藤木の話は、僕らが新川に彼女ができたのを知ったあの日から始まった。
「お前がうちに来て、俺を嫌っていたくせに心配してきたって。しかも『彼女出来たって聞いてショックなんだろ』なんて。あの時から福山はなんか面白い奴だなって思い始めたんだよな」
確かにあの日、先に笑いだしたのは藤木の方からだった。それに釣られて僕も大笑いしたっけ。
「それからお前といるのがすごい楽しくなってさ。元々好きなものが似てるからそりゃ楽しいよな。だから俺は新川に彼女ができてショックだったけどすぐ、吹っ切れたんだ。それからはずっとあいつはもう親友としか見てない」
「でも……」
「黙って聞け。俺はさ、お前と受験頑張って同じ大学行けたの、めちゃ嬉しかったんだ。本当は違う大学目指してたんだけど、お前がK大目指してるって新川に聞いてさ。慌てて志望校変えたんだぜ」
そうだったよね、と言いかけて口を紡いだ。危ない、これは新川から聞いたんだから知らないふりをしておかないと。
「そうだったんだ。でも、なんで」
「お前ともっと一緒にいたかったから。今こうやってさ、一緒にいられるの本当に嬉しいんだ」
ドキン、と胸が高鳴る。その言い方、勘違いしそうになるからやめてほしい。
「だからお前が『同じ大学なんて冗談じゃない』って言ってたのまじキツかった」
「……あれは、本当にごめん」
「あいつらの手前、そう言ってるんだろうなって、分かってたけど、どうしてもその時は許せなかったんだ。だけどさ、もうそんなこといいんだ」
その割にはまだ言ってますけど、と思いながら先を聞く。
「受験前に俺が熱出してた時、看病してくれただろ。あれもすごい嬉しかった」
気がつけばさっきから藤木は僕を褒めてばかりで、話が見えてこない。過去を振り返って褒めてくれるのはいいんだけど、それがどうして、新川と二人っきりで長いこと話をしていたことに繋がるんだろうか。そう思っているのが顔に出てしまったのか、藤木はフッと微笑んだ。
「長くなって、ごめん。つまり、あの……」
突然、藤木の言葉が歯切れの悪いものとなっていく。
「つまり?」
藤木はちらっと僕を見た後、視線を外してこう言った。
「新川のあと俺が好きになったのは、福山なんだよ。新川はそれに気づいて、応援しててくれただけ。だからファミレスの時二人で話してたのはお前とどうなったのかって聞いてきたから答えていただけなんだ」
「え、えええ?!」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。藤木が、僕のことを好きだって?
そんな素振り、全くなかったじゃないか! むしろいつもと変わらず……というかいつから僕のことを好きになっていてくれたんだろう。そう思った時、ふと志望校のことが頭をよぎる。新川から僕の志望校を聞きすぐに変えたこと。その頃にはもしかして……
「なあ、志望校を変えたのはもしかして」
「そうだよ」
みるみるうちに、藤木の頬と耳が赤くなっていく。
つまり、僕が好きだから、一緒の大学に行きたくて志望校を変えたんだ。
もう僕の頭の中はパニック。数日前には親友だと思っていた藤木が好きなんだと自分の気持ちに気がついて、今日はまさかその藤木が僕に好意を持っていたことが発覚して。
気持ちの整理がすぐにつかない。
「新川にどうして志望校を変えるのかってしつこく聞かれてさ、ポロッとお前のことを言ったんだよ。そしたら新川がなぜかすごい喜んで……というか楽しんでただけかも。だけど、お前が新川を好きだったってことは言ってないから。それは安心してほしい」
「うん、それは大丈夫、藤木は勝手に言うような奴じゃないって分かってるから」
「……ありがとう」
そしてしばらくの沈黙。いやもうこれどうしたらいいんだろ、そう思っていると藤木が口を開いた。
「だから、俺はもうお前のライバルにはならない。分かってくれた?」
それを聞いてはっと気がついた。そうだ、藤木はまだ僕が新川を好きだと思ったままなんだ。誤解を解かなければ、と思った瞬間、気がついた。
これって……告白するチャンス、だよな。果たしてすぐ、信じてくれるかは分からないけど……何より誤解されたまま応援されるなんてとんでもない。
「ふ、藤木。本当に大丈夫だから、応援なんていらない。お前が新川を『親友としか思っていない』っていうのと同じで、僕もそうだから。それにっ……」
藤木は僕を見つめている。僕はギュッと拳を握り、目を離さずに言った。
「僕が好きなのは、藤木だから! 信じられないかもしれないけど、僕らは両想いなんだ!」
「お前がうちに来て、俺を嫌っていたくせに心配してきたって。しかも『彼女出来たって聞いてショックなんだろ』なんて。あの時から福山はなんか面白い奴だなって思い始めたんだよな」
確かにあの日、先に笑いだしたのは藤木の方からだった。それに釣られて僕も大笑いしたっけ。
「それからお前といるのがすごい楽しくなってさ。元々好きなものが似てるからそりゃ楽しいよな。だから俺は新川に彼女ができてショックだったけどすぐ、吹っ切れたんだ。それからはずっとあいつはもう親友としか見てない」
「でも……」
「黙って聞け。俺はさ、お前と受験頑張って同じ大学行けたの、めちゃ嬉しかったんだ。本当は違う大学目指してたんだけど、お前がK大目指してるって新川に聞いてさ。慌てて志望校変えたんだぜ」
そうだったよね、と言いかけて口を紡いだ。危ない、これは新川から聞いたんだから知らないふりをしておかないと。
「そうだったんだ。でも、なんで」
「お前ともっと一緒にいたかったから。今こうやってさ、一緒にいられるの本当に嬉しいんだ」
ドキン、と胸が高鳴る。その言い方、勘違いしそうになるからやめてほしい。
「だからお前が『同じ大学なんて冗談じゃない』って言ってたのまじキツかった」
「……あれは、本当にごめん」
「あいつらの手前、そう言ってるんだろうなって、分かってたけど、どうしてもその時は許せなかったんだ。だけどさ、もうそんなこといいんだ」
その割にはまだ言ってますけど、と思いながら先を聞く。
「受験前に俺が熱出してた時、看病してくれただろ。あれもすごい嬉しかった」
気がつけばさっきから藤木は僕を褒めてばかりで、話が見えてこない。過去を振り返って褒めてくれるのはいいんだけど、それがどうして、新川と二人っきりで長いこと話をしていたことに繋がるんだろうか。そう思っているのが顔に出てしまったのか、藤木はフッと微笑んだ。
「長くなって、ごめん。つまり、あの……」
突然、藤木の言葉が歯切れの悪いものとなっていく。
「つまり?」
藤木はちらっと僕を見た後、視線を外してこう言った。
「新川のあと俺が好きになったのは、福山なんだよ。新川はそれに気づいて、応援しててくれただけ。だからファミレスの時二人で話してたのはお前とどうなったのかって聞いてきたから答えていただけなんだ」
「え、えええ?!」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。藤木が、僕のことを好きだって?
そんな素振り、全くなかったじゃないか! むしろいつもと変わらず……というかいつから僕のことを好きになっていてくれたんだろう。そう思った時、ふと志望校のことが頭をよぎる。新川から僕の志望校を聞きすぐに変えたこと。その頃にはもしかして……
「なあ、志望校を変えたのはもしかして」
「そうだよ」
みるみるうちに、藤木の頬と耳が赤くなっていく。
つまり、僕が好きだから、一緒の大学に行きたくて志望校を変えたんだ。
もう僕の頭の中はパニック。数日前には親友だと思っていた藤木が好きなんだと自分の気持ちに気がついて、今日はまさかその藤木が僕に好意を持っていたことが発覚して。
気持ちの整理がすぐにつかない。
「新川にどうして志望校を変えるのかってしつこく聞かれてさ、ポロッとお前のことを言ったんだよ。そしたら新川がなぜかすごい喜んで……というか楽しんでただけかも。だけど、お前が新川を好きだったってことは言ってないから。それは安心してほしい」
「うん、それは大丈夫、藤木は勝手に言うような奴じゃないって分かってるから」
「……ありがとう」
そしてしばらくの沈黙。いやもうこれどうしたらいいんだろ、そう思っていると藤木が口を開いた。
「だから、俺はもうお前のライバルにはならない。分かってくれた?」
それを聞いてはっと気がついた。そうだ、藤木はまだ僕が新川を好きだと思ったままなんだ。誤解を解かなければ、と思った瞬間、気がついた。
これって……告白するチャンス、だよな。果たしてすぐ、信じてくれるかは分からないけど……何より誤解されたまま応援されるなんてとんでもない。
「ふ、藤木。本当に大丈夫だから、応援なんていらない。お前が新川を『親友としか思っていない』っていうのと同じで、僕もそうだから。それにっ……」
藤木は僕を見つめている。僕はギュッと拳を握り、目を離さずに言った。
「僕が好きなのは、藤木だから! 信じられないかもしれないけど、僕らは両想いなんだ!」



