嫌いなあいつが気になって

「あ"ー」

 机に突っ伏すと、武野も俺の机に肘を付いて呆れた顔をする。

「何だ、その声……」

 思いっきり引かれて、

「昨日歌いまくってもう声ヤベぇの」

 顔だけをそっちに向けて笑うと、武野はゴミクズでも見るみたいに目を細めてため息を吐いた。

「こっちは真剣に部活やってるってのに」

 これは完全に呆れられた気がする。

「俺だって昨日は補充だったから勉強してたっつの!」
「は?補充で歌ったのか?洋楽か何かか?」

 とりあえず言ってみても、武野は信じてくれない。
 それは俺が英語はただ授業をサボっていただけではなく、本当に苦手でできないと知っているからだ。

「えー?何言ってんのー?」

 武野が言った“洋楽”の意味がわからなくてタルいまま声を出す。
 だが、喉が痛くて起き上がって首元を押さえた。
 マジでヤバいかもしれない。
 喉の死は女子と楽しく話すことが生き甲斐の俺にとってはかなりの問題だ。すると、

「琉生!これ、あげるっ!昨日はめーっちゃよかったー!し、また行こうねーっ!」

 タイミングよく凛華が現れてのど飴を受け取る。

「サンキュー!マジ凛華、優しいわー!」

 その腰に絡み付くと、武野がわざと聞こえるようにため息を吐いてもう顔を背けた。
 その隙に凛華と軽くキスをすると二人でギューと抱き締め合う。
 この軽く女の子と触れ合うのがいい。
 柔らかくていい香りのする凛華にくっついて目を閉じた。……のだが、

「教室で何してるんだ」

 後ろ襟を引っ張られて引き離される。
 そこには怒りよりも、もう呆れている工藤が居た。

「もー、疲れたから充電ー」
「そー!くーちゃんも混ざりたいー?」

 ダレつつくっつくと、凛華もギューっとくっついてくる。

「混ざるか!フザけるなっ!!」

 相変わらず喚く工藤だが、かわいい見た目はその威力もないに等しい。

「もー!ガチに捉えちゃってぇ!モテないよ?」
「凛華ぁ、くーちゃんは来月結婚するから今は彼女一筋だろ」

 眉を吊り上げる工藤にニヤニヤと目を向けると、工藤は容赦なく俺の後頭部を叩いてきた。