嫌いなあいつが気になって

「じゃあ、お前がずーっと勉強ばっかしてたのは……」
「もちろん、家のことを考えないように!って現実逃避でもあったよ?」

 すぐに否定された気がしてちょっとガッカリする。
 だが、宮部は顔を手で覆ってから少し下げて、ゆっくりとこっちを見た。

「……でも……村瀬くんにもう一回会って……このドキドキは……何度も思い出してしまうのは……恋だって自覚したから……」

 微笑んだ宮部があまりにも愛おしくてその手を掴もうとすると、宮部はクルッと向きを変えて手にあるシャーペンと消しゴムを見せてくる。

「……ねぇ、本物?」

 くすくすと笑う意味がわからない。
 どう見たってそれはシャーペンと消しゴムで、他の何でもない。
 別に壊れてもいなさそうだし、使えたはずだ。

「は?」

 俺は本気で理解できないのに、宮部は堪らえるようにフルフルと震え出す。

「ふふ……本物、じゃなくて……《《本望》》じゃない?」
「あ"?」

 今更、過去の間違いを指摘されて睨んでやると、宮部は声に出して笑い出した。

「くっそ!!……キスしてやるっ!」
「な、何でそうなるんだよっ!!」

 悔しいような恥ずかしいようなそれを誤魔化すように手を伸ばすと、宮部は慌てて逃げる。
 タイミングよくスマホが着信を知らせてくると、俺は宮部の手だけ掴んでおいて電話に出た。

『ねぇ、まだなの?さすがにお腹空いてあのファミレスに来てみたのに二人とも居ないし……どうなってるのよ?』

 姉ちゃんの呆れたようなちょっと心配するような声。

「ご、ごめんなさい」

 スピーカーにしてやると、宮部はペコペコと頭を下げる。

『え?せいくんっ!?琉生と一緒に居るの?』

 この優しげな声を少しは俺にも向ける気にならないのだろうか?

「居るって」

 グッと宮部を抱き寄せてやると、驚いて出た宮部の声に姉ちゃんが反応する。

『今、どこ!?すぐ行くから!!もう二人とも車に乗りなさい!』

 姉ちゃんの勢いに押されて位置情報を送ると、俺は宮部と顔を合わせて少し笑った。