家を泣きながら出た。お母さんがいない間には、大きい大人の人たちが押し寄せてくる。お姉ちゃんはボロボロの洋服で何処かに出かけている。怖かった。お母さんがどんどん痩せ細っていくのが怖かった。お姉ちゃんが自分の夢を諦めていくのが怖かった。私は夢華。小学四年生。家の周りには商店街のお店のいい匂いが漂ってくる。お腹がすいた。ずっとまともな食事ができてなかった。自分も自分であれなくなっていくのが怖かった。お母さんが死んじゃいそうで怖かった。お姉ちゃんが泣いちゃいそうで悲しかった。そんな思いで街を歩いた。商店街を抜けると、急に静かで、何にもない狭い道へ出た。

「お腹すいたな.....」

小さな声でささやいた。ゆっくりと弱々しい足で歩き続けると、誰かの声が聞こえた。

「おーい。姉ちゃん一人か?きっと腹減ってんだろ。うちでたらふく食べろ」

奥には、明るく元気な顔をしたおじさんが立っていた。

「でも、お金がなくて...」

「んなもんタダだよ」

「え....」

店の中は暖かくて、おじちゃんと3人ぐらいの明るい人たちが明るく迎えてくれた。みんなニコニコ笑っていて、とっても優しかった。

「はい、ピザ好きやろ?」

そう言って私にマルゲリータをくれた。それはとっても美味しくて、今までため込んでいたもが全て溢れた。大粒の涙を流しながら、私はいつの間にか今までのことと家庭の事情を全て話していた。

「そうか....。母ちゃんと姉ちゃんを連れてきてくれ」

そう言われると、私は一目散に家へ帰った。

「お母さん、お姉ちゃん!」


私はあのイタリアン屋さんへお母さん達を連れ込んだ。

「あの.....」

「はい、姉ちゃんはマルゲリータ好きか?」

「うん!」

「おい。たっちゃん、マルゲリータ美味しいってよ!」

「あざっす!」

お母さんもお姉ちゃんも涙をこぼしながら食べていた。

「姉ちゃん、高校生やっけ?バイトしながら働きな。もちろん時給もやる。お母さんは夜の仕事なんてせずこっちで働け!うちは人手不足なんでね」

「ありがとうございます...」

それからはもう生活はより良くなって、いつの間にかあのおじさんは私のお父さんになっていた。

「お父さん。マルゲリータちょーだい!」

「はいはい」

私は今世界一幸せだ。