========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 =========================
 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。
 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。
 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。
 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。
 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。
 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。
 ※「こちら中津興信所55」から続きます

 1月9日。午後5時。渋谷区千駄ヶ谷。夏目リサーチ社。社長室。
 中津興信所の面々が、映像データを届けに来た。
 「主人が、多分ピスミラだろう、って連絡を守谷さんから受けたらしいわ。例の男は、何故大発会の襲撃が漏れたのか、不思議がっていたのも謎ね。ご苦労様でした。」
 朱美が入って来ると、「後で笠置さんに届けるわ。」と優香は言った。
 「いいわよ、お義姉さん。私が持って行くわ。」「そう。じゃ、お願い。」
 優香が書類仕事に戻り、朱美は、今夜の夜食に思いを馳せていた。
 分室では、必ず夜食はご馳走だからである。
 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
 笠置と高山が談笑していると、顔認証システムの結果が出た。
 「やはり、身分証のデータと不一致だ。ピスミラのスパイだったか。記者を人質とは、凄いなあ。いや、それより、それを予測した頭脳だな。」
 「守谷さん?」「いや、大文字学だよ。やっぱり、あの人はエーアイだ。」
 「成程ねえ。」と、榊の手伝いをしながら朱美は言った。
 今夜は、ハンバーグのようだ。
 朱美が何を料理しているのか?と高山が覗くと、目玉焼きだった。
 成程。目玉焼きとサラダくらいなら、朱美にも作れるかと思ったが、高山は黙っていた。
 「あっ!!」笠置が声を上げた。
 「念の為、EITOの記者会見場のNew tube映像もマッチングシステムで調べてみたんだ。都知事の記者会見場の男とEITOの記者会見場の男は別人だ。2つの記者会見場の『記者証』のデータは神木英介という記者で、他の連中と捕まった男は神木英介という記者に成り代わっていた訳だが、EITOの記者会見場の神木とは別人だ。」
 笠置の代わりに、朱美が警視庁と、兄のいるEITOにメールで連絡をした。
 久保田管理官が、マルチディスプレイに映った。
 「うーむ。仮に神木Aと神木Bとしよう。神木Aと神木Bは、別々の会場に現れたが、神木Bだけが捕まった。EITOの記者会見場であるシネコンでは事件が起らなかったし、てっきり同一人物だと思っていた。金森隊員の事件ほか、ダークレインボウでは何度か『替え玉』、つまり、偽物が登場している。いずれも本物は既に殺され、成り代わっている。今回のピスミラの犯行と思われる事件では、実は本物は生きている。」
 「えええっ!」皆が驚いていると、「インフルエンザで入院していたんだ。同僚も会見に参加していたが、まさか偽物とは思わなかったと言う。神木Aは、インフルエンザは治った、と同僚に話していたらしい。『ドッペルゲンガー』だと言って震えているらしい。」
 「久保田さん。神木Bは、何と言っているんですか?神木Aのことじゃなくて、発煙筒事件のことを。」と、朱美は質問した。
 「言われた命令を実行しただけだ、と。『木で鼻を括る』応答。神木Aのことも白を切るだろうな。何でも自分の国が最初だ、と見栄を切って嫌われるが、『整形手術』の技術は世界一と言われる阿寒国で手術したんだろうな。後で、進捗を報せるよ。」
 マルチディスプレイは、絵が無く、静まり返った。
 「冷めない内に食べようよ、みんな。朱美さん、お皿配って。」
 朱美待望の夜食会が始まった。
 笠置は、後は警察の仕事だ、と割り切ることにした。
 ―完―
 ※ドッペルゲンガー(Doppelgänger)とは、自分とそっくりの姿をした分身や、自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種を指します。また、同じ人物が同時に別の場所(複数の場合もある)に姿を現す現象を指すこともあります。
 ドッペルゲンガーはドイツ語で「二重に歩く者」という意味を持ち、超常現象事典などでは超常現象のひとつとして扱われます。