「――凛、もー凛、起きてって」
「……んごっ!?」
「うおっ、やっべ。凛ちゃん今のサイコーに豚だった」
「おうじくん、こいつのこと甘やかさなくていーよ。寝かせとこ」
「でも、球技大会のチーム分けあるから、起こさなきゃ」
何やら頭の上が騒がしい。
いつものかわいい声に交じってなんかいけ好かない声が二つ聴こえる。
俺は、いつもより寝起きが悪く頭を上げると、案の定、燈司のほかに秀人と光晴もいた。
まだ視界がぼやけるものの、秀人と光晴は燈司を挟んで、あろうことか燈司の肩に腕を置いている。
「こんのっ、お前ら、燈司をいじめんな!」
「うわあっ、びっくりした。凛、おはよう。というか、いじめ? いじめられてないけど」
「豚凛ちゃんきしょうー」と秀人は自分で言った言葉にケタケタと笑い、光晴も「いじめって言われるいじめにあいましたー先生にチクりまーす」など口々に言っている。
まだ昼食を食べていないだろうに、元気なやつらだなと思う。俺は、腹が減ったのと寝起きであまり気分がよくない。
そんな同じ部活のバカ二人はおいて置いて、燈司は何か言いたげに俺のほうを見ていた。
「燈司、起こしてくれてありがとな」
「うん。もう慣れちゃったから……ああ、それで、凛。球技大会のことなんだけど」
「球技大会? 五月初めにあるやつか」
「そう。そろそろ練習始めないとって先生が言ってて、チーム分けの話がさっき終わる十五分前くらいに」
燈司は「寝てたからわからないよね」と余計な一言を言って、俺の寝癖を指でつついた。
球技大会。
それは、学校行事の中でも盛り上がるもの。ちなみにこの学校は何故か春に球技大会、十月終わりに体育祭がある。ちなみに文化祭は九月だ。
二年生は六月に修学旅行があるため予定がかなり詰め込まれている。
球技大会は基本クラス対抗でトーナメント戦。とはいえ、午前はブロックごとの総当たりで、そこでの勝ち数、得点で決勝トーナメントに上がれるかが決まる。
だいたい、バレー部が多いクラスが年々優勝をかっさらっていっているが、運動神経のいいやつだけで固めたチームなんかも好成績を残している印象だ。
去年俺は、燈司と同じクラスだったが「お前は背が高いから選抜チームな」と勝手に引き抜かれてしまった。試合での活躍はそこそこ。俺は球技はテニスしかしていない。バレーは学校の体育でやる程度だ。
(今年もこの時期か……チーム分けどうなんだろ)
俺は寝ていたからわからないが、すでに教室のあちこちでチームをどうするだの、クラスTシャツは作るだの、話がぽつぽつと上がっていた。
寝ていたため完全に出遅れてしまい、あのバカ二人に何を言われても言い返せなかった。つまり燈司は、一度聞いた内容を俺に話してくれているということだ。俺がその時聞いていればよかった内容を。
「悪い、燈司……」
「いーよ、いつものことだし。凛は俺がいないとダメなんだから」
「ほんっと、自分でもそーおもう! いやあ、同じクラスって最高だな」
わざとらしく笑えば、秀人が「あほらし」と呟く、ばっちり聞こえていたため机の上に乗っていた筆箱で思わずぽこんと叩いてしまった。筆箱の中はシャーペン一本と消しゴムしか入ってない。実質からの布のケースだ。
「いって! 凛ちゃん暴力反対なんですが!?」
「烏がカーカー言ってんじゃねえよ。この貧乏烏!!」
「はあ? なんだと?」
「やめなって、秀人。凛ちゃん身体だけはデカいから」
秀人は頭を押さえながら俺を睨みつける。握った拳は今にも飛び出して右ストレートを打ちそうだが、寸前で光晴に止められる。
俺も燈司にお叱りを受け、互いにごめんなさいをすることとなった。この年になって「ごめんなさい」と頭を下げて、仲直りの握手をすることになるなんて思いもしなかった。
まず、俺が手を出さなければ起こらなかった出来事だが。
「それで? 燈司、チーム分けどうするんだったっけ?」
「六人か七人のチームを作るんだって。去年と同じで好きな人とチームくめばいいけど、誰かをわざとはぶったりしちゃダメだってさ」
「まあ、常識だな。ほーん、じゃあ、こいつらと俺と燈司ってのもいけんのか」
俺が秀人と光晴を指させば「凛ちゃんガタイだけじゃん」と声をそろえて言われてしまう。
だが、弄る材料が増えそうと良からぬことを思いついた顔をし「いいね、凛ちゃん」なんてすぐに手の平を返す。
(じゃあ、残りはあと二人か……)
俺は教室を見渡し、適当なやつらに声をかけようと探した。
「……んごっ!?」
「うおっ、やっべ。凛ちゃん今のサイコーに豚だった」
「おうじくん、こいつのこと甘やかさなくていーよ。寝かせとこ」
「でも、球技大会のチーム分けあるから、起こさなきゃ」
何やら頭の上が騒がしい。
いつものかわいい声に交じってなんかいけ好かない声が二つ聴こえる。
俺は、いつもより寝起きが悪く頭を上げると、案の定、燈司のほかに秀人と光晴もいた。
まだ視界がぼやけるものの、秀人と光晴は燈司を挟んで、あろうことか燈司の肩に腕を置いている。
「こんのっ、お前ら、燈司をいじめんな!」
「うわあっ、びっくりした。凛、おはよう。というか、いじめ? いじめられてないけど」
「豚凛ちゃんきしょうー」と秀人は自分で言った言葉にケタケタと笑い、光晴も「いじめって言われるいじめにあいましたー先生にチクりまーす」など口々に言っている。
まだ昼食を食べていないだろうに、元気なやつらだなと思う。俺は、腹が減ったのと寝起きであまり気分がよくない。
そんな同じ部活のバカ二人はおいて置いて、燈司は何か言いたげに俺のほうを見ていた。
「燈司、起こしてくれてありがとな」
「うん。もう慣れちゃったから……ああ、それで、凛。球技大会のことなんだけど」
「球技大会? 五月初めにあるやつか」
「そう。そろそろ練習始めないとって先生が言ってて、チーム分けの話がさっき終わる十五分前くらいに」
燈司は「寝てたからわからないよね」と余計な一言を言って、俺の寝癖を指でつついた。
球技大会。
それは、学校行事の中でも盛り上がるもの。ちなみにこの学校は何故か春に球技大会、十月終わりに体育祭がある。ちなみに文化祭は九月だ。
二年生は六月に修学旅行があるため予定がかなり詰め込まれている。
球技大会は基本クラス対抗でトーナメント戦。とはいえ、午前はブロックごとの総当たりで、そこでの勝ち数、得点で決勝トーナメントに上がれるかが決まる。
だいたい、バレー部が多いクラスが年々優勝をかっさらっていっているが、運動神経のいいやつだけで固めたチームなんかも好成績を残している印象だ。
去年俺は、燈司と同じクラスだったが「お前は背が高いから選抜チームな」と勝手に引き抜かれてしまった。試合での活躍はそこそこ。俺は球技はテニスしかしていない。バレーは学校の体育でやる程度だ。
(今年もこの時期か……チーム分けどうなんだろ)
俺は寝ていたからわからないが、すでに教室のあちこちでチームをどうするだの、クラスTシャツは作るだの、話がぽつぽつと上がっていた。
寝ていたため完全に出遅れてしまい、あのバカ二人に何を言われても言い返せなかった。つまり燈司は、一度聞いた内容を俺に話してくれているということだ。俺がその時聞いていればよかった内容を。
「悪い、燈司……」
「いーよ、いつものことだし。凛は俺がいないとダメなんだから」
「ほんっと、自分でもそーおもう! いやあ、同じクラスって最高だな」
わざとらしく笑えば、秀人が「あほらし」と呟く、ばっちり聞こえていたため机の上に乗っていた筆箱で思わずぽこんと叩いてしまった。筆箱の中はシャーペン一本と消しゴムしか入ってない。実質からの布のケースだ。
「いって! 凛ちゃん暴力反対なんですが!?」
「烏がカーカー言ってんじゃねえよ。この貧乏烏!!」
「はあ? なんだと?」
「やめなって、秀人。凛ちゃん身体だけはデカいから」
秀人は頭を押さえながら俺を睨みつける。握った拳は今にも飛び出して右ストレートを打ちそうだが、寸前で光晴に止められる。
俺も燈司にお叱りを受け、互いにごめんなさいをすることとなった。この年になって「ごめんなさい」と頭を下げて、仲直りの握手をすることになるなんて思いもしなかった。
まず、俺が手を出さなければ起こらなかった出来事だが。
「それで? 燈司、チーム分けどうするんだったっけ?」
「六人か七人のチームを作るんだって。去年と同じで好きな人とチームくめばいいけど、誰かをわざとはぶったりしちゃダメだってさ」
「まあ、常識だな。ほーん、じゃあ、こいつらと俺と燈司ってのもいけんのか」
俺が秀人と光晴を指させば「凛ちゃんガタイだけじゃん」と声をそろえて言われてしまう。
だが、弄る材料が増えそうと良からぬことを思いついた顔をし「いいね、凛ちゃん」なんてすぐに手の平を返す。
(じゃあ、残りはあと二人か……)
俺は教室を見渡し、適当なやつらに声をかけようと探した。



