いじめられっ子を助けたら懐かれた


 そして俺たちの同居生活がスタートした。
 とは言っても水谷の色々な家具や生活用具、そしてゲームを家に入れることから始まった。
 今日から水谷との同棲が始まるんだ。そう思うと嬉しすぎる。

 「浅羽君働き者だね」

 水谷はふとそう言った。
 当たり前だ。頑張らないわけがない。
 俺は、水谷が好きだから。

 「ねえ、隆之くん。明日から毎日一緒に学校に行けるけどさ、楽しみで張り切ってるの?」
 「あまりそう言うこと言うなよ」
 「僕は今日から毎日一緒に寝られるという事で張り切ってるよ」
 「それは楽しみだな」

 ベッドの隣で水谷が寝る。
 そもそも俺たちは一緒に寝たこと自体ほとんどない。
 というか、一夜を過ごしたこと自体が無い。

 「今日は一緒に楽しい夜を過ごそうね」
 「水谷が言うと、どちらの意味か分かんねえよ」

 単に一般名詞としての楽しい夜なのか、同性カップルとしての楽しい夜なのか。

 「隆之くんは楽しみじゃないの?」
 「楽しみだよ。それは当然だろ」
 楽しみじゃないわけがない。

 俺は水谷と一緒に寝ることが楽しみでこれまで過ごしてきたようなものだから。
 水谷の引っ越しが決まってから今日までの五日間を。

 「今度は俺が襲うかもしれないぞ」
 「ふふ、それもいいね。結局隆之くんが襲ってきたのは最初の一回だけだから」
 「うっ悪かったな」

 大体水谷が襲ってきてるからな。
 しかも俺が意図してないタイミングで。

 「でも、全部楽しんでるからいいだろ」
 「そうだね。隆之くんいつも楽しんでるもんね」
 「ああ、だからいいだろ」

 別に俺がいつも襲われる方、受け手だったとしても、楽しかったらいい。

 「ねえ知ってる? BLには二つの役職があるんだって」
 「ああ、」

 攻めと受だ。

 「僕たち、完全に役割決まってるね」

 そう言って水谷は格別の笑顔を見せた。


 ★★★★★

 引っ越しが終わった。
 水谷の私物は全てこの家に来た。

 「今日からはいつでも隆之くんを襲えるんだね」
 「ああ、そうだな」

 あまり認めたくはないが。

 「それなら、僕が今襲ってもいいよね」
 「いいが、その前にしたいことがある」
 「何?」

 俺は地面に置いてあるゲーム機を見やる。

 「これがしたい」

 そう、俺は言った。

 この前は出来なかった。
 理由は水谷がゲームよりもベッドを選んだからだ。

 「隆之くんは仕方ないなあ」

 そう言って不器用に笑う水谷。

 「じゃあ、やろっか」

 そう言った。
 俺がやりたいゲームはカートレースゲームと、大乱闘ゲームだ。
 どちらも世界中で人気で、少なくとも半数の子どもが一度はやったこともあるくらいの人気度だ。

 「負けないからな」
 「うん、僕も負けないよ」

 俺たちは火花を散らせあい、ゲームが開始された。
 早速大乱闘ゲームをする。

 「格ゲーのリベンジをしてあげるよ」

 水谷もバチバチのようだ。

 「負けないぞ、水谷」
 「うん。隆之くん」

 そして開始されるが、結局俺がぼろ勝ちだった。
 水谷は負けるたびに悔しいと唇をかんでいた。
 なんだかいじめているみたいで少し楽しかった。

 誤解はされたくないが、水谷の悔しがる顔が、見てて楽しいのだ。
 別に恭平と同じ趣味嗜好という訳ではない。

 そして、水谷が最後に一回、と言ってきた。

 「最後はね、罰ゲーム制にしない?」
 「ああ、いいな」
 「じゃあ、負けたほうは勝った方の言うことを聞く」
 「それでいい」

 今のところ俺の五連勝。負ける可能性などほとんどない。
 水谷にする罰ゲームか、今は思いつかないな。
 だけど、そこはゆっくりと考えることにしよう。

 そう思っていたのがダメだったのかもしれない。

 「なんだよ、これ」

 水谷のキャラが明らかにレベルが上がっている。
 まさか今までのは撒き餌だったのか。

 「僕が最初から本気を出すと思ってるの?」
 「騙してたんだな」
 「うん、僕は隆之くんをだましてたよ。五連勝したら、お願い聞いてくれると思って」

 水谷のやつ。考えていたな。
 ここから巻き返せる方法はあると思う。
 しかし、最初に三連撃をくらってしまった。
 そのおかげで、体力が削られている。
 そのおかげで今回のゲーム、負けてしまった。

 「悔しい」

 俺はそう言って床にゴロンと転がった。
 罰ゲーム自体はそこまで嫌ではない。それも部類によるが。(テレビとかのようなびりびりは嫌だ)
 しかし、負けたこと自体が、今まで手を抜かれてたのが悔しいのだ。
 確かに水谷が弱すぎるとは思っていた。格ゲーの時ももう少し強かったはずだし、そもそもゲームの所持者にしては動きが初心者っぽかったのだ。
 だが、まさか手を抜かれているとは夢にも思わなかったのだ。

 「それで、罰ゲームだけど」

 来た。罰ゲームだ。

 「えーと、僕のことをこれから亮と呼ぶこと」

 それかあ、と俺は思った。
 あまり良くはないけど仕方ない。


 「分かったよ、亮」

 その瞬間、水谷の顔が急に明るくなった。
 その顔がかわいい。



 「ありがとう」

 そう元気に跳ねた。
 その後、カートレースでも罰ゲームを強いられた。
 その結果、

 「なんでこうなるんだよ」
 「ふふふ」

 水谷から縛られている。とは言ってもそこまでがちがちの物ではなく、ただ、縄でぐるぐる巻きにされているだけだ。
 あの、俺と亮が付き合う原因になったあの日を思いだす。
 あの時も拘束されたなあ。

 「で、一日中なのか?」
 「うん」

 こいつは色々とねじがぶっ飛んでいる。

 「今日は僕がお世話するから安心してね」

 安心して根じゃねえ。よく考えたらまだお風呂にも入ってねえし、ご飯すら食べてない。
 今の時刻は6時半。つまり今から寝るまで縛られながら、亮の観賞用の玩具になって、世話されるのか。
 亮ならやりそうなことだ。
 俺は我慢するしかない。

 絵用の気が済むまで哀願奴隷になるしかないのだ。

 その後どうなったかなんて、ほぼ覚えていないが。ご飯も亮に食べさせられたし、歯も磨かれた。
 屈辱的だった。

 しかし、相手が亮ということもあって、屈辱的ではあるが、そこまでの嫌悪感は抱かなかった。
 普通、こんな行為絶対に嫌なのに。

 それも、亮の姿が可愛かったのに。

 俺は、その次の日、明るい日差しと共に目が覚めた。
 学校に行く日だ。
 これが毎日続くわけか。

 しんどそうだが、楽しそうだ。

 「なあ、亮」
 俺は隣にいる亮に話しかける。
 今も縄で縛られており、自由には動けない。

 亮は寝ている。時計を見る。そこには七時五〇分と書いてある。
 結構ギリギリの時間だ。
 家から学校まで近いとはいえ、朝ごはんの時間も考えれば、今すぐに起きるのが好ましい。
 「亮」

 起き上がる様子はない。

 「亮、そろそろ起きてくれ」

 俺の二度目のその言葉でようやく、亮は目が覚めたようで、「おはよう隆之くん」と言って目をごしごしとこすっている。
 寝起きだからかしんどそうだ。
 しかし寝起きの顔がかわいい。
 昨日は色々とありすぎて、亮の私生活を愉しむ感じでは中tぅたからな。
 なぜ俺は二度目の罰ゲームを了承したのだろうか。
 今も後悔している、

 「縄をほどいてくれ」
 「分かった」

 そう言って亮は俺の縄をほどいてくれた。
 すっきりとした。そう俺は思った。

 だけど不思議と、外した瞬間嫌だなと思ってしまった。
 俺にこんな気はないというのに。

 亮は相変わらず目を拭っている。

 「眠たいのか?」

 俺はそう訊いた。

 「昨日何時まで起きてたと思ってるの」
 「二時までは起きてたな」
 「そうだよ。そりゃ眠たいよ」
 「それを言ったら俺の方が被害者なんだけど」

 昨日はあの後もずっと眠らさせてくれなかった。
 亮はただ自分の意志で夜更かしをしていただけだが、俺はもっとひどい。
 夜更かししたかったわけではないのに、昨日亮に体力を吸収されて、夜更かしをさせられたのだから。

 「それよりも早くご飯を作ってくれ」
 「隆之くんは僕のことを便利屋さんだと思ってるよね」
 「じゃあ、朝ごはんカップラーメンにしようか?」
 「僕の作ったカレーがあるでしょ」

 もうっと頬を膨らませている。
 亮がこの家に来てまだ一日だが、亮の新たな一面をたくさん見ている。

 それが面白く楽しい。

 そして二人でカレーを食べ、学校に向かう。
 カップルらしさが出ている。
 なんだかもう夫婦じゃないかとさえ思っている。
 男同士でも夫婦のようになれるのだ。
 そのことを俺たちはこの手で証明してしまった、

 まあ、この国に同性婚なんているルールはほとんど出てきていないが。

 「隆之くん、手を繫がない?」

 驚いたのは、亮がそのようなことを言ったことだ。

 「どうして?」

 「どうしてって、もう隠す意味は無くない?」

 もはや亮は何を言っているのだろうか。

 隠す意味がない。あるだろ。普通後ろ指をさされるんだ。俺たちは異質なのだから。

 「大丈夫だよ。僕たちは仲の良いだけの親友なんだ。それなら誰にも文句を言われる道理はないんだから」
 「ああ、もう。そうだけど」
 「ほら」

 亮にはかなわない。
 俺は亮の手を取った。

 「恋人つなぎじゃないんだね」
 「出来るわけないだろ」

 こいつは何を言っているんだ。

 恋人つなぎはもう論外だ。
 そんなこと、もはや俺たちがトクベツな関係であることをあたりに示しているようなものじゃないか。
 本当に突飛なことを言うから亮は困る。

 「それよりも時間ないから急ぐぞ」
 「うんっ!!」

 結局俺たちは遅刻した。
 流石に間に合う訳が無かったのだ。
 寝坊した時点で。

 「水谷、浅羽二人とも遅刻か。たるんどるんじゃないか?」

 怒られてしまった。しかし言い訳をすることなどできない。何しろ、俺たちが完全に悪いのだから。

 
 「この前もホームルーム出てなかったよな」

 ギグっ。

 「二人とも次二人でサボったら反省文だぞ」

 言われてしまった。
 二人でこっそりトイレでイチャイチャしてたという事はばれてないが、そうだとしてもなんだか不可思議だ。

 俺たちはそのまま授業を受けていく。

 そして休み時間になったタイミングで、奏が俺にちょいちょいと指さしていく。
 誘われている。
 俺は奏のいる方へと歩いていく。

 「あんたたち、二人とも最近仲良すぎじゃない?」

 そう、奏が言う。
 その二人というのは、俺と亮のことだろう。

 「今日も二人で遅刻しちゃって」
 「仕方ないだろ、だって――」

 そう言おうとして俺は口を閉ざした。
 まだ、同性をし始めたとは誰にも言っていない。

 それは奏にも――いつかばれるとは思っているが――今は伝えるわけには行かない。

 「亮が待ち合わせ場所になかなか来ないから」

 そう言うしかなかった。

 「なんか最近二人で登校してるよね。三人で登校したいよ」

 奏は寂しそうに言う。
 確かにだ。最初は奏のことも尊重していたが、いつしか奏を無いが死にしてた気がする。
 鹿も一緒に登校するのは今日が初めてだ。
 だから、奏もうすうす気づいているのだろう。
 奏が俺の一番から外れているという事を。

 「ウチはさ、ウチなりに頑張ってるけど、浅羽がウチから離れるのは寂しいからさ」
 「……うん」

 それを見て、俺は少し悲しくなった。
 ただ、俺の中の一番は亮で変わらない。
 だが、奏のことをもう少し大事にしてあげないといけないなと俺は思った。

 だが、俺は正直水谷と二人で帰りたい。
 それが奏を裏切る行為だと分かっていたとしても。
 奏のその表情を見たら断るのが難しい。

 懇願してくるその姿は猫のようだ。

 「でも、ごめん。今度埋め合わせはするから、暫くは亮と一緒に登下校させてくれ」
 「うちは……」

 そう言って奏は逃げ出していった。
 全く、人間関係とは面倒くさい。だが、奏の気持ちもよくわかる。何しろ、俺だって亮が俺を無視して別の人と遊ぶ。そんなの絶対嫌だからだ。

 「はあ」

 亮と遊ぶことで、このモヤモヤを晴らすしかない。
 昨日みたいな激しい遊びは正直しんどいから今日は勘弁してほしいところだけど。

 ★★★★★


 ウチだって分かっている。
 浅羽の心は水谷君が取ってるって。

 ウチは浅羽のことが友達として好きだけど、異性としては見てなかった。
 だから、水谷君が浅羽のことを好きと言ったとき協力してあげた。
 だけど、まさかこうなるとは思わなかった。
 そのせいでウチの友達が取られてしまうとは。

 水谷君はいい子だからあまりせめたくない。
 でも、ウチは悔しい。
 友達として、水谷君に負けたことが。
 水谷君、たぶん告白したんだろうと思う。
 ウチだって、彼女になってればよかったかなと思った。
 異性としての隙じゃなかったとしても、友達としてウチが浅羽を独占できたのに。

 ウチは荒れていた。
 そんなウチは高校デビューでヤンキー的な行為を卒業した。
 中学時代は、近所の不良を倒してたのに。

 そんなウチが高校で初めて出来た友達が浅羽君だったのだ。

 だから大切な友達だったのに。

 こうなったら仕方ないかもしれない。
 ウチが頑張るしかない。

 ★★★★★

 僕の隆之くんとの二日目の同居生活が始まったが。問題が生た。

 「奏だよー」

 僕がインターフォンを取った瞬間、来客の姿が見えたのだ。
 奏さんが家に来た。
 勿論、隆之君の友達なのだから当然なんだけど、心の準備が出来ていない。

 「隆之くん」
 「ああ、隠れていろ」
 「うん」

 僕は隆之くんの指示に従って、上の部屋に隠れる。

 奏さんは僕と隆之くんの距離が縮まった事に対して疑問を持ったのだろうか。
 それとも、単に隆之くんの友達としてきたのか。
 答えは分からない、けど。僕はこの状況はまずいと思う。
 僕は隆之くんを独占しちゃってるから。

 僕としては奏さんが隆之くんを占有したとしたら嫌だ。
 というか、僕以外の人とかかわらないで欲しい。
 でも、それはあくまで僕の願望で、それが不可能なのを僕は知っている。

 だから少しくらいならいいと思うけど、下はどうなっているんだろうか。
 いや、僕は言ってはならない、そんな気がする。
 だって、僕は奏さんと隆之くんがもし何かしてたら、耐えられない気がするんだ。


 下からカートレースの音が聞こえる。
 僕はもうだめかもしれない。こんなの二人がゲームをしているに決まっているんだから。


 ★★★★★


 結局奏に家に上がられて、一緒にゲームをすることになった。
 上には亮がいるから上がらせたくない。しかし、追い返すのも罪悪感がある。
 という訳での、折衷案だ。
 亮には悪いことをしてると思う。俺だって亮と一緒にしたいんだし。
 奏とも遊ぶのは楽しい。

 しかし、今日は同棲二日目だ。昨日は亮にペースを握られっぱなしだったが、今日はペースを握りたい。
 そう思っていた矢先にこれだ。
 しんどいな、とかは無いが、早く亮と遊びたいのもまた事実だ。

 それに上に隠れさせている亮の事が気がかりだし。
 いっそ俺と亮の同棲の話を伝えるのもありだなと、一瞬思ったが、流石にそれは勇気がいる。
 俺と亮の関係に薄々気が付いている可能性のある奏にその話をするのはな。

 「あー、ウチ一位だよ」
 「そうだな」

 なんだか昨日の熱が抜けてないみたいだ。
 昨日のカートレースその熱が。
 楽しくないわけじゃないけど、物足りない。

 物足りないんだ。

 その時に上から物音がした。
 俺はその方向を見る。
 そこには、あいつが――亮がいた。

 なぜ、ここにいるんだ。それが俺の率直な感想だ。
 隠れていろと言っていたはずだ。
 いや、理由なんてわかっている。
 部屋中に響き渡るゲームの音と、俺と奏の声、それを聞き我慢できなくなったのだろう。
 仕方ないな。

 「亮」

 俺は手を振った。

 「嘘、まさかあんたたち同棲してるの?」
 奏は驚いた表情をしている。そんな奏に対し、俺は「ああ」と頷いた。

 それから俺は訳を話そうとした。
 だが、その前にだ。

 「亮?」

 亮が俺のことを押し倒した。
 まさに、目の前に奏がいる今襲い掛かってくるとは。
 それだけ先程の俺と奏の会話は亮の独占欲を引き立たせてしまったのか。

 「亮」
 「奏さんはずるい。家にいる間隆之くんは僕の物なのに」

 そうほっぺほ膨らませながらそのように言う亮。
 先程の一瞬の間にもかなりの鬱憤がたまっていたようだ。

 「僕は隆之くんのことが好きなのに」
 「おい、奏がいる中でそれを言うなよ」
 「大丈夫、ウチ知ってるから」
 「は?」

 知ってるの?
 俺と亮が付き合っているってことを。

 「まずうちの友達として女装した水谷君を紹介した時点で分かるっしょ」
 「あ」

 そうだった。
 俺が馬鹿だっただけなのか。

 「ごめんだけど、帰ってくれない?」

 亮が冷たい視線を奏に向ける。
 それこそ敵に向けるかのような視線だ。

 「僕は隆之くんと熱い夜を過ごしたいんだ」
 「亮」
 「ウチはやっぱり邪魔ものなんだね」

 そう言って奏はカバンを背負う。

 「じゃあ、さよなら」

 そう吐き捨て家から飛び出る。

 奏、なんだか寂しそうだったな。
 だけど、ほっとした感じがある。
 そう思ってしまうのは俺の心が弱いからだ。
 俺と亮は出来たばかりのカップル。
 だから外敵に弱いのだろう。関係が壊れる要因――例えば今日の奏のような――外敵に。

 だから後で、謝罪として奏ともデートしてやろうと思った。


 「隆之くん……」
 「なんで奏を追い出したんだ」

 理由は分かっている。

 「寂しかったから。僕の隆之くんなのに、なんで僕が味わえていないんだろうって。そう思うと寂しくて」
 「俺は道具じゃないぞ」
 「うん、分かってる。でも、寂しかったから許してよ」

 この小動物みたいな亮。

 「分かった。許すよ」

 そう言って俺は亮を抱いた。




 「奏、結局どう思ってるんだ」

 その後、俺は奏を連れてデートという事で、カフェに来た。
 亮は寂しそうだったが、何とか説得した。
 あの日の埋め合わせだ。

 「ねえ、浅羽」

 奏はカフェラテを飲み、そう言った。

 「水谷君との調子はどうなの?」

 俺は唾をのんだ。その言葉に対し、俺はどういっていいのやら。
 しかし、俺はこの言葉に対して返答を返さなければならない。俺はそう感じている。

 「いい感じだよ」

 結局按排な答えを返してしまった。

 「ウチはさ、寂しかった。でも、仕方ないことだって割り切ってる。家出のあの水谷君の姿を見たらやっぱりウチも強くは言えないし、浅羽には水谷君がふさわしいよ」

 なんだかみっともなく思えてくる。
 今奏にこんな言葉を言わせているという事が。


 「ごめん」
 「ごめんなんて言わないでよ。ウチがみっともなくなるだけだから」

 そう言って苦々しそうに笑う奏。

 「その代わり約束して。水谷君を大切にすること」
 「奏はそれでいいのかよ」

 その奏の顔は悲しそうだった。
 自分の感情を我慢しているような感じだった。

 「今は同棲を開始したばかりだから二人きりにさせて欲しいが、同棲に慣れたらまた奏と遊びたいと思ってる」
 「それなら何で、この前は?」
 「この前は亮が同棲二日目で、まだ他の人を入れたくなかったみたいだ」
 「ならウチは完全に邪魔な存在だったみたいだね」
 「そうだな。だけど、亮もいつまでも排除するつもりじゃないらしいから安心して欲しい」

 それに、亮は性格がいい。
 俺を独占したいという理由で、暴走しかけたのかもしれない。

 「なるほどね」

 奏は納得はしてくれた。