「発言をお許しいただけますでしょうか」
「よかろう、許す」
「これまで雨を降らせるべく、院をはじめとする朝廷の方々が策を講じられてきた事は存じております。しかし一向に手立ては実らず、私の舞いでようやく雨雲を呼び起こす事が出来たのは、奇跡ではございませぬ」
「はて、理由があると申すのか」
「古来、天照大神がこの地に降臨されて以来、神々への純な祈りによって雨乞いを行ったのは世の常。何故此度は早くに、神への祈祷を行いませなんだ」
「神々への、祈祷じゃと?」
「院は御出家をされて以来、仏に祈る毎日を送られていると聞き及びます。此度の日照りについても、読経や写経、弦打ち等を行ったとの事。雨を降らせます神々への祈りを忘れて、仏の道や魔除けに精を注がれては、日照りが続くのは至極当然の事也」
「其方は、朕が誤った道に進んでいると申すか?」
後白河院の前に控える公家達は騒めき、静に対して「控えよ」と強く制する。
「誤っているなどと、恐れ多い事にございます。仏を信じるも良い。ですが、大陸より伝わった神だけでなく、古来より日の本を守護する神々の存在を忘れてはなりませぬと、申し上げたいのです」
静は動じる事なく、院に深々と頭を下げる。
静の凛とした姿勢に、院は笑いもせず怒りもせず、その心を読もうとするかのようにじっと見つめていた。
静の功績は、瞬く間に内裏に伝わった。
その偉業を褒め称える者もいれば、院への失礼極まりない態度は評価出来ずと不満を持つ者もいる。何より女子の身で不敬を臆せず物を言う態度は、誰にも受け入れられる事はなかった。
だから公家貴族たちの催し物に呼ばれても、舞いを披露するのみで酒の相手をする者はいない。
影からその姿を盗み見て、笑い物にすることを余興としたのだ。
当の本人は、こういったことには慣れている為臆する事はなかった。
生まれ持った真っ直ぐな性格と鋭い口調は、貴族のみならず白拍子達からも嫌煙されていた。そもそも大勢と連むことを好まない静は、母親以外の人間と話す事がほとんどない。
陰口ならともかく、面と向かって悪口を言われる事は、慣れてはいなかった。
「おまえ、何故雨を降らせた?」

