瞬く間に過ぎて行く日常こそが青春なんだ

 冷静なつもりでいたのに全然冷静になんてなっていなかった。
 芽吹のその態度に苛立ちが抑えきれなくて、俺は芽吹の頭を乱暴に引き寄せてキスをした。

 そのまま押し倒して服を脱がせようと身体を離した時に見えた芽吹は…
 固く目を閉じた無抵抗な人形みたいだった。
「…」
 俺は立ち上がり上着と携帯だけ引っ掴んで部屋から飛び出した。

「義孝くん‼︎」
 芽吹の呼ぶ声に振り向かず階段を駆け下りそのまま玄関に向かった。

 目的もなく歩く。ただ遠くへ。

 1月半ばの昼下がりの、明るいだけの太陽が完徹の目に突き刺さる。
 冷たい風に頬を伝う涙が冷やされていく。

「義孝くん‼︎」
 息を弾ませて、芽吹が振り向きざまの俺に突っ込んで来た。
 力いっぱい俺の身体にしがみついて震えている。
「芽吹」
 上着を脱いで芽吹を(くる)んだ。
「私、樹里くんとは何もやましい事なんて…」
「ごめん。分かってるから」
 芽吹を力いっぱい抱きしめた。

 こんな辛そうな表情(かお)をさせたかった訳じゃない。
 俺が芽吹の笑顔を奪う様なマネしてどうするんだよ?

 一気に冷えたせいでくしゃみが出た。
「あ、上着(これ)…」
 慌てて上着を返そうとする芽吹の手を握り首を振った。
「帰ろ…」
「うん」

 強く握り返された手を信じよう…そう思った。
 だからもう何も聞かない。詮索しない。