嫌いなあいつが気になって

 いつまでも瞬き以外全ての動きを止めている宮部から少し距離を取ってみても、まだ宮部は動き出さない。

「……聞いてた?」

 不安になって首を傾げると、宮部の顔が一気に赤くなる。

「な……あ……う……えっと……」

 まともな意味を持たない謎の言葉のみしか出てこない宮部。
 そんな姿を見て思わず笑ってしまった。

「なぁ、腹減ったし帰るぞ!」

 肩を組んでやると、宮部はキョドり始める。

「でも……」

 言い返す隙は与えたくなかった。

「言ったろ?母さんと姉ちゃんも待ってんの!お前が帰るべき場所はうち!な?」

 立とうとしても宮部が動かなくて振り返ると、宮部はまた俯いて自分の膝を握っている。

「宮……」
「やっぱり無理だよ」

 改めて手を伸ばしかけた俺の目の前でパッと顔を上げた宮部。
 軽くテーブルに阻まれながら少し腰を浮かしている俺からはいつもの分厚いレンズも邪魔せずその目がよく見えた。
 あの綺麗な目をかなり潤ませてこっちを見上げる姿。
 抱き締めてやりたくなるそれをどうするべきか迷った。
 だが、その一瞬のうちに、

「ごめんっ!!」

 宮部はどこにそんな力があったんだとびっくりするくらいの勢いで俺を押して、自分もソファー席から出てきて走り出した。
 荷物も置いたまま走って店から出て行った宮部。
 とりあえずあいつのリュックを肩に引っ掛けてノートとかも全部抱えてから店員にお金だけ渡して俺も急いでその後を追う。

「くっそ……どっちだよ」

 店を出た時には辺りが暗くなっていることもあってもうその後ろ姿は見えず、勝手に舌打ちが出た。