闇雲に走り回ることしかできなくて、俺は一旦手に持っていた全てをリュックに突っ込むと周りを見ながら走り出した。
 大通りには居ない気がして裏道に入るが手がかりもない。
 スマホを出して時間を見つつ、また連絡先も知らないことを思い出して俺は項垂れた。

「……どこだよ」

 それでも諦める訳にはいかず周りを見ながら歩く。
 いつものあの寂しげな目が今日は更に寂しさを増していたような気がして落ち着かない。
 早く一緒に連れて帰って、また母さんが言う「お帰り」を聞いてはにかめばいいのに。
 ふといつも縮こまっている宮部を思い出して俺は前に凜華と行ったあの公園に足を向けた。
 緑の多い辺りを気にしつつ遊具のある場所に辿り着くと、狭いそれぞれの遊具の隙間を探す。
 静かで暗い公園。
 昼間は子供たちの声が響いているであろうそこのやけに静まり返った蒸し暑いだけの空気は更にあいつの孤独と寂しさを深くしているとしか思えない。
 一応それぞれの隙間を見ながらも、俺は最初に目に入っていた球体の遊具の前で足を止めた。
 ゆっくり息を吐き出して俺の腰の高さくらいにある丸く空いているその穴から中を覗く。
 そこには縮こまっている宮部が居た。

「……見つけた」

 思わず呟くと、宮部がビクッと跳ねてその狭い空間でも更に逃げようとする。

「待てって!男から告られて気持ち悪いのはわかるけど……」
「そんなこと言ってない!」

 思いっきり眉を寄せて振り返った宮部を俺は静かに見下ろした。