「……陽子(ようこ)、なにそれ(・・)?」
 恐る恐る、ページをめくろうかとしていたそのとき。
 いきなり、声をかけられたものだから。
 思わずそれ(・・)を、落としそうになってしまった。

「そんなに慌てなくても……大丈夫?」
 美也(みや)ちゃんが、わたしに少し心配するような声をかけてから。
「えっ? もしかして……?」
 あぁ、見つかってしまった……。




 ……もう、陽子ったら。
 そんなに驚いて、おまけに慌てて隠そうとするものだから。
 わたし、見えちゃったよ……。

「あ、あのね美也ちゃん!」
「なぁに?」
「わざわざ机の上に、置いてあったからだよ!」
「わかったわかった。だから、めくろうとしていたんだよね?」
「悩んでただけで、まだ読んでないから!」
 陽子は、手をバタバタさせながらそういうと。

「……おまけに、続編の紹介担当なんて」
「えっ?」
「作者から、聞いてないっ!」
 い、いまそれいうの?



『恋するだけでは、終われない / 気づいただけでは、終われない』


 これが、わたしたちの続編か……。
 確かに、わたしも紹介担当なんて聞いていなかった。
 ……というか。
 どうして、放送室に置いてあったのだろう?
 ここにくるのを、知っていたのだろうか?

「……あれ?」
 原稿の束の、どこかに挟まっていたようで。
 藤色のカードが、はらりと陽子のスカートに落ちる。


「ふたりへのミッション。まず、読者のみなさんに感謝する……だって?」
 陽子が、読み上げたあとで。
「えっ、わたしたちで?」
 また、慌てた声を出す。
「美也ちゃん。ど、どうしよう?」
「陽子、わたしに聞かれても……」
「だって、なにかしないと! 絶対このやり取り公開されてるよ!」
「そ、それもそうだね……」

 ……笑顔で、ペコリ。

 わたしは陽子と、ふたりで。
 今回も作品を読み続けてくださった、読者のかたがたにお辞儀する。

 続けて、カードをめくろうとした。そのとき……。


「ウソっ!」
「えっ、もう戻ってきたの?」
 予想外に早く、講堂にいったはずのみんなの。
 にぎやかな声と、足音が聞こえてくる。
「せっかくの原稿、読み損ねちゃったね……」
「それより美也ちゃん! これ、どうするのっ?」

 わたしたちは、一瞬顔を見合わせると。
「そうだね!」
「これで決まりっ!」
 そういって、原稿を。
 あの『彼』の席の前に、揃えて置いた。


 ……恋するだけでは、終われなくって。
 ……告白しても、終われなかった。


 だから、みんなにこのあと。
「なにこれっ! この先どうなるの!」
 そうやって、質問責めにあう役回りくらいは。

 ……海原(うなはら)(すばる)

 あなたが担当、してくれるよね?



 聞き慣れた、ノックの音がして。
 放送室の扉が、やさしく開く。

 わたしたちは、顔を上げると。
 いつものように、笑顔で……。




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シリーズ二作目『恋するだけでは、終われない / 告白したって、終われない』
これまでのご愛読、本当にありがとうございました。

また、たまたまですが。
七夕の日に、完結となりました。

ふたりの会話にありましたとおり。
引き続き三作目の連載を開始させていただきます。

再度別小説となり、お手間をおかけいたしますが。
よろしければ、これからも。
彼らが過ごす日々を、のんびりと見守っていただければ幸いです。



つくばね なごり