまったみたい、部屋に独り、髪もボサボサなまま蹲りジッと台風のような感情が過ぎ去るのを待つ
『許してっ、許してください』
人生の大半を過ごしたこの家にいると思い出したくない記憶さえも蘇ってきて頭を抱える
『俺だってなぁ、こんな事本当はやりたくねぇんだよ』
怒らせないようなご機嫌とりはいつも逆効果で、最後は無様に床に額を擦り付けて許しを乞うて頭に乗せられた足が笑いと一緒に動いて痛い何て知りたくなかった
『ごめんなさい、ごめんなさい』
謝罪の言葉は目の前の男に届くわけもなく本当はやりたくないなんて嘘じゃないかって幼い頭でも薄々気付いていた
(俺がいるから...)
一緒にいるだけで傷付けてしまうのならそんな思いさせたくない、でも心が寒くて凍ってしまいそうでどうしたらいいか分からない
「はっ、はっはっ」
固まった身体が全ての機能を停止させるように喉が詰まって吸っても吸っても肺に入らず口から抜けて犬のように短い呼吸を繰り返す
(だめ...)
クラクラした脳がシャットダウンするように意識を手放してその場に倒れ込んだ、最後に冷たいフローリングの感触だけが嫌に頬に触れていた
「つゆちゃんっ!つゆちゃん!」
「っ」
重たい瞼を持ち上げると暗闇に閉じ込められていた視界が開けて大好きな可愛い顔が心配そうに覗いている
「うみくん...うみくん」
「電話しても出ないし来てみたら倒れてるし心配した...」
「ごめんなさい、俺、俺は」
いつだってキラキラしててその顔を見れば一瞬で全てがどうでもよくなったのに今はただこの手を離さないといけないと思うと苦しくて目頭が熱くなった
「最初から許されてなかったんだ、俺、また間違えてたんだね」
「...つゆちゃん?」
どれだけご機嫌をとろうと上手に出来なかった、初めから上手くいく訳が無かった俺はまた同じ過ちを繰り返して存在そのものが全てを壊していく、狂わせていく
「思い出したんだっ...うみくんっ、心と体ってどうしてこんなに遠いんだろう...」
過去見てきたもの触れてきたもの、その全てが彼と彼女に出会って恋をして無かった事になる筈がない、もしも心と心が触れ合えていたのならこんな事になる前に気付けていたのに
「もうだめなんだね、ごめんねうみくん」
俺が俺じゃなければこんなに嘘をつかせる事もこんな思いをする事もなかったかもしれない
「つゆちゃん...俺も許されない間違いを犯してたよ」
「うみくん?」
「つゆちゃんつゆちゃん.....俺の事嫌いにならないで、離れていかないで」
しゃくり上げるように泣く震えた俺の身体に腕が回ってそこから伝わる振動に彼も震えているのだと見上げた顔は悲痛な面持ちで歪んでいて思わず手を伸ばした
「嘘ついてたんだ...自分を騙して相手に偽っても俺の想いさえ変わらないなら何だって許されると思ってたんだ...でもそうじゃなかった」
きっとそれはあの栗色の髪を持つ少女だけでなく、俺に対してもそうでこんなにも近くでずっと傍に居たのに何処か遠く感じていた正体なんだろう
「こんな顔させたかったわけじゃない、ごめんね、ごめんねつゆちゃん、俺はつゆりが好き、愛してる、世界で一番、君がいてくれるならもうそれだけでいい」
俺はうみくんの全てを知らない、教えて貰えなくても良かったんだ、でも今は金色の髪がカーテンみたいに視界を塞いでそこには二人だけの世界がある、目一杯に溜まった雫が宝石のようにキラキラ降り注いで落ちてきた密告はとても甘いものだった
「俺の事置いていかないでうみくん」
「行かないよ、ずっとここにいよう」
もう頬に目尻に流れ落ちる温かいものがどちらのものか判別つかない程に顔はびちゃびちゃでそれでも優しく微笑んだ表情に釣られて口角が上がる
「泣かないで、俺もうみくんが大好き」
「つゆちゃん俺、もう1回やり直せる?許してくれる?」
「....じゃま」
こんなにも想っているのに不安に揺らぐその瞳に今すぐ安心して欲しいのにもどかしい
「え?」
「やっぱり身体が邪魔だぁ〜、今この気持ちをそっくりそのまま受け取って欲しいのにっ」
心を取り出してあげることが出来るならそうしたい、そして俺はずっとうみくんの傍に置いてもらうのだ
「俺いつもうみくんにありがとうって思ってるんだ、うみくんがいると幸せだなって生きてて良かったかもって思えるから」
じたばたしていた手足を止めて名残惜しい二人だけの空間から這い出ると彼に向き合って手を取った、この気持ちが少しでも多く伝わるといい
「つゆちゃん」
「だから何回だって何度だって壊れちゃった俺をうみくんが直して、それで許しちゃうんだから」
願うように吐き出される言葉、心に触れられないのならうみくんの言葉だけが心に留まってこの空っぽの胸を満たしてくれる
「つゆちゃん好きだよ大好きっ」
「俺もあいしてる〜っ」
抱きしめられる温かさに繋がりを感じてあんなに苦しかったのにこの身体も悪くないかもなんて単純に思った、現金な奴だ
「うみくん、どうしよう俺、彼女と話して勘違いさせちゃったかもしれない...」
「いい、そんな事もう考えなくていいんだよ」
「大丈夫?」
元凶となった昼間の会話を思い出して勢いに意気消沈していてろくな会話をしていなかったことを思い出す、沈黙は肯定なんて何処の誰が言ったのか
「元々あっちが勝手に騒ぎ立ててるだけだし大丈夫だよ、もぉーあんなのに付き合ってるのもやめやめっ」
めちゃくちゃで鳥の巣を連想させそうな髪の毛を優しく梳かしながらうみくんは苦笑いした
「逆につゆちゃんは大丈夫?ある事無い事言われるかも...」
「ある事無い事?」
確か悪趣味な変態だとか言われていたが俺は可愛いものが好きだと胸を張って言えるし男が可愛いものを好きだと駄目なのだろうか
「んー、例えば好きとか付き合ってるとかかな?」
「そーいえば俺とうみくんって付き合わないの?」
「ぅっ...純粋な眼差しがっ」
距離をとって腕で顔を隠してしまった目の前の人物と自分が同じ気持ちという事も今までもこれからも傍にいる事が決まっていたので改めてそういう事を確認した事が無かった
「何言われてもさ、またこーやって確かめ合えたら大丈夫だと思うんだ」
不純だなんだと言われてもこれが俺達の愛なのだ、過去の柵がついて回るとしても、もうこの手を離す気は無かった
「はぁぁ〜、つゆちゃん俺と付き合ってくれるの?」
「うみくんじゃないとやだ」
「一生大切にするから」
「俺も」
もう一度体温を求めて引き寄せた身体に体重を預ける、縛っても縛られてもない、ただ好きで愛してる、ここにあるのはただそれだけ
「何かつゆちゃんといると俺ってつくづく馬鹿だなぁって思うよ」
「ははっ、うみくんは馬鹿じゃないけど馬鹿な子ほど可愛いって言うし?どんなうみくんでも大好きだよ」
人の形は変わっていくものだから、まだ脆くて崩れやすくても何度も直して自分達のペースでまた一歩づつ前に進んで行けたら俺達はまた強くなれる気がした
(サムイ、サムイ)
ガシャンッと鈍い音を立てて落ちた画面はひび割れて暗い画面は死んでしまったみたい、部屋に独り、髪もボサボサなまま蹲りジッと台風のような感情が過ぎ去るのを待つ
『許してっ、許してください』
人生の大半を過ごしたこの家にいると思い出したくない記憶さえも蘇ってきて頭を抱える
『俺だってなぁ、こんな事本当はやりたくねぇんだよ』
怒らせないようなご機嫌とりはいつも逆効果で、最後は無様に床に額を擦り付けて許しを乞うて頭に乗せられた足が笑いと一緒に動いて痛い何て知りたくなかった
『ごめんなさい、ごめんなさい』
謝罪の言葉は目の前の男に届くわけもなく本当はやりたくないなんて嘘じゃないかって幼い頭でも薄々気付いていた
(俺がいるから...)
一緒にいるだけで傷付けてしまうのならそんな思いさせたくない、でも心が寒くて凍ってしまいそうでどうしたらいいか分からない
「はっ、はっはっ」
固まった身体が全ての機能を停止させるように喉が詰まって吸っても吸っても肺に入らず口から抜けて犬のように短い呼吸を繰り返す
(だめ...)
クラクラした脳がシャットダウンするように意識を手放してその場に倒れ込んだ、最後に冷たいフローリングの感触だけが嫌に頬に触れていた
「つゆちゃんっ!つゆちゃん!」
「っ」
重たい瞼を持ち上げると暗闇に閉じ込められていた視界が開けて大好きな可愛い顔が心配そうに覗いている
「うみくん...うみくん」
「電話しても出ないし来てみたら倒れてるし心配した...」
「ごめんなさい、俺、俺は」
いつだってキラキラしててその顔を見れば一瞬で全てがどうでもよくなったのに今はただこの手を離さないといけないと思うと苦しくて目頭が熱くなった
「最初から許されてなかったんだ、俺、また間違えてたんだね」
「...つゆちゃん?」
どれだけご機嫌をとろうと上手に出来なかった、初めから上手くいく訳が無かった俺はまた同じ過ちを繰り返して存在そのものが全てを壊していく、狂わせていく
「思い出したんだっ...うみくんっ、心と体ってどうしてこんなに遠いんだろう...」
過去見てきたもの触れてきたもの、その全てが彼と彼女に出会って恋をして無かった事になる筈がない、もしも心と心が触れ合えていたのならこんな事になる前に気付けていたのに
「もうだめなんだね、ごめんねうみくん」
俺が俺じゃなければこんなに嘘をつかせる事もこんな思いをする事もなかったかもしれない
「つゆちゃん...俺も許されない間違いを犯してたよ」
「うみくん?」
「つゆちゃんつゆちゃん.....俺の事嫌いにならないで、離れていかないで」
しゃくり上げるように泣く震えた俺の身体に腕が回ってそこから伝わる振動に彼も震えているのだと見上げた顔は悲痛な面持ちで歪んでいて思わず手を伸ばした
「嘘ついてたんだ...自分を騙して相手に偽っても俺の想いさえ変わらないなら何だって許されると思ってたんだ...でもそうじゃなかった」
きっとそれはあの栗色の髪を持つ少女だけでなく、俺に対してもそうでこんなにも近くでずっと傍に居たのに何処か遠く感じていた正体なんだろう
「こんな顔させたかったわけじゃない、ごめんね、ごめんねつゆちゃん、俺はつゆりが好き、愛してる、世界で一番、君がいてくれるならもうそれだけでいい」
俺はうみくんの全てを知らない、教えて貰えなくても良かったんだ、でも今は金色の髪がカーテンみたいに視界を塞いでそこには二人だけの世界がある、目一杯に溜まった雫が宝石のようにキラキラ降り注いで落ちてきた密告はとても甘いものだった
「俺の事置いていかないでうみくん」
「行かないよ、ずっとここにいよう」
もう頬に目尻に流れ落ちる温かいものがどちらのものか判別つかない程に顔はびちゃびちゃでそれでも優しく微笑んだ表情に釣られて口角が上がる
「泣かないで、俺もうみくんが大好き」
「つゆちゃん俺、もう1回やり直せる?許してくれる?」
「....じゃま」
こんなにも想っているのに不安に揺らぐその瞳に今すぐ安心して欲しいのにもどかしい
「え?」
「やっぱり身体が邪魔だぁ〜、今この気持ちをそっくりそのまま受け取って欲しいのにっ」
心を取り出してあげることが出来るならそうしたい、そして俺はずっとうみくんの傍に置いてもらうのだ
「俺いつもうみくんにありがとうって思ってるんだ、うみくんがいると幸せだなって生きてて良かったかもって思えるから」
じたばたしていた手足を止めて名残惜しい二人だけの空間から這い出ると彼に向き合って手を取った、この気持ちが少しでも多く伝わるといい
「つゆちゃん」
「だから何回だって何度だって壊れちゃった俺をうみくんが直して、それで許しちゃうんだから」
願うように吐き出される言葉、心に触れられないのならうみくんの言葉だけが心に留まってこの空っぽの胸を満たしてくれる
「つゆちゃん好きだよ大好きっ」
「俺もあいしてる〜っ」
抱きしめられる温かさに繋がりを感じてあんなに苦しかったのにこの身体も悪くないかもなんて単純に思った、現金な奴だ
「うみくん、どうしよう俺、彼女と話して勘違いさせちゃったかもしれない...」
「いい、そんな事もう考えなくていいんだよ」
「大丈夫?」
元凶となった昼間の会話を思い出して勢いに意気消沈していてろくな会話をしていなかったことを思い出す、沈黙は肯定なんて何処の誰が言ったのか
「元々あっちが勝手に騒ぎ立ててるだけだし大丈夫だよ、もぉーあんなのに付き合ってるのもやめやめっ」
めちゃくちゃで鳥の巣を連想させそうな髪の毛を優しく梳かしながらうみくんは苦笑いした
「逆につゆちゃんは大丈夫?ある事無い事言われるかも...」
「ある事無い事?」
確か悪趣味な変態だとか言われていたが俺は可愛いものが好きだと胸を張って言えるし男が可愛いものを好きだと駄目なのだろうか
「んー、例えば好きとか付き合ってるとかかな?」
「そーいえば俺とうみくんって付き合わないの?」
「ぅっ...純粋な眼差しがっ」
距離をとって腕で顔を隠してしまった目の前の人物と自分が同じ気持ちという事も今までもこれからも傍にいる事が決まっていたので改めてそういう事を確認した事が無かった
「何言われてもさ、またこーやって確かめ合えたら大丈夫だと思うんだ」
不純だなんだと言われてもこれが俺達の愛なのだ、過去の柵がついて回るとしても、もうこの手を離す気は無かった
「はぁぁ〜、つゆちゃん俺と付き合ってくれるの?」
「うみくんじゃないとやだ」
「一生大切にするから」
「俺も」
もう一度体温を求めて引き寄せた身体に体重を預ける、縛っても縛られてもない、ただ好きで愛してる、ここにあるのはただそれだけ
「何かつゆちゃんといると俺ってつくづく馬鹿だなぁって思うよ」
「ははっ、うみくんは馬鹿じゃないけど馬鹿な子ほど可愛いって言うし?どんなうみくんでも大好きだよ」
人の形は変わっていくものだから、まだ脆くて崩れやすくても何度も直して自分達のペースでまた一歩づつ前に進んで行けたら俺達はまた強くなれる気がした
