瞬く間に過ぎて行く日常こそが青春なんだ

 婚約者とは言え俺たちの部屋は別々で、毎晩こうして寝る前のひと時を一緒に過ごしている。

「めーちゃーん。ごめん、お待たせ…」

 20分程で作業を終え芽吹の隣に並んで壁に寄りかかる。
「すごい集中してたね」
「…そう?」
「うん。もうね、すっごい高速タイピングだったよ‼︎」
 そう言いながらタイピングの真似をする仕草がこれまた堪らなく可愛い。

「本たくさん読んだ?退屈しなかった?」
「大丈夫だよ」
「どうそれ、参考になる?」
「うん、でも私には務まらないかなぁ…って思う」
「来年実習行くんだよな?そっちは相手、大人だもんな…心配だなー」
 優しく抱きしめて頬を寄せる。
「義孝くん過保護すぎだよー」
「んな事ない。普通だよ」
 いつもの様に、お互いに今日一日あった事を報告し合う。
「今日ね、帰り道でワンちゃんが飛びついてきてね…」
「え、また?」

 芽吹は人に好かれる。老若男女問わず誰にでも。動物にも好かれる。犬やネコはザラで、たまに鳥が羽を休めに来たりもする。  
 あぁ…セミが止まった事もあったっけ。

「すっごいかわいかったよ‼︎」
「そっか。子犬だった?」
「どうなんだろう?花ちゃんが面白がって写真撮ってくれたよ」
 芽吹が見せてくれた画面には二本足で立つ巨大な犬の後ろ姿しか写っていない。
…いや、よく見ると犬の足の間に見覚えのある靴がある。
「何これ、デカッ‼︎怖くなかった?」
「グレートピレニーズっていうんだって。全然怖くなかったよ」
 芽吹が笑う。こういう何気ない瞬間にふと思う。

 あぁ、幸せだな…って。