お互いのわだかまりが溶けて、時間が来るのも忘れてしまうほど喋った。だけど『すぐ友達になりましょう』とはならない。
だって昨日まで仲が悪いことを稲森たちに知られているから。急に仲良しになるなんて恥ずかしい。それにどうして仲良くなったのか聞かれたら『同じ人を好きになって一緒に失恋した』だなんて、言えないし。
そんな訳で、僕らは学校では今まで通りだ。
今日だって……
「それ、最後のカレーパン! 狙ってたのに」
学食で一番人気のカレーパンを藤木に取られて僕が地団駄を踏んでいたら、藤木は鼻で笑う。
「お前がノロマだからだろ」
「〜〜ッ!」
こんな些細な言い合いが続くものだから、稲森たちは相変わらずだなあと苦笑いしていた。
藤木も別に話を合わせた訳じゃないのに、仲良くしてこない。それが逆になんだか新鮮だった。
『公式から次のライブ予定出てるの見た?』
『見た! 早速カレンダーに印つけたよ』
あの日交換した連絡先。気がつけばほぼ毎日のようにメッセージをやり取りしていた。学校で話せばいいのにと思うのだが、これが快適なので数ヶ月、どちらともなく続いている。
ライブのチケットを藤木に取ってもらい、二人で参戦し、興奮した僕らは帰りの電車で話すだけではもの足らずファミレスで語り合ったり。
もう本当は仲がいいことをみんなに知られてもいいのに、二人で秘密を共有している感があって楽しい。
「最近、福山さあ藤木と仲良し?」
弁当を食べている時に新川にそう言われ、僕は掴んでいたエビフライを落としてしまった。
何故分かったんだろう? 藤木が言ったのかな。
「え、なんで」
「藤木に『キミダカ』のライブ行ってきたって話聞いてさ、誰かと一緒に行った感じだったから。てっきり福山かなって」
するどい。洞察力も兼ね備えてるなんてさすが新川、などと感心しつつもコイツに嘘をつく必要はないかなと思い頷いた。
「……藤木が、チケット取ってくれたからさ。仕方なく」
最後の一言は訳のわからない言い訳だ。それを聞いた新川はプッと吹き出す。
「全く素直じゃないんだから。でも俺は嬉しいな。二人とも大切な親友だから」
そう言ってご飯を頬張る新川。藤木と仲良くなったのはお前に失恋したからだけどな。
「そう言えば彼女とはどう?」
「おかげさまで、ラブラブ」
「ははっ、お熱いことで」
気がつけばこんな軽口もだせるようになっていた。親友として新川の恋の応援ができるくらいに。それでも二人を見るとチクリと来ることはあるけれど。
進学希望の大学を絞る時期になり、僕はなんの躊躇いもなく以前から狙っていた県外にあるK大にすることにした。合格ラインまではもう少し頑張らないといけないのだが、この大学のメディア学部に行きたくて頑張ることにした。新川は県内のS大を希望している。こちらは僕の頭では到底無理。お互い頑張ろうなんて新川は言っているが彼の頭脳なら楽々合格だ。
稲森たちもそれぞれ違う大学で、離れ離れになるんだなあと、少し寂しさを覚えた。
『お前どこ狙うの』
藤木とのメッセージも話題は大学のこと。この時期はみんなこれだ。
『K大。福山は?』
それをみた瞬間、僕は驚いた。
何故なら僕の周りでK大を選んでいる奴はいなかったから。どれだけ僕と藤木は気が合うんだろう。もし二人とも合格したら一緒に授業でたり、遊んだりするんだろうか。それはそれで、楽しそうな気がする。
『同じだよ』
スマホの向こうで藤木が驚いている顔を思い浮かべ、僕は笑った。
だって昨日まで仲が悪いことを稲森たちに知られているから。急に仲良しになるなんて恥ずかしい。それにどうして仲良くなったのか聞かれたら『同じ人を好きになって一緒に失恋した』だなんて、言えないし。
そんな訳で、僕らは学校では今まで通りだ。
今日だって……
「それ、最後のカレーパン! 狙ってたのに」
学食で一番人気のカレーパンを藤木に取られて僕が地団駄を踏んでいたら、藤木は鼻で笑う。
「お前がノロマだからだろ」
「〜〜ッ!」
こんな些細な言い合いが続くものだから、稲森たちは相変わらずだなあと苦笑いしていた。
藤木も別に話を合わせた訳じゃないのに、仲良くしてこない。それが逆になんだか新鮮だった。
『公式から次のライブ予定出てるの見た?』
『見た! 早速カレンダーに印つけたよ』
あの日交換した連絡先。気がつけばほぼ毎日のようにメッセージをやり取りしていた。学校で話せばいいのにと思うのだが、これが快適なので数ヶ月、どちらともなく続いている。
ライブのチケットを藤木に取ってもらい、二人で参戦し、興奮した僕らは帰りの電車で話すだけではもの足らずファミレスで語り合ったり。
もう本当は仲がいいことをみんなに知られてもいいのに、二人で秘密を共有している感があって楽しい。
「最近、福山さあ藤木と仲良し?」
弁当を食べている時に新川にそう言われ、僕は掴んでいたエビフライを落としてしまった。
何故分かったんだろう? 藤木が言ったのかな。
「え、なんで」
「藤木に『キミダカ』のライブ行ってきたって話聞いてさ、誰かと一緒に行った感じだったから。てっきり福山かなって」
するどい。洞察力も兼ね備えてるなんてさすが新川、などと感心しつつもコイツに嘘をつく必要はないかなと思い頷いた。
「……藤木が、チケット取ってくれたからさ。仕方なく」
最後の一言は訳のわからない言い訳だ。それを聞いた新川はプッと吹き出す。
「全く素直じゃないんだから。でも俺は嬉しいな。二人とも大切な親友だから」
そう言ってご飯を頬張る新川。藤木と仲良くなったのはお前に失恋したからだけどな。
「そう言えば彼女とはどう?」
「おかげさまで、ラブラブ」
「ははっ、お熱いことで」
気がつけばこんな軽口もだせるようになっていた。親友として新川の恋の応援ができるくらいに。それでも二人を見るとチクリと来ることはあるけれど。
進学希望の大学を絞る時期になり、僕はなんの躊躇いもなく以前から狙っていた県外にあるK大にすることにした。合格ラインまではもう少し頑張らないといけないのだが、この大学のメディア学部に行きたくて頑張ることにした。新川は県内のS大を希望している。こちらは僕の頭では到底無理。お互い頑張ろうなんて新川は言っているが彼の頭脳なら楽々合格だ。
稲森たちもそれぞれ違う大学で、離れ離れになるんだなあと、少し寂しさを覚えた。
『お前どこ狙うの』
藤木とのメッセージも話題は大学のこと。この時期はみんなこれだ。
『K大。福山は?』
それをみた瞬間、僕は驚いた。
何故なら僕の周りでK大を選んでいる奴はいなかったから。どれだけ僕と藤木は気が合うんだろう。もし二人とも合格したら一緒に授業でたり、遊んだりするんだろうか。それはそれで、楽しそうな気がする。
『同じだよ』
スマホの向こうで藤木が驚いている顔を思い浮かべ、僕は笑った。



