嫌いなあいつが気になって

 バスの中でスマホを取り出して、結局宮部の連絡先も知らなかったことに気づいてまたポケットに戻す。
 さっきまで明るかった空もさすがに暗くなり始めていた。
 俺はしばらく窓の外を眺めてはいたが、その暗さが妙にもの寂しく感じる。
 深い息を吐き出してそのまま静かに目を閉じた。


 いつも学校に通うのと同じバス停で降りるととにかく走る。
 運動不足とか、暑くて汗をかくとか、今はどうでもいい。
 勢いのままファミレスに駆け込むとびっくりされたが、首を振って中に目を向ける。
 すると、ちょうど見えたあの黒髪に向かって歩を進めた。

「……に、っ……よ」
「っ!?」

 息が切れてうまく言葉にならない俺とビクッと跳び上がって慌てて逃げようとする宮部。
 パッと腕だけを掴むと、俺は宮部をソファー席の奥に追いやって俺も手前に座った。
 テーブルの上にはいつかのような茶色を薄くした中途半端な水のみ。
 俺はそのグラスを掴むととりあえず喉を何とかしようと一気に飲みきった。
 中途半端に温くて、水っぽい、ちょっとだけ甘いような決しておいしくはないそれに思わず「うへっ」と舌を出す。
 だが、気持ちは悪いがとりあえずヤバいくらいの喉の乾きはマシになった。
 汗で張り付いた前髪を掻き上げて宮部を見ると、宮部はギリギリまで端に寄って身を縮めている。

「……それやめろ」

 腕を引いてこっちに寄せようとすると、宮部は俺の手を振り払ってこっちを見た。
 眉の寄った何かに耐えているような悲しくて辛そうな目。

「だから、一人で背負うなって……」

 ため息を吐くと、宮部はグッと唇を噛み締めた。