休み明け二日後、廊下で板垣芽吹に会った。
「中道くん。こないだはありがとう‼︎」
 いつも通りにっこり笑う。
「あぁ、うん。別に…」

 俺は板垣芽吹に告るつもりでいた。
「あのさ私、中道くんに言われて色々考えたんだよね…」
「え?」
「卒業した後の事」
「へぇ…どうすんの?」
「私さ、チビだけど体力には自信あるんだよね」
「…あ、そう?」
「農業とか、酪農とか…第一産業?ての」
「あぁ、うん」
「それに特化した専用サイト、見つけたの」
「サイト?」
「婚活サイト」
「…」
「卒業したら結婚して、一緒に働きながら暮らしていけたら楽しいだろうなって…」
「…そう。いいんじゃない?」

 そう言って俺はその場を離れた。

 息が上手くできなくて、意識して鼻から大量に吸い込んだ。

 板垣芽吹の中に俺はいない。
 何も言わないまま失恋したって事だ。