嫌いなあいつが気になって

「とりあえず、これ。お前の荷物。急に走るから勝手に突っ込んだけど文句は言うなよ」

 ドサッとリュックを降ろすと、宮部はリュックに視線を移してまた黙り込む。
 こいつに今何を言えばいいのか。
 考えたって元々容量の少ない俺の頭では良い考えなんて浮かんでこない。

「……あのさぁ、お前が凜華を好きなのはわかってるから……」
「は?」

 ぽかんとしながらこっちを見られて、俺は宮部に背を向けるとその遊具に凭れかかって体重を預けた。
 やはり初恋は叶わない……なんてどうでもいいことばかりが頭を過ぎる。
 どうせ失恋確定ならせめて……気持ちを曝け出せば蟠りを取り除けるだろうか?
 だが、もう……友人くらいにもしてもらえないだろうか?

「凜華を忘れろとか言うつもりはなくて……」
「ねぇ」

 ぼんやりと星も見えない空に向かって自嘲気味に話していた俺の肩が掴まれて、俺もさすがにびっくりする。

「なっ、急に……」
「どうして澤部さんが出てくるの?」

 遊具の中で四つん這いになって俺の肩を掴んでいる宮部がじっとこっちを見てきた。

「は?だってお前が好……」
「僕、そんなこと言った?」
「はぁ?」

 ちょっと怒っているような宮部の声に少したじろぎながらも考える。
 宮部に好きな人が居ると知って……こいつの口からよく出てきたのは凜華の名前だった。
 それで見ていると宮部は凛華を見ていることも多くて……あれ?違う、のか?
 もしかして……俺が勝手にそう思っただけか?
 思い込みかもしれない可能性に気づいて宮部を振り返ると、宮部はため息を吐いてその狭い遊具の中でまた尻を付けた。

「ちょ、待った!じゃあ、お前の好きな奴って……誰だよ!?」

 その遊具に俺も上半身を突っ込んで顔を近づけると、宮部は少し仰け反って顔を背ける。

「おいって!」

 その腕を掴んでこっちを向かせた宮部は空いている腕で慌てて顔を隠した。